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短編小説🍳目玉焼き👩‍🍳

(1)

「いま、何時だ?」
窓から射し込んだ日の光で目覚めた。
 時計を見た。7時を回っていた。
「起きろったら」妻はまだ寝ていた。普段なら5時には起床して、妻のつくる目玉焼きを食べ、6時前には会社に向かっていた。
「あら、たいへん。今から朝食をつくりますね」
「いや、今日はそんな余裕はない。このまま会社に向かう」
私は苛立ちながら、車に乗り込んだ。

(2)

 私はいま、大きなプロジェクトを任されていた。大方順調に進んでいる。あとは明日のプレゼンで、進捗状況を説明するだけだ。今日は、プレゼン用の資料をまとめるだけのはずだった。

「君、悪いんだけど、明日の資料を今見せてくれないか?」と部長が尋ねた。
「申し訳ないです。あともう少しで仕上がります」
それを聞いた部長が言った。
「君、前の日になって、まだ仕上がっていないとは、たるんでいるんじゃないか?あとは私がやる。悪いが君にはプロジェクトから外れてもらう」

 私はやりきれない気持ちになった。ほんのあと1時間早ければ、完成していたのに。
 そのとき、お腹が「グ~」と鳴った。空腹感とイライラがつのった。

(3)

 その日の夜、私はムシャクシャして、酒を飲みに行った。たまに行く自宅近くの酒場である。
「あれ、お久しぶりですね。今日は、お一人ですか」
「まぁ。今日は一人で飲みたい気分なんです」
「そういうときもありますよね」

私は一人で飲み続けた。だいたい今日は朝から調子が出なかった。今まで寝坊なんてしたことがなかったのに。しかも、妻も一緒に寝坊するとは。

店に来てから2時間くらいたった頃、飲み屋の旦那が私のところへやって来た。
「お客さん、すみませんが、車のキーを貸していただけますか?ちょっと車の移動をお願いしたいのですが...」
「それだったら、私が移動する」
「いえいえ、飲んでいらっしゃるからそれはちょっと。僕が移動させて頂きます」
私はカチンと来た。
「私の車だ。私が移動させる」
旦那の制止を振り切り、私は車に向かった。

(4)

 「あなた、何で飲んでいるのに車に乗ったの?」取り調べが始まった。
「車をちょっと移動させるだけですから、大丈夫だと思ったのです」
「あなたの軽率な行動で、あの飲み屋の旦那も、お客さん2人も、3人も亡くなってしまったんですよ。なんで運転しちゃったんですか?」

私は正直に答えた。
「朝、いつもの目玉焼きを食べられなかったからです」



おしまい

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