フロレンティア14 スイス LUGANO(ルガーノ)Ⅲ

母への電話

「住所は?」
『へっ?』
「学校の住所だよ。」
『ああ、学校の住所ですか』
「その学校が存在するなら住所ぐらいあるだろ」

俺は慌ててリュックの中、ポケットの中を捜したが学校の住所がわかる物なんて何ひとつでてこなかった。
しかし、俺はなんとかしてこの中年警官の間違いを指摘したかった。
『あのう 電話ありますかね。?』
「ああ、そこに」
派出所の外を出たとこに公衆電話が設置されていた。

ミケーレ達が住む我がアパルタメントには電話はない。
同じくタカシのアパルタメントにもだ。
あるのは、マルコとラッガが住む家だけ。・・が、残念ながら
俺は彼らの電話番号の控えは持っていなかった。

と、なると日本の実家だけだ。
『あ、もしもし お母さん ごめん寝てた? うん元気にしてるよ。え?パスポート 大丈夫 大丈夫、もう手に入れたから。
で、悪いんだけどさ 俺の部屋の机の中にこっちの学校の住所がわかるものないかなあ~? 悪い、捜してみて。』

「・・・・・。」 この待ち時間でコインが次々と公衆電話の中に吸い込まれていった。

『え、見つからない?・・う~ん ちゃんと捜してみた?
どうして 学校の住所なんか知りたいかって? う~ん そう言われてもなあ、 ちょっとね。 今 どこって ・・・スイス えっ 警察・・・』

「#Y6o7*&Pg;☆^%%O☆$*&ーーツー・ツー・ツー」

電話が切れた。途中でコインが切れたのだ。
 これでこちらに来て母親に電話をするのは2回目だった。その2回とも警察から息子が電話をかけてくるなんて母親も気が気じゃあないだろう。

派出所に戻ると中年警官がにこやかにこう言った。
「おお、あったぞ、学校 」
『・・そうですか』
ほら見たことか。もっと初めからちゃんと捜せ。おかげでこっちは母親に心配かけたままだ。とんだとばっちりだ。

「じゃあ ここに連絡して確認してみるから」
『え、ちょっと待って下さい。今日は土曜日でもうこんな時間じゃあないですか。学校やってませんよ。』
「そうか、じゃあ 明日、いや、月曜日にまた来なさい。」
『・・・・』

『月曜日って ミケーレ心配するだろうなあ。』俺はとりあえず引き下がり駅を離れた。どこにホテルとかあるのか、いや、ここはスイスだ ホテル代も高いんだろうなあ。2泊分のホテル代なんて持ち合わせてもなかった。

そして俺はあてもないまま駅を出た。

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