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【うた#16】「言葉」

凩の帰り道 夕日の敷いたレッドカーペット
いつもと違う距離に 紅葉色の嘘をつく

沈黙の防寒具 どれだけ身に着けたって
寂しい身体の内側は温まらない

文字だけじゃそっけない 普段は言えない気持ちも
優しいリボンを結べば ステキな贈り物

今日も言葉のプレゼント交換を
繰り返して 暮らしている
開けた途端に笑顔がこぼれるような
びっくり箱を 君に手渡したい

綺麗な言葉たちは いつからただの綺麗事?
受け止めきれないから 歪められた希望がある

元に戻そうとしても 誰かに壊されてしまう
でもまだ救える言葉が待っているはずだから

今日も世界のどこかで育っている
光る言葉 探している
舞い散る前に 心の奥で開く
真っ白なノートに書き留めたい

ありがとうよりもありがとう
ごめんねよりもごめんね
本物の気持ちは箱に詰められないけど
丁寧に包んで 君の元まで贈るよ

今日も言葉のプレゼント交換を
繰り返して 暮らしている
開けた途端に笑顔がこぼれるような
びっくり箱を 君に手渡したい

その笑顔に照らされて
言葉は光り出す


――――――――――


会話とは、プレゼント交換だ。
受け取った相手が箱を開けたときどんな顔をするのか、
想像しながら言葉を手渡し、
相手からも同じように手渡される儀式。

どれだけラッピングしたって、
どれだけ飾り付けたって、
喜ぶかどうかは相手次第。

時に、丁寧に手渡しても、
ちゃんと届かないことがある。

尖った感情を箱にも入れずにそのまま渡したり、
自棄になって投げつけたりして、
相手を傷つけることもある。

だからといって、僕らはあきらめてはいけない。
言葉が溢れている時代だからこそ、
何気ない一言を大切にしていかなければいけない。

今日も明日も、大切な人に手渡していこう。
どんなサンタクロースも届けられない、
ステキな贈り物を。


――――――――――


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