yukari125(河原レイカ)

障害者スポーツ情報サイト「パラスポ!」代表  本を使って、自分自身の振り返りなどをする…

yukari125(河原レイカ)

障害者スポーツ情報サイト「パラスポ!」代表  本を使って、自分自身の振り返りなどをするワークショップ「ゆるっと読書会」を企画・運営しています。

最近の記事

【バリ山行】登山好きにおススメの1冊

芥川賞受賞作の「バリ山行」(松永K三蔵・著)は、登山が好きな人にお勧めしたい小説だ。バリとは、バリエーションルートの略を指し、通常の登山道ではない道を行くことを指す。 山登りは人生に重ねられることがある。 「うさぎとカメ」の物語では、うさぎ、カメがゴール(山頂)を目指して、どのように登るのかが、それぞれの生き方、働き方と重ねられている。 この小説は、一般的なルートを登っている主人公が、バリエーションルートを単独で登っている人と出会い、バリに同行する。その経験が、主人公にも

    • ミステリー小説のようなノンフィクション

      「ある行旅死亡人の物語」(共同通信大阪社会部 武田敦志、伊藤亜衣・著、毎日新聞出版)は、ミステリー小説を読んでいるように、ある女性の「謎」に惹きつけられて読み進めた1冊だ。 「行旅死亡人(こうりょしぼうにん)」とは、病気や行き倒れ、自殺などで亡くなり、名前や住所など身元が判明せず、引き取り人不明の死者を表す法律用語がそうだ。 共同通信の武田氏は、取材のネタを探すため、行旅死亡人の情報が掲載されているサイトにアクセスした。そして、尼崎市で亡くなった女性に注目する。自宅に30

      • 【ホール】恐いのは、自分の過去

        「過去は変えられないけれど、未来は変えられる」 という言葉がある。 過去にしてしまったことは、やりなおすことができない。 起きてしまったことは、なかったことにできない。 だから、そのことにとらわれて悩んだり、悔やんだりし続けるよりも、 これから先の未来に目を向けよう。 未来に向けた行動は、自分の意思で変えられるという考えだ。 モチベーションを高めたい時に、使いたい言葉だと思う。 しかし、変えられない過去が、未来に響いてくることがある。 小説「ホール」(ピョン・へヨン著、

        • 【急に具合が悪くなる】いつ死んでも悔いは残る人生

          哲学者の宮野真生子さんと、人類学者の磯野真穂さんの著書「急に具合が悪くなる」は、病や治療、人生、死などを題材に2人が交わした往復書簡をまとめた1冊だ。 宮野さんは、医師から「急に具合が悪くなるかもしれない」と言われる。 「念のため、ホスピスを探しておくように」と勧められ、「死」について考えざるをえなくなる。 「死はたしかにやってくる。しかし今ではないのだ」 哲学者ハイデガーは、「存在と時間」のなかでこう語っているという。 医師から「急に具合が悪くなるかもしれない」と告げら

        【バリ山行】登山好きにおススメの1冊

          【不便なコンビニ】疲れて冷えた心を温めてくれる物語

          小説のタイトルの付け方を見て、これは上手だと思った。 コンビニは、convenience (便利) +store(店)の略。 便利な店であるはずのコンビニに、真逆の「不便な」を付けている。 このタイトルを見たら、「これは、何だろう?」「どういう話なんだろう?」と思ってしまう。気になって、手に取る。 最初の数ページを読み始めたら、続きが気になり止まらなくなる。 この小説は、そんな読者が多いのではないだろうか。 コンビニの店主である女性の携帯電話に、見知らぬ番号から電話が掛かっ

          【不便なコンビニ】疲れて冷えた心を温めてくれる物語

          体が衰え、記憶力も不安な老女が、かっこいい

          若い時と比べて身体の動きに衰えを感じる。 以前ははっきり覚えていたことを忘れて思い出せず、記憶力にも自信がなくなる。 家族はいない。 一緒に暮らしている犬も高齢だ。 いつか、一人暮らしの部屋で死んでいるのを、他人に発見されることになるかもしれない。 そんな不安を感じている老女が、ものすごくかっこいい。 小説「破果」(ク・ビョンモ著、小山内園子・訳)は、老女の殺し屋(防疫業者)・爪角(チョガク)が主人公の物語だ。 老いのためか、殺しのターゲットに反抗されて、爪角は傷を負う。

          体が衰え、記憶力も不安な老女が、かっこいい

          「かわいそう」が要る時、要らない時

          誰かに対して、「かわいそう」と思う時、 その「かわいそう」は、どういうものだろうか。 学生の頃のアルバイトで、5歳ほど年上の女性の下で仕事をすることになった。 「バイト潰し」と陰で呼ばれていた人で、彼女の下で仕事をすることになったバイトは皆、短期で辞めてしまっていた。 仕事をし始めてすぐに、「バイト潰し」と言われる理由は分かった。 彼女は指示をしていないことを「指示したのに、なぜ、やっていないの?」と言う。「聞いていません」と言い返せば、その倍の小言がかえってくる。指示され

          「かわいそう」が要る時、要らない時

          ◆「また、会いましょう」と言いながら、「もう、会わないだろう」と思う

          知人と会って、別れる際に、「また、会いましょう」「また、会おうね」などと互いに口にすることがある。 「また」と言っても、たいていは次に会う日程を具体的に決めたりしない。 「また」がいつになるかは分からないけれど、「また」と言っておくことで、人間関係を継続することに互いに合意しているのだと思う。 ペク・スリン著、カン・バンファ訳「夏のヴィラ」(書肆侃侃房)に収められている短編小説「時間の軌跡」は、主人公の私の視点から、年上の女性の友人「オンニ」との人間関係の変化を描いた作品だ

          ◆「また、会いましょう」と言いながら、「もう、会わないだろう」と思う

          【かみまち】読むのに覚悟が要るマンガ

          今日マチ子さんの「かみまち」は、読者がページを開く前に、覚悟が要る作品だ。 登場人物は、家庭や学校に居場所がない少女たち。スマホを使って、自分を泊めてくれる「神」を探す。「神」の中には、さまざまな人がいる。性や生の危険にさらされ、居場所のない彼女たちがそこに落ちていく。 読む前に、この作品に描かれていることを受けとめるつもりでいたけれど、 読み終えた後、ずしーんと心に重いものが残っている。 それは、おそらく、この漫画に描かれていることより、もっと酷く、もっと深刻な現実が

          【かみまち】読むのに覚悟が要るマンガ

          ◆「何もできない人」がそこにいる意味

          「何もできない人」が、自分と同じ場にいる時、どんなことを感じるだろうか。 例えば、学校の教室に、職場に、同じ家の中に。 身体が不自由で歩くことや、車いすを自分で動かすことが難しい。 言葉を話すことができず、他人を会話するのが難しい。 酸素ボンベが必要だったり、褥瘡ができないように体の向きを変えてもらうことが必要だったりする。そんな人がいたら、どうだろう。 障害者の就労施設で、重度の障害のため「何もできない」と思われている人も、職場に居てもらうという話を聞いたことがある。職員

          ◆「何もできない人」がそこにいる意味

          ◆「いい子」の闇

          こういう場面では、こんなふうに振る舞えば、好かれる。 相手から、褒められ、得をする。 そういうことを知っていて、その通りに振るまう「いい子」。 誰もが、多かれ少なかれ、「いい子」になった経験はあるだろう。 子どもの頃、親の前で。学校の先生の前で。友だちの前で。 大人になって社会に出てからも、同僚や上司、顧客の前で、 「いい子」になったことがあるかもしれない。 「いい子」になった経験がある人は、本当の自分は「いい子ではない」と知っている に違いない。「いい子」は、自分がその

          「生きづらさ」の原因は?

          人間関係、勉強、仕事、日常生活のあれこれ、なんだかうまくいかない。 私の性格が悪いのかな? 一つひとつ真剣に考えすぎず、他人との距離をもう少し広くとればよいのか。一生懸命に頑張るばなりではなく、適当に力を抜いて、時には理想を追うのを諦めて、途中で諦めてもいいのか。でも、そんなふうに考える自分が、嫌になる・・・。 うまくいかない時、思考はたいていマイナスのループにハマる。 外へ出て散歩して見たり、買い物に出かけたりして、いったん思考を止めるけれど、少し時間ができると、ああでも

          「生きづらさ」の原因は?

          ◆アスリート養成強化、お稽古、余暇や趣味。日本の「スポーツ」、これからどうなる?

          スポーツをするのは嫌いではなかったけれど、運動部には入らなかった。 私が育った田舎の中学校では部活動が必修だったが、運動部には入りたくなかった。 身体を動かして、汗をかくのは、気持ち良かったし、運動そのものは嫌いではなかった。目標を立て、計画を作って、コツコツと頑張ることも好きだし、走りのフォームや、ボールの投げ方を教わって、上手くなったら楽しそうだと考えることもあった。 でも、運動部には、どうしても入りたくなかった。 運動部に漂う雰囲気に息苦しさを感じたからだ。 運動部は

          ◆アスリート養成強化、お稽古、余暇や趣味。日本の「スポーツ」、これからどうなる?

          【車いすでジャンプ!】ズレてる支援に、どう立ち向かう?

          昼下がり、住宅街を散歩をしていると、私の数メートル前を、3歳くらいの幼児と母親が歩いていた。子どもは楽しそうにはしゃぎ、勢いよく駆け出したが、体勢が崩れて転んだ。 すぐ後ろを歩いていた母親が、子どもに声をかけている。 母親は手を出さず、子どもが体を起こす様子を見守っていた。 子育て中の親は、子どもが自分の力で立ち上がることができるように、あえて「手を貸さない」こともあるのだろう。 親は子どもの成長や自立などを念頭に、様々な場面で、何を、どの程度、どのように手助けするのか、判

          【車いすでジャンプ!】ズレてる支援に、どう立ち向かう?

          【マダムたちのルームシェア】目指せ!マダム

          「マダムたちのルームシェア」(seko koseko著、KADOKAWA)は、ルームシェアをしている女性3人の日常の一コマを描いた漫画だ。 年齢的には決して「若い」とは言えない。いわゆる「おばあちゃん」の3人だが、彼女たちの暮らしは楽しそうだ。 ネイルを塗りあったり、パジャマパーティをしてみたり。 美術館に出かける時には、ゴッホ風の色合いの服を選んだり、フェルメールの絵に描かれた女性の耳飾りを真似てみたりして、おしゃれする。 雨で出かけたくない日は、手作りのメニュー表をつく

          【マダムたちのルームシェア】目指せ!マダム

          【お探し物は図書室まで】本との出会いをきっかけに、それぞれが一歩踏み出す

          「お探し者は図書室まで」(青山美智子・著、ポプラ文庫)は、悩みを抱えている登場人物が、図書室の司書に勧められた本との出会いをきっかけに、 新たな一歩を踏み出す物語だ。 悩みを抱えている登場人物は、 朋香(21歳、婦人服販売員) 諒(35歳、家具メーカー経理部) 夏美(40歳、元雑誌編集者) 浩弥(30歳、ニート) 正雄(65歳、定年退職) の5人で、各章の主人公になっている。 彼らはそれぞれ、同じ図書室のリファレンスコーナーで、司書の小町さんからお勧め図書のリストを手渡され

          【お探し物は図書室まで】本との出会いをきっかけに、それぞれが一歩踏み出す