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#LGBT

掌編小説 | 冥泉

掌編小説 | 冥泉

 男は夜の森を彷徨っていた。
 月明かりの中、空まで届くような杉の木の間を這うように進む。ぬかるんだ地面は男の足どりを重くさせた。いつのまにか辺りは霧に包まれ、男は途方に暮れた。
 はたと、霧の奥のオレンジ色の灯りに気付く。そこには、一軒の古い小屋が建っていた。黒い瓦屋根で立派な門構えだ。竹林が小屋の裏の敷地を囲み隠している。小屋の裏からは濃い霧が立ち上っていた。

 霧じゃない。湯気だ。

 男

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人生の答えを探し求めてゲイバーを訪ねた夜

人生の答えを探し求めてゲイバーを訪ねた夜

自分に自信が持てず、他人と比較して凹んでばかりの毎日。ありのままの自分なんてどこにも見つからず、拗らせっぱなしの人生。ああ、自分らしく幸せに生きるって難しい! 「幸せに生きるには」の答えがズバリと書かれている本とかないのか?

そんな私に、医者の嫁で都会のタワマンに住むFカップの美魔女……つまり人生勝ち組の友達Mが声をかけてきた。
「ナミちゃん。いつも暗い顔して本読んでるよねー? もっと楽しく生き

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小説「ある朝の目覚め」第一章

小説「ある朝の目覚め」第一章

あらすじ化粧はわたしの「戦闘服」。わたしを強くしてくれる。

内気で感受性の強い自分に「武装」してIT企業の技術営業職として働くあや子は、お気に入りのノートと万年筆で日々の出来事や自分の考え・思いを書き出して整理する習慣を仕事や生活に活かしている。

出勤前のおひとり様時間を楽しむカフェでのある女性バリスタとの交流が、あや子の日々と内面とに、最初は小さな、徐々に大きな波紋を起こしていく。

ある日

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