第393号『説明しなきゃならんことが多すぎる』
私は定期的にマッサージや整体を受けることがあります。よく行くのはマッサージの方で大井町にある『おふろの王様』でサウナに入った後にマッサージを予約して60分のボディケアをほぼ毎月のように受けています。
皆さんは整体とマッサージの違いってご存知ですか?
正確な話をするとマッサージのほうは国家資格が必要だったりするのですが、まぁここではいいです。(あんまり細かい話は重要じゃあ無い)
私の感覚だとマッサージは全身を揉みほぐしてくれて、整体のほうは全身の骨格のズレなんかを矯正してくる、という感じです。
で、私はマッサージに行く頻度の方が断然高いのですが、たまに骨格矯正のために整体にいくことがあります。
激しい運動をした時なんかは特に、ですね。
今回のエピソードはその整体に行った時の話です。
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マッサージなんかだと、受付でコースを指定して(全身とか足つぼとか施術時間とか)あとはそれを受けるだけ、なんですが。
整体の場合は最初に問診みたいなものがあります。
今回の話の趣旨はここになるわけですが。
私はまずこの整体の問診の時間が異常に長いと感じています。
あ、いや、一般的にどうとかいう話では無くて私の場合が特に長い、という話なんです。
先日の整体の時もそうでした。
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説明しなきゃならんことが多すぎる
「今日はどうされました?」
「あ、はい、ちょっと背中をグキっとやったみたいでして痛くて」
「あら、どうしたんですか?」
「あー、いや、ちょっと先日プロレスをやりまして」
「プロレス!?(全身をまじまじと見る)」
「あ、いや、私はプロでは無いのですがちょっとリングに上がって」
「プロレスラーじゃないのにリングに?」
「はい、もうそこはいいじゃないですか。え、気になります?じゃあ話しますけど私の友人のアニメ監督がプロレスラーやっててそのイベントにエンタメ枠として出場したんですよ。だからプロってわけじゃないです。つか私の体格見ればプロではないことはわかりますよね?で、素人がちょっと練習してリングに上がったので案の定ね、本番中にひっくり返って受け身を取った時に背中をグキっとやってそれからなんか痛いんですよね、あ、試合は昨日だったんですけど。一晩寝てもやっぱり背中が痛いので仕事を抜け出して整体に来たわけなんです」
「ご友人がプロレスラー?」
「え、そこ拾います?ええ、そうなんですよ、いや、私も意味不明だと思ってますよ?けど事実なんですよ。本業はアニメ制作会社を経営している代表なんですけど何故かプロレスラーもやってるんですよ。で、その仲良くしているプロレスラーの友人から誘われてほぼ毎年のようにリングに上がっているんですよ、私は。え?いや自分でもわけわかんないって思ってますよ、変ですよね、大丈夫です、自覚あるので!」
「えっと、松山さんはなんのお仕事をされてるんですか?」
「そこも気になります?まぁですよね?プロレスラーを友人に持っていて昼間に会社を抜け出してこうやって整体に来てるわけですからね。不思議ですよね。けど私は代表なので自分の時間はある程度自由にコントロールできるので大丈夫なんですよ」
「自由業の方ですか?」
「んー、そうとも言えますけど。いや、別に引っ張る話でも無いので言いますけど私はゲームクリエイターなんですよ。ゲームソフトを作るお仕事をしています」
「ゲーム?スマホとかですか?」
「いえ、違います。家庭用ゲームソフトと言って、ほら、コントローラーってあるじゃないですか。あれを握って遊ぶタイプのゲームソフトですよ。そうテレビに繋いで遊んだりする、ね。わかります?ニンテンドーSwitchとかPlaystationとかですね」
「ゲーム機を作られてるんですか?」
「違います。よく言われますけど違いますね。ゲーム機じゃなくてソフトのほうです。ゲームソフトを作っているんですよ」
「あ、ソフトのほうなんですね。じゃあ工場で」
「違います。なんで生産するほうだって思うの?え、そんな肉体的な労働をやっているように見えます?どちらかというと華奢なほうに見えませんか、私?いっかいプロレスとかのイメージから離れてもらっていいですか。ゲームソフトを作っているんです。遊ぶ方の!」
「じゃあ頭が良いんですね」
「なんで急にすり寄ってきたんですか。別に頭がいいとかじゃないですよ」
「だってゲーム作るのって難しいんじゃないですか?」
「そりゃ簡単じゃないですよ。物凄く時間がかかりますし大勢の開発者と一緒に力を合わせて作りますからね」
「何人くらいで作るんですか?」
「んー、ピーク時は100人以上の開発体制でやったりしますね。つか、この話まだ続けます?会社を抜けてきてるので早く施術してもらってさっさと仕事に戻りたいんですけど」
「あ、失礼しました。(ふとカルテに目を通して)あれ?ご住所が福岡県になってますけど」
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