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「私はすっかり日本人になってしまいました!」トルコ人女子学生が言っていたのを想い出す  マルマラ海沿い街道の旅★2019(3)

旅日記の途中、ひと休みが長くなり過ぎました。


イスタンブールという大都市は、黒海とマルマラ海をつなぐボスポラス海峡によって、ヨーロッパ側とアジア側にへだてられている。空港のある欧州側から友人Mの大学があるアナトリア側に渡る橋は3本かかっている。

イスタンブールを含むGoogle Map. 欧州側の空港からアジア側の大学へ、最も北の橋を渡る

アブダビ滞留で1日遅れた後、前年に開港したばかりのイスタンブール国際空港に到着、予定より1時間半遅れて友人Mが現れる。
個体差はあるのだろうが、どうやらこれが《トルコ時間》らしい。
私の学生(トルコ人女性)は、日本で2年暮らした後、共同研究のために3カ月間、母国の大学で実験したら、
「ここでは学生が装置の予約時間を守らないし、何か壊しても修理の手続きをしない! トルコではストレスばかりです! 私はすっかり日本人になってしまいました!」
と不満を爆発させていたのを想い出す。

2015年にできた最も北側のヤウズ・スルタン・セリム橋(↓)を渡る。
この橋のコンクリートの柱は、Mが指導しているセメント会社のもので、彼の技術も関わっている、と誇らしげに言う。
一番新しく、3本の橋の中で唯一、大型トラックや大型バスが通れるため、相対的に最も混んでいる。

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ヤウズ・スルタン・セリム橋(Wikipediaより引用)

テロが多いせいか、大学キャンパスの入り口ではガードマンが1台1台停めてIDを確認する。
この大学(Sabanci University)は、1994年にSabanci財閥が設立した私立大学で、材料系学科の設備はかなり充実している。
広大なキャンパス(↓)には、寮があり、職員宿舎があり、長期滞在者用のゲストハウスがあり、短期滞在者用のホテルがあり、小さなスーパーマーケットがあり、レストランがあり、基本的にこの中だけで生活が可能になっている。

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Sabanci大学のキャンパス遠景(大学資料より引用)

ホテルは、教員のMが払うと1泊10ユーロ、私が払うと15ユーロ。必要最小限のサイズで、学内施設らしく、特に机が大きいのがありがたい。

トルコの大学の教授の部屋はたいていそうなのだが、共和国の初代大統領、ケマル・アタテュルクの肖像画が飾ってある。
これは、どこかの国のように『飾らないとマズイぜ』というわけではなく、この人はその実績によって真に尊敬を集めている。
彼は多くの改革を行ったが、最も重要なものは、《政教分離》《トルコ語の国語化とアルファベットの使用》である。また、一夫多妻を禁止し、1934年に女性参政権を実現した。

夕食は、Mと奥さんのC(もとは米国籍)、滞在中のリュビワナ大学(スロベニア)の女の先生、Mの学生、の5人でGYROレストランに行った。

イスタンブールではどのレストランにも、基本的に男性従業員しかいない。
キッチンであぶった肉の塊(薄切りを再度重ねたもの)を削り取ったり、薄いピタのような小麦性の皮を焼いたり広げたりしている調理係はもちろん、ウェイターもすべて男の世界であり、やや異様な印象を受ける。

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GYROのレストランは♂ばかり

その理由を尋ねたことがある。
「俺のワイフかガールフレンドがウェイトレスだとしよう。店に男の客が来て、彼女に話しかけるじゃないか?」
「そりゃあ、……注文しなきゃならないからね」
「そしたら、俺はそいつを殴らなきゃならない。そうならないためには、働かせないのが一番いいのさ」
「……なるほど」
もっとも、田舎のレストランでは、ウェイトレスを見かけた。幸い、食事の注文をしても、テーブルの下に潜んでいた怖いお兄さんが出てきて殴られることはなかったが。

最初にトマトやキャベツ、ピクルスの皿が出てきたので、サラダだなと思ってそれだけ食べてしまった。
他の連中は、そのタイミングではなく、後から削ぎ肉(GYRO)の皿が出てくると、野菜も一緒にピタの中に巻き始めた。
しまった、と思ったが、《俺の流儀はこれだぜ》風に、なにくわぬ顔で肉だけを巻いて食べる。
飲み物は、《アイラン》という塩味のヨーグルトドリンク。本当はビールが飲みたかったが、トルコでは酒を出す店が限られているのだ。

実は、このレストランでは写真を撮りそこねたので、別の店のGYRO料理皿

店を出たところで道端の果物売りから桃、サクランボ、イチジク(皮は緑色)を買う。部屋に帰って桃とイチジクを食べたがどちらも甘く新鮮でうまかった。イチジク(↓の一番下)は緑色なのに熟れていてあまい。
トルコでは野菜も果物も、実に安い。

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レストランから出てきた客を目当ての路上フルーツ屋;とにかく安くて新鮮! 緑色が無花果

イスタンブールに行く人は、塩野七生の「コンスタンティノープルの陥落」を読んでから出かけることをおススメします。東ローマ帝国の首都として一千年余も栄えたコンスタンティノープル。独自の文化を誇ったこの都が、オスマン・トルコ皇帝メフメト2世の攻撃の前にいかに激しく抵抗し、いかに敗れ去ったかが描かれている。

次回は、学食など、キャンパスを探検します。


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