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#市民性エピソード

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暮らしの中で出会う優しさ、あたたかさ、ほっこりするエピソード、ときどき、「どうすれば良かったんだろう」とモヤモヤしたエピソードをご紹介しています。 言葉にするほどでもない、人と… もっと読む
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いつもの掃除のおばちゃん

いつもの掃除のおばちゃん

私が小学生の頃、住んでいたマンションにお掃除をしてくれるおばちゃんがいた。掃除が終わったおばちゃんは畳一畳分の小上がりの部屋のドアを開けて、そこでよくお茶を飲んでいた。
私は同じマンションに住む友だちとその場所を訪れ、おばちゃんと話をするのが好きだった。

ある夏の日、親に内緒でビーチサンダルを履いて、友だちと出かけた。
親から「危ないから遊ぶ時は靴を履いていきなさい」と強く言われていたけど、私は

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あたたかな声かけ

あたたかな声かけ

今朝は仕事で早めに出かけ、ひと段落してカフェで一息ついていた。

カフェの店員さんがお店から出て行く一人ひとりに、
「ありがとうございます」
「今日も良い1日を」
「お気を付けていってらっしゃい」
などと声をかけていました。

カフェの店員さんの一人ひとりに声をかけるそのあたたかさに、
朝からほっこりした気分になりました。

暮らしの中にある、誰かを想うふるまいやまなざし。
PIECESはそれを「

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1席分のありがとう

1席分のありがとう

電車の中で席を譲ってもらったのに、私は断ってしまった。

声をかけてもらえてとても嬉しかった。
けど、子どもと一緒に席に座ってしまうと動けなくて、子どもが泣くかもしれないから、立って動けた方が良いんだよな。

子どもと私のことを気にかけてくれて、
そして声をかけてくれて少しホッとした。

「ありがとうございます」
と丁寧にお伝えしたけど、気持ちが伝わったかな。

今回は断ってしまったけど、また声か

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杖はなくても

車に乗っていたときに、目の前の横断歩道を渡るおじいちゃんがいた。
おじいちゃんは身体があまり良くなさそうで、横断歩道を渡るのにかなり時間がかかっていた。
いつ転んでもおかしくないかもと気になっていた。

すると、すれ違って反対方向に向かおうとしていたおじさんがおじいちゃんに声をかけていた。

手と肩を貸して一緒に横断歩道を渡りきり、
その先の移動のお手伝いもしていた。

おじいちゃんとおじさんは知

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登っているのに低くなる

登っているのに低くなる

山では「優しい間(ま)」を感じやすい。

天気が悪くなりそうな方面に向かう登山者に出会ったら、
「今日はどちらまで行くんですか?」
「泊まるんですか?」などと声をかける。

山は街よりいろいろなことの垣根が低いのはどうしてだろう。

山に登る人みんなが、誰かが落としたゴミを自然と拾う。
水場が枯れていて困っている人がいたら、同じ環境にいる自分の水をシェアする。
テントが隣になった人と名前も知らない

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役割の持つチカラ

役割の持つチカラ

息子を小さい頃から連れて行っている地域のイベントがある。
大人向けのトークイベントではあるけれど、子連れも許容してくれて、小さい頃は会場の後ろの方で遊ばせながら参加させてもらっていた。

いまでは、小学校高学年になり、自分から「次はいつ?」「お手伝いしていい?」と一人の参加者になってトークもきくようになり、私が知り合ってない大人といつの間にか仲良くなっていて驚かされる。
先月からとうとう息子はイン

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町のパン屋さん

町のパン屋さん

娘が赤ちゃんの頃から通っている近所のパン屋さん。
寡黙で口数の少ない店長とは、会釈をしたり、一言二言のやりとりをする関係性。
娘も大きくなってきて、だんだん子どもがいない時間に買い物をするようになったある日、久しぶりに小学生になった娘と一緒にパン屋さんへ。

穏やかな笑顔で迎えてくれる店長が、
「大きくなったなぁ。」とつぶやいたその一言が
なんだかとてつもなく温かった。

そこには、パン屋さんとお

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思い出してくれる人がいる

思い出してくれる人がいる

もう何年も会えてない友人から連絡が来た。
「元気かな?ってふと、頭に浮かんだんだ。」
そのメールを見て、心がじわ〜っと温かくなった。

たまたま昔の写真を見たのかもしれないし、何かきっかけがあったのかもしれない。
それでも私がいないところで、私のことを思い出してくれる人がいる。
それってすごく尊いことかもしれない。
これまで出逢ってきた人たちを想い、言葉にする。
そこに生まれる優しくあたたかな間は

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ベンチのあるまち

ベンチのあるまち

私の住むまちには、遊歩道がある。
犬の散歩をしている人、ランニングをしている人、自転車で駅に向かう人などいろんな人が行き交う道。
その遊歩道には、ぽつぽつとベンチが置いてある。
近所の方が散歩しつつ、ベンチに座っておしゃべりしているのをよく見かける。

私も遊歩道にあるベンチに座ってみた。
座っていると、ベンチは木々に覆われていて、時々木のすき間から太陽の光が入ってくる。
風が心地よく感じる。

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雨の追いかけっこ

雨の追いかけっこ

夕方買い物に行った帰りに、急にぽつりぽつりと雨が降り出した。
早く帰ろうと思って、自転車を勢いよくこぎ、いつものトンネルを抜けたところ、同じく雨に降られて走り出した男の子と出会った。2年生くらいだろうか、下校中でランドセルを背負った男の子。
一瞬目が合って、わたしがその子の横を通り過ぎたら、その子も負けじと走ってくる。
ふたりで雨の中、追いかけっこになった。追いかけっこなんて、とても久しぶり。

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帽子のゆくえ

帽子のゆくえ

今日は、普通に歩いてても流されそうなくらい風が強い日だった。
歩道橋を歩いてると、目の前に帽子が飛んできた。

私が拾おうとすると、また飛ばされていき、歩道橋から帽子が落ちたらやばい!と思い、焦って追いかけると、帽子の持ち主、私、飛んだ先にいた人、3人がひとつの帽子を全力で追いかける状況になりました。

3人が本能とハラハラ感で追いかけている気がしましたが、
その場に優しさが溢れている瞬間でした。

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ご自由にどうぞ

ご自由にどうぞ

保育園の隣にある畑で作業するおじいちゃんに会う。
おじいちゃんを見つけると、娘が「じーじ!」と声をかけ、私は「おはようございます」と声をかける。娘は保育園のお散歩の時に通るようで、おじいちゃんの姿を見つけると声をかけたくなるようだ。
おじいちゃんからも時々「おはよう」と声をかけてくれる。

保育園からの帰り道、なす、きゅうり、ピーマンが小さな箱に置いてあった。
段ボールに「自由にお持ちください」と

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おいしいのおすそわけ

おいしいのおすそわけ

新鮮な野菜が食べたい。そう思って、知り合いの農家さんから直接送ってもらうことにした。何種類もの野菜が食べたいと思うと、一家族では食べきれないし、必然的に余ってしまう。
そこで、家の近くの軒先を借りて野菜のおすそ分け販売をすることにした。
美味しい野菜も食べられるし、みんなでシェアすれば運送費も安くなる。

おすそ分け販売をはじめると、意外にも欲しい人がいた。「今日は何が入荷しているの?」と
いつも

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置き去りの靴

置き去りの靴

ショッピングモールの出口の近くに靴と靴下が落ちていた。
ふと横を見ると、小学生くらいの男の子が裸足で立っていた。
友だちとケンカして、靴と靴下を脱いでしまったようだ。

「いいからおまえは靴を履け!」
お父さんが靴と靴下を取り、男の子に向かって大声で言っている。
男の子は「いやだー」と泣き、靴を履こうとしない。
「おまえが悪いんだよ、いいから、靴を履け!」
その声は10m以上離れた所まで響いている

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