今秋のカメムシ事情と、ヒヨドリたちの会話

金木犀の香りが空気にのってあちこちに漂う季節は、カメムシレスキュー係(私)が最も忙しくなる季節でもある。
家の中にまぎれこんでしまったカメムシを、においをお出しにならないよう優しく捕獲し、外にリリースするお仕事。
カメムシの営みは毎年のことなので、2021年9月14日の◇「カメムシ(を)レスキュー911」を皮切りに、我がnoteではカメムシシリーズの記事が増えていく一方かと思われた。

……が、振り返ると、あの年が自宅でのカメムシ出没数のピークといえて、今年のようにあらかじめネットで「カメムシが多く発生する」と警告された年でも、私の住んでいる周辺では全くそんなことはなさそうだ。

これには、カメムシの種類が多様であることも関係しているのだろう。
稲につくようなカメムシや、小さな体のカメムシ、都会でも洗濯物に止まるなどして目撃される大きめのカメムシ……。
私が2021年に忙しく対応に追われたのは、この最後の例に該当し、日本最大種といわれる「キマダラカメムシ」だった。正確にいえば、越冬カメムシの対応もあったので2022年までその体験を持ち越した。

2022年4月19日の記事◇「クサギカメムシさん、いらっしゃぁい」で告白した通り、私はカメムシの中でキマダラは実は苦手な方だ。
キマダラカメムシは南方からやってきた外来種と聞いたことがあるが、黒と黄で構成される目を引く体色や、なかなか立派な体の大きさが独自の存在感を醸し出している上に、特定の場所から去ってほしいと思って行動を促しても「まったく逃げない」などの性格の傾向がある。

「クサギカメムシ」も同じこのエリアに生息していることがわかっており、その頃の私ははうんざりするほどキマダラばかりに遭遇していたのもあって、内心クサギを歓迎するようになっていた。
その様子は、先の◇「クサギカメムシさん、いらっしゃぁい」に書いた通りである。

カメムシレスキューに明け暮れたピークの秋から2年。2023年今秋の、私の身辺での変化に富んだ今年のカメムシ事情を綴っておきたい。当記事を読みながらあなたの身近にある自然の様子にも心を向けていただければ幸いだ。

また、当記事後半ではヒヨドリの秋の様子について語る。
過去記事でヒヨドリの秋のさえずりの謎について書いたことがあり(繁殖期が過ぎた後のさえずりについて。該当記事は整理時にnote上から誤って削除してしまい、筆者である私と購入済みの人しか読めなくなっている)、そのとき私は記事内で自分の考えを綴っていたのだが、その答えが今年の観察によって定まった。アニマルコミュニケーションのスキルも生かして、この秋のヒヨドリ同士の会話や状況を、人間語に置き換えるとこんな内容だったという翻訳付きでお届けする。

なお、生き物に関連するこうした記事は★マガジン「ネイチャーコミュニケーション(生き物たちとの交流)」に収録している。


今年のカメムシ事情・クサギカメムシに勢力が戻ったか

今年はほとんどカメムシレスキューの出番がなく、2021年のような「とても多く発生していた年」に比べると家の周辺でのカメムシとの遭遇が少なめである。見るには見るのだが、実感できる数の違いが大きいという感想だ。
中でも著しい変化としては、あれほど2021年に「見かけるカメムシといえばこの種」というほど私の居住エリアで勢力を増していたキマダラカメムシが、さほど多くないという点だ。これまた、いるにはいるのだが。

代わりに目撃するのは「クサギカメムシ」。こちらが中心になり、私は少しほっとしている。過去記事では写真も載せて両者の違いを説明しているのでご覧いただきたいが、ときに混同されるクサギカメムシとキマダラカメムシとでは、以下のような違いがある。
【両者の違いを、写真を入れて説明している過去記事】
「カメムシ(を)レスキュー911」
「クサギカメムシさん、いらっしゃぁい」

体の大きさ……個体差があるとはいえ、キマダラよりもクサギは明らかに一回り以上小さい。
体色……ぱっと見だと間違えそうなほど雰囲気は似ているが、よく見るとキマダラは黒地に黄色の模様。クサギは全体的に茶色っぽい。
……キマダラは腹も、体節がだんだらの縞々状に見えて目立つ。それに対してクサギの腹は全体的に同一の色に見え、つるっとして見える。
性格や反応の傾向……キマダラはおっとりしているのか、動きがゆっくりで刺激に鈍い印象。たとえば周囲を叩いて音や振動を伝えたり、体に触ったりと刺激を与えてもなかなか動かないし、なかなか飛ばない。
クサギはよく飛ぶ。ぶんぶん飛ぶ。動きも速く、ちょこまかしている。

大きさには個体差もあるため、実際に出会うと見かけでは意外とわからないな……というときには、行動を見るとどちらなのかがわかりやすいだろう。両者の性格は、かなり違うのだ。
キマダラカメムシのあの外見を好む人たちは、おっとりしたキマダラの性格をより愛しく思うのかもしれない。

私は前述の通り、増えすぎていたキマダラにおののいていたので、クサギがこのエリアでの勢力を増した(むしろ昔はクサギしかいなかったように思うので、取り戻した?)ことにほっとしている。部屋に入ってしまったクサギに対しても優しい気持ちでレスキューしている。

クサギは「えっ、何ここ、何ここ!?」というように部屋の中でうろたえて派手に動き回り、天井をうろついたり飛んでみたりする。
レスキューの際には、「今から外にお連れしますので」とお伝えし、さっと優しくカップなどをかぶせて捕獲するのが良い。今のところ、それによってにおいを出されたことはない。
大きさにゆとりのある透明のカップを使えば、同時に観察もできて一石二鳥だ。カップの口は紙などでおさえ、あまり負担を与えないようにすばやく外でリリースしよう。

捕獲の際は、たとえ動きの鈍いキマダラが相手でも、素手でカメムシを持つことを私はおすすめしない。私の経験ではさすがのキマダラも手でふれるとにおいを出すことが多い。

勢力の変化は、ハエトリグモにも?

カメムシ間での勢力変化のみならず、今年は家に出没するハエトリグモにも変化があった。
これまではミスジハエトリを主に見かけていたのだが(これまた過去記事で題材にしており、◇「ミスジさん(ハエトリグモ)との共暮らし」が該当)私が最近家の中で顔を合わせたのはアダンソンハエトリのオスだ。

アダンソンのオスは黒い体に白い模様がインパクトのあるハエトリグモで、都内に住んでいた頃は、ハエトリグモといえばアダンソンを主に見ていた。
それが、現在の住まいでは姿を見なくなり、すっかりミスジハエトリの茶と白の優しい色合いに目が慣れてしまっていた近年の私は、突如として家の中に現れたアダンソンにびっくり。なんとも、パキッしたモノトーンの色合いが久々に視覚的に強烈だったのである。

その動揺のエネルギーを相手(アダンソンハエトリ)に向かって思いきり放ってしまったので、すばやく気を取り直して、「スタイリッシュですね! かっこいいねぇ!」と心をこめてほめた。あなたの姿のスタイリッシュさに驚いたんですよと説明した。
するとアダンソン君は壁の上で、その姿をしばらくじっと眺めさせてくれたのだった(ご存知の方も多いと思うが、ハエトリグモは視力が良く、視覚的な反応をよく表してくれるクモだ)。

ちなみにそれはキッチンの壁での出来事だったのだが、その1ヶ月くらい前にやはりキッチンの壁の上で、例年通りに私はミスジハエトリのオスと出会っていた。
同じエリアに生息するとアダンソンとの競合にミスジは負けてしまうという情報を見たことがあるので、果たして、彼が今どうしているのかが気になるところではある。
ミスジのオスは相変わらず目もとが赤色で、白いミトンみたいな手(本当は手ではなく触肢)をしていてかわいかったのだが……。

自然界の営みは、毎年同じであるかのように見えて実は様々な変化があり、目が離せないものだ。

秋のヒヨドリのさえずりの謎がとける

ここからはヒヨドリの話題に移る。
ヒヨドリも私が長年興味を持っている身近な野生生物だ。野鳥たちの繁殖期にはオスがとてもきれいな声でさえずるが、ヒヨドリも例外ではない。

色々な鳴き方がある中で、ヒヨドリの地鳴きにはやかましい鳴き声もあるので意外に思う方がいるかもしれないが、ヒヨドリのさえずりは独自の美しい音で、声を転がすような巧みなフレーズを含むものだ。

ほかに、オスには縄張り宣言を兼ねた、朝や夕に定期的に鳴くときの澄んだ鳴き方があるが、さえずりはもっと優しくて甘い。

以前から私は、秋が深まってもヒヨドリのオスがさえずることを不思議に思っていた。ヒヨドリの繁殖期は長いといわれていて、春から9月頃までと記されているのを見たことがあるが、そうはいっても私が耳にするさえずりは10月以降にも聞けるもので、繁殖期のさえずりの意図とは違うであろうことを感じていた。

すでに3年ほど前、私の中では「こういうことかな」という答えが生まれていたのだが、確実なことはわからず、もう少し観察を続けていくことにして今に至る。

そして今年も例年通り、ヒヨドリの美しい秋のさえずりを連日耳にしながら、私自身のアニマルコミュニケーションのスキルも用いることで一層わかったことがあった。
近頃の私は、自分のその他の内的な歩みと連動しているのだと思うが、以前より野生生物の思いをぐんと受け取りやすくなった。

(人間と共に暮らしている動物との対話をご希望の方は、私のウェブサイトからアニマルコミュニケーションをお申込みいただける。そのほかに、私個人の情熱として野生生物とのコミュニケーションも鍛錬し続けている。)

以下、人間語に訳したらこんな会話という表現も入れながら、ヒヨドリたちの様子をお届けすると……。

ヒヨドリたちの会話と鳴き声を、人間語に翻訳すると

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