yukari125(河原レイカ)

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障害者スポーツ情報サイト「パラスポ!」代表  本を使って、自分自身の振り返りなどをするワークショップ「ゆるっと読書会」を企画・運営しています。

最近の記事

「かわいそう」が要る時、要らない時

誰かに対して、「かわいそう」と思う時、 その「かわいそう」は、どういうものだろうか。 学生の頃のアルバイトで、5歳ほど年上の女性の下で仕事をすることになった。 「バイト潰し」と陰で呼ばれていた人で、彼女の下で仕事をすることになったバイトは皆、短期で辞めてしまっていた。 仕事をし始めてすぐに、「バイト潰し」と言われる理由は分かった。 彼女は指示をしていないことを「指示したのに、なぜ、やっていないの?」と言う。「聞いていません」と言い返せば、その倍の小言がかえってくる。指示され

    • ◆「また、会いましょう」と言いながら、「もう、会わないだろう」と思う

      知人と会って、別れる際に、「また、会いましょう」「また、会おうね」などと互いに口にすることがある。 「また」と言っても、たいていは次に会う日程を具体的に決めたりしない。 「また」がいつになるかは分からないけれど、「また」と言っておくことで、人間関係を継続することに互いに合意しているのだと思う。 ペク・スリン著、カン・バンファ訳「夏のヴィラ」(書肆侃侃房)に収められている短編小説「時間の軌跡」は、主人公の私の視点から、年上の女性の友人「オンニ」との人間関係の変化を描いた作品だ

      • 【かみまち】読むのに覚悟が要るマンガ

        今日マチ子さんの「かみまち」は、読者がページを開く前に、覚悟が要る作品だ。 登場人物は、家庭や学校に居場所がない少女たち。スマホを使って、自分を泊めてくれる「神」を探す。「神」の中には、さまざまな人がいる。性や生の危険にさらされ、居場所のない彼女たちがそこに落ちていく。 読む前に、この作品に描かれていることを受けとめるつもりでいたけれど、 読み終えた後、ずしーんと心に重いものが残っている。 それは、おそらく、この漫画に描かれていることより、もっと酷く、もっと深刻な現実が

        • ◆「何もできない人」がそこにいる意味

          「何もできない人」が、自分と同じ場にいる時、どんなことを感じるだろうか。 例えば、学校の教室に、職場に、同じ家の中に。 身体が不自由で歩くことや、車いすを自分で動かすことが難しい。 言葉を話すことができず、他人を会話するのが難しい。 酸素ボンベが必要だったり、褥瘡ができないように体の向きを変えてもらうことが必要だったりする。そんな人がいたら、どうだろう。 障害者の就労施設で、重度の障害のため「何もできない」と思われている人も、職場に居てもらうという話を聞いたことがある。職員

        「かわいそう」が要る時、要らない時

          ◆「いい子」の闇

          こういう場面では、こんなふうに振る舞えば、好かれる。 相手から、褒められ、得をする。 そういうことを知っていて、その通りに振るまう「いい子」。 誰もが、多かれ少なかれ、「いい子」になった経験はあるだろう。 子どもの頃、親の前で。学校の先生の前で。友だちの前で。 大人になって社会に出てからも、同僚や上司、顧客の前で、 「いい子」になったことがあるかもしれない。 「いい子」になった経験がある人は、本当の自分は「いい子ではない」と知っている に違いない。「いい子」は、自分がその

          「生きづらさ」の原因は?

          人間関係、勉強、仕事、日常生活のあれこれ、なんだかうまくいかない。 私の性格が悪いのかな? 一つひとつ真剣に考えすぎず、他人との距離をもう少し広くとればよいのか。一生懸命に頑張るばなりではなく、適当に力を抜いて、時には理想を追うのを諦めて、途中で諦めてもいいのか。でも、そんなふうに考える自分が、嫌になる・・・。 うまくいかない時、思考はたいていマイナスのループにハマる。 外へ出て散歩して見たり、買い物に出かけたりして、いったん思考を止めるけれど、少し時間ができると、ああでも

          「生きづらさ」の原因は?

          ◆アスリート養成強化、お稽古、余暇や趣味。日本の「スポーツ」、これからどうなる?

          スポーツをするのは嫌いではなかったけれど、運動部には入らなかった。 私が育った田舎の中学校では部活動が必修だったが、運動部には入りたくなかった。 身体を動かして、汗をかくのは、気持ち良かったし、運動そのものは嫌いではなかった。目標を立て、計画を作って、コツコツと頑張ることも好きだし、走りのフォームや、ボールの投げ方を教わって、上手くなったら楽しそうだと考えることもあった。 でも、運動部には、どうしても入りたくなかった。 運動部に漂う雰囲気に息苦しさを感じたからだ。 運動部は

          ◆アスリート養成強化、お稽古、余暇や趣味。日本の「スポーツ」、これからどうなる?

          【車いすでジャンプ!】ズレてる支援に、どう立ち向かう?

          昼下がり、住宅街を散歩をしていると、私の数メートル前を、3歳くらいの幼児と母親が歩いていた。子どもは楽しそうにはしゃぎ、勢いよく駆け出したが、体勢が崩れて転んだ。 すぐ後ろを歩いていた母親が、子どもに声をかけている。 母親は手を出さず、子どもが体を起こす様子を見守っていた。 子育て中の親は、子どもが自分の力で立ち上がることができるように、あえて「手を貸さない」こともあるのだろう。 親は子どもの成長や自立などを念頭に、様々な場面で、何を、どの程度、どのように手助けするのか、判

          【車いすでジャンプ!】ズレてる支援に、どう立ち向かう?

          【マダムたちのルームシェア】目指せ!マダム

          「マダムたちのルームシェア」(seko koseko著、KADOKAWA)は、ルームシェアをしている女性3人の日常の一コマを描いた漫画だ。 年齢的には決して「若い」とは言えない。いわゆる「おばあちゃん」の3人だが、彼女たちの暮らしは楽しそうだ。 ネイルを塗りあったり、パジャマパーティをしてみたり。 美術館に出かける時には、ゴッホ風の色合いの服を選んだり、フェルメールの絵に描かれた女性の耳飾りを真似てみたりして、おしゃれする。 雨で出かけたくない日は、手作りのメニュー表をつく

          【マダムたちのルームシェア】目指せ!マダム

          【お探し物は図書室まで】本との出会いをきっかけに、それぞれが一歩踏み出す

          「お探し者は図書室まで」(青山美智子・著、ポプラ文庫)は、悩みを抱えている登場人物が、図書室の司書に勧められた本との出会いをきっかけに、 新たな一歩を踏み出す物語だ。 悩みを抱えている登場人物は、 朋香(21歳、婦人服販売員) 諒(35歳、家具メーカー経理部) 夏美(40歳、元雑誌編集者) 浩弥(30歳、ニート) 正雄(65歳、定年退職) の5人で、各章の主人公になっている。 彼らはそれぞれ、同じ図書室のリファレンスコーナーで、司書の小町さんからお勧め図書のリストを手渡され

          【お探し物は図書室まで】本との出会いをきっかけに、それぞれが一歩踏み出す

          【ともだちは、どこ?】年賀状だけの人は、友だち?

          年始に届いた年賀はがきの差出人の中には、もうずいぶん長い間、直接会っていない人が何名かいる。学生時代の友だちは、卒業以来だから何十年だ。 LINEやFACEBOOKのアカウントを互いに知らない友だちは、1年に1度、年賀状をやりとりするだけの関係だ。 同じ高校、同じ大学に通っていた頃は、仲良くしていたけれど、何十年もの時を経て会ったら、どうだろう?  「懐かしい」とは思うだろう。 学生時代の思い出話に花が咲くに違いない。 お互いの家族のこと、仕事や家庭環境について話し、会ってい

          【ともだちは、どこ?】年賀状だけの人は、友だち?

          【PERFECT DAYS】自分の日々は、パーフェクト?

          仕事は、渋谷区内にある公衆トイレの清掃 木造のアパートに一人暮らし 早朝に起きて、仕事に出かける トイレのゴミを拾い、便器を磨き、トイレットペーパーを交換する 昼食はいつもコンビニで購入するサンドウィッチと牛乳 仕事を終えていくのは銭湯 たまに古本屋に立ち寄り、100円で売られている文庫本を買う そんな毎日をおくっている中年男性・平山が主人公の映画 「PERFECT DAYS」(監督:ヴィム・ヴェンダース、主演:役所広司) を見た。 映画のタイトル「PERFECT DAYS

          【PERFECT DAYS】自分の日々は、パーフェクト?

          酔っぱらって、こけちゃった人

          気温がぐんと下がり、マスクから出ている頬に冷気が刺さった。時刻は22時近く、大通りから一本入った道は、私以外、誰も歩いていない。 静まり返った夜道。仕事を終えて自宅へ向かう帰路で、空っぽの頭に、自分の足音だけがコツ、コツ、コツと響いた。最寄駅から自宅まで歩いて15分程度だが、その間に体の芯まで冷え切ってしまいそうだ。 ガッシャー―ン。 道の先のほうで、物音がした。ゆっくりと、重く、鈍い金属音。すぐ先の十字路、左手側だ。おそらく、自転車だろう。 曲がり角まで足を速め、左手

          酔っぱらって、こけちゃった人

          【はじめての短歌】あいまいで、もやっとするのがいい

          取材記事や日々起きた出来事をブログに書いたりはしているが、短歌をつくったことはない。 国語の教科書に載っていた短歌はある程度、記憶にあるが、それ以外の短歌の作品について比べてみたことはなかった。 つまり、すでに高く評価された短歌を知っているだけで、 複数の短歌を比べて、良し悪しを考えたことがない。 日頃、読んだり書いたりしている文章に比べると、短歌はとても短い文だが、どこに注目して読んだらいいのか。良し悪しを判断する基準を持っていなかった。 穂村弘さんの「はじめての短歌」

          【はじめての短歌】あいまいで、もやっとするのがいい

          【三十の反撃】変わらない現実に疲れて何もできない時、勇気をくれる1冊

          「100枚ほど履歴書を送ったけど、面接の機会をくれたのは1社だったよ」 就職活動をしていた同級生が、ため息をつきながら言った。 企業の人事担当者が、自分の書類のどこを見て、「不採用」と判断するのか分からない。面接する(会って話す)機会を与える価値もないと言われている気がしてしまう。 ただ、なんだか悔しい。 友人の言葉は、学生食堂のテーブルを囲んでいる同級生たちの間に落ちた。 一瞬の沈黙が流れた。 皆、似たり寄ったりの状況だった。 企業が新卒の採用人数を絞り、「超氷河期」と言

          【三十の反撃】変わらない現実に疲れて何もできない時、勇気をくれる1冊

          【静かな事件】人生を変える出来事は劇的ではない

          韓国の作家による短編小説「静かな事件」(ペク・スリン著、李聖和・訳、クオン)は、主人公の「私」が少女時代を振り返り、「自分の人生を変えた」と思う出来事・場面を描き出している作品だ。 物語の冒頭、突然の引っ越しで転校生となった「私」は、戸惑いを感じている。その「私」の視点で、新しい学校や登下校の様子、狭い新居や家族の様子が語られる。暑さ・寒さ、乾燥や湿度、家の中に漂う匂い、頬や足裏で捉えた感触などの描写が繊細で、読んでいる私自身の触感や嗅覚が鋭くなっていく気がした。 他人と

          【静かな事件】人生を変える出来事は劇的ではない