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光るかばんと意思持つ機械 第2話
俺の親父は、英語なんかどうせ直ぐに自動翻訳機ができるから勉強なんてせんでもええやろという人だった。海外なんてあんな危ない所に行くメリットなんてないと言ってずっと日本の中古車関係の仕事で働いていた。当時は衛星を使ったサテライトオークションと言って画期的だったのだが、電気自動車に変わり、車は個人で持つ時代ではなくなり、どんどんと仕事は減っていったらしい。ただあの大災害では被災は免れたのだけは本当に良か
もっとみる光るかばんと意思持つ機械 第1話
人間は傷つく必要があります。
夏、たっぷり汗をかいた外営業の仕事を終わらせて俺は久しぶりに別れた奥さんに会いに行った。裏路地に入った隠れ家的な、みるからに美味い肉を出すであろう雰囲気の焼肉屋のドアを開けた。
「おう 久しぶり」
先に来ていた瑞希を見つけると軽く手を上げた。テーブルに向かうと席に腰掛けた。俺の汗だくの姿を見てだろう、瑞希は苦笑していた。
「ごめん、先ずはビール飲ませて 喉がカラカラ
フロレンティア18 フィレンツェ 帰宅
深夜、ようやくアパルタメントに戻った俺を待っていたのは、やはりミケーレだった。
「おう、タクーヤ 心配したぞ。どうしたんだ?」
『ミケーレ ゴメン、すぐ帰ってこれなくて スイスでさ あの&*op#@+* ピカッ・・』
カミナリという単語がイタリア語ででない。日本語の『ピカッ ゴロゴロゴロ~』という擬音語や体を使ったジェスチャーで一生懸命説明するもわかってもらえず苦労していると、「クックック
フロレンティア17 悲しみの湖 COMO 一番悲しい差別
ルガーノから列車で40分、俺はコモという街に降り立った。
ようやくイタリアに戻ってこれたのだ。スイスに比べ物価は安いはずだ。どこか安いホテルに部屋を借りてゆっくりと眠ろうと思っていた。しかし、駅周辺を捜してみたが観光客が宿泊するゴージャスなホテルばかりで俺が泊まれるようなところは見つからない。ROMAやFIRENZEにあるような小さな安宿などはどこにもなかったのだ。
そのうち俺は湖に向かって
フロレンティア16 スイス LUGANO(ルガーノ)Ⅴ 脱出
スイス LUGANO(ルガーノ)Ⅴ 脱出
まんじりとせず夜が明けるのを待った。
そして雨はいつの間にかあがっていた。
俺はうつむき、そして冷たくなった体をじっと動かさずにいた。なかなか
時は進んでくれない。何度も腕時計に目をやった。
しかし、ついに静寂が破られる時が訪れた。朝の5時頃だろうか、
懐中電灯を持った男が向こうからやってくる。そのことに俺はすぐ気がつかなかったが、周りの
フロレンティア15 スイス LUGANO(ルガーノ)Ⅳ
一旦、駅の外に出た俺だったがこの豪雨のせいで再び駅に戻ってきてしまった。外では稲妻が光り、雷が轟いている。
俺はへとへとに疲れていた。学校に在学している事が証明できたところで、あの中年の警官は果たして俺がイタリアに戻る事を許可するのだろうか?何しろ滞在許可書や学生ビザがないことを知られてしまったのである。そして 肝心の入国スタンプは一体どこで押してもらえるのだろうか?確かスイスに入る時、国際列