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【赤いモレスキンの女】恋が始まるまでの道のりを、いかに楽しませるか。フジテレビ月9、あのドラマを思い出した1冊

「赤いモレスキンの女」(アントワーヌ・ローラン著、吉田洋之・訳、新潮クレスト・ブックス)を読んで、私の頭の中には、俳優の中井貴一さんが現れた。

この小説のストーリーと、なんとなく似たようなテレビドラマがあった気がしたからだ。

恋の落ちる(と思われる)男女が出会うまでを描いていて、

仕事や家族に関わるさまざまな出来事が起こって、主人公の男女2人はすぐには出会わない。

出会わないのだけど、互いに見知らぬ2人の距離が少しずつ近くなっているのは、読者・視聴者は読んで・見ていて、分かる。そんなストーリーだ。

「赤いモレスキンの女」は、主人公の男性が、赤いモレスキンの手帳が入ったハンドバックを拾うことから物語が展開する。

手帳に書かれていた言葉を読んで、持ち主の女性のことが気になりだす。顔も、名前も分からないが、鞄に入っていたものを手掛かりに、持ち主を探し始める。

主人公の男性は脱サラをして、書店を営んでいること。離婚した妻との間に娘がおり、時々、会っていること。つきあっている彼女との関係がなんとなく上手くいっていないことなどを描きながら、鞄の持ち主の女性を見つける手がかりが現れてくる。

こういう展開の場合、読者は、「この2人は、出会う」「この2人は、恋に落ちる」と概ね分かっているので、その分かっている結末までの道のりを、いかに楽しませるか。がポイントだろう。

2人が出会って、恋に落ちることに納得がいくように、登場人物の背景や周囲の人物との関係性を描き、2人の距離が縮まるような出来事を入れていくのだ。

ネタばれになるとつまらないので、詳細を紹介するのは避けたいが、「赤いモレスキンの女」は、フランス・パリを舞台に、洗練された大人の男女の雰囲気が醸し出される。主人公の男性の一人娘も、しっかりと自分の意思を持ち、自立していて、かっこよく描かれている。

ちょっとロマンティックな気分に浸りたくなった人に、お勧めの1冊だ。

この本を読んで、私が思い出したドラマは、1995年のフジテレビの月9「まだ恋は始まらない」だった。

主演は、中井貴一さんと小泉今日子さん。ストーリーの詳細は覚えていないのだけど、恋に落ちるはずの2人がなかなか出会わない設定や展開について、「おしゃれだなぁ」と思っていたことは覚えている。

調べてみると、脚本家は岡田恵和さん(NHK朝ドラ「ちゅらさん」「ひよっこ」など)だった。

90年代のテレビドラマだけど、今見ても古くない気がする。「まだ恋は始まらない」を改めて観たくなったけど、どこかで見れないかな。



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