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映画と音楽

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「好きなものを好きなだけ」 映画と音楽に纏わるエッセイやコラムを集めたマガジン。」
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#夢

又吉直樹『劇場』は男女の恋愛の瑞々しさを綺麗に描いた物語だった

又吉直樹『劇場』は男女の恋愛の瑞々しさを綺麗に描いた物語だった

「ここが一番安全な場所だよ」

「いつまでもつのか」

街の画廊を覗いている売れない劇作家である永田と俳優を夢見て上京した沙希が出会うシーンで、又吉直樹原作の『劇場』は動き出す。これはずっと安全な場所にいられると信じていたい女とそれがいつまでもつか不安になる男の物語だ。

最初はそれぞれの生活を過ごしていたが、売れない劇作家が女性の家に転がり込んだところで、物語は一変する。「ここが一番安全な場所だ

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RADWIMPS“夢番地”にいつかの自分を重ねて

RADWIMPS“夢番地”にいつかの自分を重ねて

小さい頃はお花屋さんになりたかった。夢を諦めてからは、ずっとサッカー選手を夢見ていた。かつて夢はたくさんあった。テレビやドラマで活躍するような主人公になれると本気で思っていたし、何者かになるためにもがいていた時期もあった。何も知らないはある意味幸せだ。それだけで強くなれる気がしていたし、たしかにあのときは無垢で自由で、それでいて、可能性を信じて疑わない最強な自分だった記憶がある。

小学生の3年生

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Creepy Nuts“かつて天才だった俺たちへ”はすべての主人公になれなかった神童に捧げる応援歌だった

Creepy Nuts“かつて天才だった俺たちへ”はすべての主人公になれなかった神童に捧げる応援歌だった

小さい頃はなんにだってなれると思っていた。それが時間と経験とともに、自身の至らなさに気づいて、「所詮自分はこんなものか」と掲げていた夢を諦めるようになる。でも、中には自身の可能性を諦めず、天才になれない事実に抗い続ける者もいる。天才になれなかったと嘆くか。天才になる努力を続けるか。人生の分岐点はおそらくこの辺りなんだろう。

苦手だとか 怖いとか 気づかなければ
俺だってボールと友達になれた

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