週刊少年松山洋_タイトル_修正

第175号『知っておくべき業界商標事情の常識』

“商標って何ですか?”

お昼ご飯の雑談の中で、新人スタッフからこのセリフが出てきたときに“ギクリ”としました。

恐る恐る新人スタッフに

“君はゲーム系の専門学校を出てるんだよね?学校でそういうことは習わなかったのかな?”

と聞いてみましたが、

“いえ、ゲームを作るための技術は学びましたが法律的なことは全然授業では無かったですね”

とのこと。

“法律?いや、確かに法律なんだけど”

って言いかけたところで止めました。

長くこの仕事をやっていると商標や特許に関する知識や下調べは我々にとってはある意味“常識的”な感覚でいましたが、現場にいる開発スタッフのひとりひとりが(新人に限らず)ちゃんと意識できているか?と言われるとなかなか自信がありません。(だからギクリとしたのです)

サイバーコネクトツー社内での“商標や特許”に関する勉強会は別途やるとして。(やることが決定しました)

今回はその“商標”に関するお話。

商標とは
商品や役務を提供される需要者が、商品や役務の提供者を認知するための文字、図形、記号、立体的形状、色彩、音などの標識。商品の商標はトレードマーク、役務の商標はサービスマークなどと称される。

こうして言葉で説明するとなかなか難しくなってしまいますが、要するに商品名やサービス名のことですね。

ゲーム業界だとゲームソフトのタイトル=商品名だったり、その作品のジャンル名だったりシステム名だったりもします。

商品名は言わずもがなですが、意外なところはジャンル名ですね。

例えば“サウンドノベル”はスパイク・チュンソフトの商標です。

『弟切草』で最初にサウンドノベルというジャンルが銘打たれましたがそれから10年後に商標登録されました。(なので現在では他社はビジュアルノベルと言ったりテキストアドベンチャーと言ったりしています)

商標が登録されると他社は勝手にその商標を使用することが出来ません。(知的財産権で保護されています)

ゲームタイトルなんかで似たようなタイトルを付けたりすることはわかりやすく(商標権に)引っかかるので、みんな新企画や新商品を出すときには事前に簡易調査を行って安全を確認した上で本格的な調査後に商標登録という流れになります。

ただ、ゲーム業界は本当に特殊でどの企業も【防衛的商標取得】という考え方がありまして。

“もし他社から訴えられた時にこっちも色んな商標を押さえておけば抑止力になるから取っておこう”

という考え方で各社様々な商標を取得しているのが現状です。

前述の“サウンドノベル”の商標をスパイク・チュンソフトが取得していることは誰から見ても納得だと思います。

同じくコナミが“ワールドサッカー”という商標を取得していることも納得できます。

コーエーの“三国志”も同じくです。

ところが、この“三国志”という商標はバンダイも持っています。

は?って思われるかもしれませんが事実です。

コーエーの“三国志”は【電子計算機用プログラム】で取得。

バンダイの“三国志”は【家庭用テレビゲームおもちゃ】で取得。

それぞれの取得区分が違うわけですね。

(皆までは言いませんが)コーエーは必然的にバンダイとは仲良くする理由が生まれるわけですね。

ちなみに、ちょっと調べればわかることですがバンダイはこの商標取得がかなり凄い(エグイ)です。

まずバンダイは“RPG”という商標も取得しています。(これで業界皆殺しにできます)

他にも“必殺技・バトル・テレポート・大地震・大戦術・ボイスサウンド・風林火山・ソーラーセンサー・トラベル・タイムマシン・バーチャル・預言者・チャレンジ・大攻略・出撃・チャンネル・チェンジ”なども取得しています。

パッと見ると“え!?そんな言葉まで取得できるの?アリなの?”って思ってしまいますが、キチンと取得されていますのでアリなのです。

“ドンジャラ・超合金・ガシャポン・ガチャガチャ・ひみつきち・戦隊・カードダス・変身ベルト・テレビ絵本・最強合体・へんしんステッキ・てれびでんわ・おしゃれドレッサー・秘密兵器・プリント大好き”

この辺はなんか馴染みのあるバンダイの商品って感じがします。

しかし中には

“変身”なんて商標もあります。(だからバンダイ関係以外のヒーローは“変身ッ!”って叫ばない=叫べないワケですね)

“界王拳・かめはめ波・天下一武道会”(あくまでおもちゃの区分ではありますが版権を許諾するというのはこういうことなんですね。バンダイの商標取得になっています)

一応言っておきますが。ひと昔前の“ドメインゴロ”のように全く関係の無い人や企業が商標だけ取得して(まるで嫌がらせのように)“今後も『〇〇』の商品名を使用するならいくら支払え”みたいなことは出来ないようにはなっていますので、ご安心ください。

バンダイは日本を代表する巨大な玩具メーカーであり、同時にたくさんの商品を企画・製造・販売を行っているからこその広範囲な商標取得であるということを理解しておいてくださいね。

ただ、一方で我々ゲーム会社(ゲームクリエイター)も商標の事はキチンと理解して分かった上で(他社の商標を侵害することなく)新しい商品を世の中に提案しなければなりません。

余談ですが、ゲーム業界以上にこの商標登録に関する意識が低かったのが出版(漫画)業界です。

漫画を生み出すのは漫画家でそれを掲載・連載・出版するのはもちろん出版社ですが、ほとんどの出版社が連載開始時に商標調査をする習慣がありませんでした。(すぐに打ち切りになるかもしれない新連載全てに労力とお金を使わない・使えない)

けど、連載が軌道に乗って大人気作品となり“いざアニメ化!”となった時に商標が他社に取られていてそのままの商品名では出せない、という事情が過去にいくつもありました。

有名な作品だと『スラムダンク』ですね。

覚えてますか?アニメの『スラムダンク』は『スラムダンク』ではなく、『From TV animation スラムダンク』という番組名でした。

これは『スラムダンク』という商品名が他社の商標を(漫画以外の区分で)侵害したためですね。

『ONEPIECE』や『金色のガッシュ‼』のアニメのタイトルも同様です。
(アニメではそれぞれ『From TV animation ONEPIECE』『金色のガッシュベル‼』でした)

……さて、社内勉強会の準備でも始めるか。
(つかこういう勉強会どなたか一緒にやりませんか?会社同士でも複数社で集まってやったほうが絶対効率が良いと思うのです。希望者はコメント欄にメッセージをお願いします)

この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?気軽にクリエイターを支援できます。

スキありがとうございます!嬉しいです
76
株式会社サイバーコネクトツー 代表取締役 ゲームソフト開発タイトル代表作『.hack』シリーズ 『NARUTO -ナルト- 疾風伝 ナルティメット』シリーズ 『ジョジョの奇妙な冒険』 著書『エンターテインメントという薬』『熱狂する現場の作り方』漫画『チェイサーゲーム』
コメント (8)
すごく興味深いです!タイミングがあえば後輩と参加したいです!個人でも参加可能でしたら、よろしくお願いします〜。
西位さん、もちろん大歓迎ですよ!ぜひ!
興味深いです!機会がないとなかなか調べる時間を取れないので、是非一緒に勉強させてください!
もちろんです、開催時には告知しますね。
コメントを投稿するには、 ログイン または 会員登録 をする必要があります。