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さよなら蜃気楼


綺麗に欠けた三日月を見ていると
君はあそこにいるのかもしれないと思う

すっぽりと抜け落ちた暗闇が
残された光をあまりにも鮮やかに彩っているから

やっぱり君は、あそこにいるんだろう

狂おしいほどに
眩しく月が光っている

よく撫でていた薄茶色の髪をなびかせて
君はそこで微笑んでいるだろう

私は君が笑っている気がして
見上げた夜空から目を離すことができない



思い出は泡のように
儚く消え去り
私の掌から零れ落ちていく

何度掴んでも
どれほど願っても
私はまた、冷たい夜露にまみれている

さよならだけが人生だなんて、
生きてく意味が分からなくなる

遠く消えてった幸せの残り香が
今も私を包み込んでいる

また一つ、大切なものを失った

どうしてこうも、
寂しいことばかりが起こるのだろう

傷つくことを恐れて、
真っすぐ生きていくことができない

もどかしい

もっと、楽しく生きていきたい
ずっと、幸せでいたい

それなのに、気が付けばまた、
私は暗い顔をしている



私が泣いていると知って
君は私の顔を覗き込んでくる

遠く離れた月の上から
僕に語り掛けてくる

泣いているの——?

君は不安そうな顔をする
胸がきゅっと、締め付けられる

ううん、なんでもないよ——。

君が不安そうな顔をするから
僕はまた、微笑んでみせる

また、いつか会おうねって、
そう言いたいから

でも、私は君の声を聞いて
また一つ、涙を零してしまった

どうして君は
そんなに悲しそうに笑うのかな

君を笑顔にしたくて
これまで生きてきたのに

君の前で、泣きたくなんかないのに

一緒に笑い合ったあの瞬間が
今も僕を温かく包み込んでいるから

頼むから、そんな顔しないでくれよ
君を不安になんかさせたくないのに

自分がみっともなくて嫌になる



さよならだけが、人生だ
私は笑顔で別れを告げよう

どんなに苦しくても
寂しくても、悲しくても

笑って前に進むしかないんだ

たった一度でも、
本気で人を愛せただけで
もう十分、幸せなんだと、
最近ようやく気付くことができた

私は笑顔で別れを告げる

君と出会えて、
凄く嬉しかったから

とっても、幸せだったから

もうこれ以上はないというくらいに

君が、かわいかったから
愛おしくて仕方がなかったから

何度だって、君に出会える気がしたから

僕はまた、君に会いたい

ありがとう
僕と笑い合ってくれて
もう少し、君を笑顔にしたかった
大好きだったから

愛してるなんて君らしくないよって
君がそう言ったから

最後にもう一度だけ、
言ってみようかなって思うんだ

ありがとう
さようなら

大好きだよ
また、いつか会おうね









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