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【レポート】PLAY!クエストvol.4「心の声に耳を傾けて、五城目町を世界で一番こどもが育つ町に」ーー柳澤龍さん

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PLAY!のコミュニティでは、メンバー限定のオンラインイベントを開催しています!この記事はそのなかの一つ、起業家や専門家のみなさんをゲストにお呼びし、インタラクティブに質問やプロジェクトの相談ができる「クエスト」の内容をご紹介します。

今回取り上げる「クエストvol.4(2021/07/13)」のゲストは、一般社団法人ドチャベンジャーズで代表理事をされている柳澤龍(やなぎさわりゅう)さんです。

※本記事は、PLAY!事務局で情報発信やメンバーコミュニティづくりを担当しているシェリー(遠藤さくら)がお届けします。

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(柳澤さんのプレゼン画像《「クエストvol.4より抜粋」》)

【いつかやってみたいと思っていた地域の課題解決】

ーー自己紹介をお願いします!

柳澤:僕は練馬区の出身で、27年間東京に住んでいました。大学院卒業後はIT企業で働いていたのですが、もともと人口減少社会や高齢化がすすむ地域に関心があり、いつか課題解決に挑戦してみたいと考えていました。

ある日、知り合いに呼ばれて秋田に行ったとき、とても楽しかったんです。そこから、やはり地方で働きたいという思いが強くなり、地域おこし協力隊として秋田県の五城目町に3年間着任することにしました。

その後、まちづくり社団法人の立ち上げなどを経て、現在は『BABAME BASE』という廃小学校をオフィスに改装した施設の運営をしながら、「世界で一番こどもが育つ町」をテーマに活動しています。

ーー五城目町にはもともとご縁があったのですか?

柳澤:いえ、それがたまたまのご縁なんです。もとから「五城目町をなんとかしたい!」と思っていた訳ではありませんでした。

秋田に興味をもったきっかけは、大学時代に運営していたシェアハウスです。そこでは県外から東京に就職しにくる方々を受け入れていました。そのとき47都道府県の中で唯一こなかったのが、秋田県の人でした。なぜか秋田県の人はこなかったんです(笑)。なので「秋田に友達がほしいな〜」というくらいの軽いノリで、秋田への興味は持っていました。

【五城目町と『BABAME BASE』】

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ーー五城目町と柳澤さんの事業について教えてください!

柳澤:五城目町は、秋田県の真ん中あたりにある町です。2010年には10,500の人口があったのですが、2020年の11月時点で8,800人まで減ってきています。高齢化率は48%で生産年齢人口が46%なので、高齢者の方が多い町になっています。また町の面積の7割を山林が占めていて、中心部にも山々があるようなところです。

そして僕が今、この五城目町で仲間と運営しているのが『BABAME BASE』という廃校オフィスです。僕たちは「子どもが育つ」ということが、地域のある意味だと考えています。地域で育まれたものが次の世代に受け継がれるからこそ、そこに人が住む意味があるのだと思っています。

「子どもが育つ」というのは、プログラミングができたり、東大やハーバードへ進学したりということではありません。世界の学びで有名なレッジョ・エミリアなどの北欧諸国の教育を視察して驚いたのは、子どもに学ぶことを強要するのではなく、子どもも大人も学ぶことを楽しんでいるということです。その気づきを参考にし、僕ら自身が子どもと共に歩んでいくような町をつくりたいという思いで活動しています。

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ーー現在、事業の規模はどれくらいなのでしょうか?

柳澤:現在「BABAMA BASE」には、16社の企業が入居しています。実は、ちょうど今週も1社入居していただきました。田舎のわりにはいろんな方にお越しいただいていて、とても嬉しい限りです。

ほかの事業としては関係人口事業という移住定住を促進する県の事業に関わっています。今は5自治体のサポートをしています。プロジェクト全体だと計5、60人の方が秋田に移住するための支援をしてきました。

一番やりがいを感じているのは、『国語算数理科デザイン!』という高校生から大学生を中心にした若者向けの広義のデザイン教育です。毎年だいたい3、40人にご参加いただいています。地域の観察を通して実際に心が触れたもの・感情が動いたものなど、1年間を通して実感を伴う事物を何かしらの表現に落とし込んでいくというプログラムです。これからもいろんな学びの構造変化を後押ししていくことに投資していきたいと思っています。

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【心が折れてしまった経験から学んだこと】

ーー今の状態にたどり着くまでに試行錯誤してきたことなどをお伺いしたいです。事業を立ち上げてきた中で、ターニングポイントと呼べるような地点はありますか?

柳澤:実はもうひとつ、秋田の一次産業高校の魅力化を促進するための社団法人をやっていました。そこでは、偏差値は低くとも海洋系の技術をしっかり教えている技術校に、世界最高の学びを提供しようと考えていました。具体的には秋田の国際教養大学や世界一の水産国であるノルウェーの高校と連携するプロジェクトです。

ただ正直にいうと、事業が回るビジネスモデルがなく、なんとか町や県の補助金を申請してやりくりしていました。自分たちの給料はないまま、手弁当で高校と関係を築くような状況です。やっとのことで学校の予算を使ってノルウェーに4人だけ学生を送り込むプログラムを企画しました。でもそのようなプログラムが実現するまでには時間がかかります。1年目はラッキーで食べていけたのですが、その後は大学で派遣社員として働きながらプログラムを進めていました。

そしてだんだん高校が全然前に進もうとしない状況に不満が募っていきました。「もっとスピード感が必要なのになんでわかってくれないんだ。こっちはボランティアでやってるのに!」という風にです。辛い状況で、誰かを責めたくなっていたのだと思います。今振り返れば、学校には学校の変わるスピードがあるので、先生が悪いわけではないです。自分のベースが安定しなくなると、その精神状態はすぐ周りにも波及してしまいます。目がつり上がって「世界は変わるべきなのに、誰も理解してくれないんだ」みたいなことを思い始める。それで僕は完全に鬱になってしまいました。

その頃から、変わらざるを得なかったと思っています。そのとき考えたのは、僕が無理してプロジェクトをやらなければ、自分の精神や大切な人との関係性を守りながら事業を進められたということです。「社会はこうあるべきで、自分は課題を解決することで認められる」という思いが焦りになってしまったんです。起業家ってすごい勢いで物事を形にしていくイメージがありますよね。でも自分が変わるスピードを相手に求めてはいけないのです。自分の精神が安定していなければ、どこかで歯車が狂い、プログラム自体もどんどん壊れていってしまいます。僕はこの経験から、絶対無理はしないという主義になりました。

【自分の声に耳を傾ける重要性】

ーーとても興味深いお話でした。一度心が折れてしまうと諦めてしまうような気もするのですが、どうやって立ち直ることができたのですか?

柳澤:鬱になってしまったあと、お先真っ暗な気持ちで余裕はなかったのですが、とにかく精神的に健康になりたいと思いました。まずはメンタルの構造から変えないと、また何かに取り組んだところで同じことを繰り返してしまう気がしたんです。もともと僕は明るいですが、その頃はずっとうつむきでした。こういう自分もいるんだと気づいたし、まずはこんな自分を受け入れようとコーチングを学ぶ講座を受け始めました。

コーチングを勉強したり受けたりしながら、自分の課題が「自分自身の声を聞けるようになること」だと気づきました。コーチングは他者の話を聞くだけでなく、自分の声も聞く技術だと思っています。僕は”起業家のあるべき姿”にかっこよさを感じていて、「起業家はこうあるべき」という考えから動いていました。問題を解決するために、目をつり上げながら自分なりの正義を振りかざしていたのです。でもそういうあり方はおかしいと思うようになりました。真に重要なのは、自分がどういう人間で本当は何がしたいのかという心の声に耳を傾けることです。心の声を理解するという点では、僕はこのPLAY!がよくできていると思いますね。

災害ボランティア活動をしている優秀な人材が、予定より短い期間でもとの場所に戻ってくるという話があります。僕はこれを健全なことだと思っています。彼らは誰よりも周りの人のためにがむしゃらに努力できるのです。でも頑張る一方で、本当に彼らがしたかったことに気づき始めます。カフェを経営したいとか、家で家族とゴロゴロしたいとか。このように”あるべき自分”と”ありたい自分”の乖離が生まれていった先に、ポキっと心が折れてしまうのです。

一度折れた心を回復させるのには時間がかかります。心の声を聞けるようになるのは難しいことです。僕も時間をかけて、自分の声を少しずつ聞けるようになってきました。何よりも自分の心身が元気であることが大切です。今は自分の心のコップが満たされてから、溢れた分を周りに渡せればいいなと思っています。

ーー今取り組んでいらっしゃるのも教育という分野ですよね。自分の心の声を聞いたときに、やりたいことは変わっていなかったのですか?

柳澤:そうですね。改めて本当の自分は変わらないなと強く思っています。願いみたいなものは変わっていなかったです。やっぱり子供が育つ町にしたいと思ったし、どこにいる子供にも可能性が開かれた社会であってほしいという部分はブレませんでした。ただそれに取り組むときの自分は、優しい笑顔でいたいとは思います。

ーーやりたい内容自体がズレていたのではなく、向き合い方のチューニングができたことでより自分らしく向き合えるようになったのですね。

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【”誰のためにやるのか”に立ち返る】

ーー教育分野をボランティアではなく生業にするのは難しいと思うのですが、工夫や意識してきたことはありますか?

柳澤:いち意見として聞いてほしいのですが、そもそも事業にする理由を考え直した方がいいと思っています。それで食べていくことがどこまで重要なのかと。僕は教育を変えるというのは、シンプルに法律を変えることだと思っています。それが最も多くの子どもたちに価値提供できる方法だと思うからです。

例えばですが、児童館は誰がつくったかご存知ですか?
実は山形県の一農家と言われています。1960〜70年代に農業革命や都内への集団就職が起こり、地方では3世帯で農業をやっていたのが核家族化してきました。核家族のおとっちゃんとおかっちゃんが機械を使って農業しなくてはならないので、子どもの面倒をみる人がいない。そのときに、子どもを一箇所に集めて面倒を見てもらえる場所があったほうがいいというアイデアが生まれ、町の議員に働きかけて、子どもを預けられる場所をつくってもらったそうです。これは当時、農業大国の日本であれば田舎のどこでも必要な制度だということで、30年くらいかけて児童館法ができるのです。現在でも毎年何億ものお金が児童館に使われています。

最初に児童館というアイデアを出したのは農家であって、児童館の経営者ではないのです。僕は教育には、誰もが関わることができると考えています。専門家になる道もあれば、そうではない道もある。何より農家が自分の家族のためにやったというのが、僕的にはしっくりきています。事業化することを念頭におくのではなく、誰のためにやるのかに立ち返ることの方が大事なのではないかと思います。

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【レポートまとめ】

柳澤さんのお話はいかがでしたか?

柳澤さんの教育や地域に対する思いが伝わってくるイベントでした。ご自身のプロジェクトに取り組んでいるみなさんにも、響くところがあったのではないかと思います。心が折れてしまった経験から得た学びは印象的でしたね。「自分の心の声に耳を傾ける」ことは簡単そうで、難しいことだと思います。やりたいこと対する自分らしい進め方を見つけるためにも、今一度落ち着いて自分と向き合う時間をとってみるとよいかもしれません!

【ドチャベンジャーズ】
秋田県五城目町馬場目にあるBABAME BASEを拠点に、五城目町内の土着企業・個人が立ち上げた団体がドチャベンジャーズです。移住・定住・起業といった人生において軽くはない出来事を、我々土着チームが情報発信・サポートすることで人々の救いになること、地域課題解決の一助となることを目指しています。
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今後もPLAY!では、自分らしい挑戦スタイルでアクションしつづけたい方々をサポートしていきます。PLAY!に少しでも興味を持ってくださった方は、ぜひお気軽にコーチング無料体験にご参加ください!

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