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東日本大震災のあとに揺れたもの


もう10年経つのですね。

わたしは3.11の日、新卒入社した関東の家電量販店で働いていました。

店中の棚から商品が落ちたり傾いたり凄く揺れました。

今回はそこで起きた個人的なお話です。

店内に残された足腰の弱いおばあさん


震災が起きたときにお店にはたくさんの人がいました。


ショッピングモール内に出店している家電量販店でしたが揺れが凄くてお客さんはすぐに屋外へ逃げました。


急いで店のレジを閉めていた先輩が「この地震で、うちの子どもになんかあったら俺立ち直れないかもしんねぇ」といっていたのが印象的でした。


ショッピングモールということもあり、老若男女集まるお店なので足腰の悪いおばあさんが唯一店に残ってしまったのです。


ちょうどエアコンを買うための商談に入っていたのですが、つえで歩けるはずのおばあさんはあまりの揺れに恐怖を感じイスから動けなくなってしまっていたのです。


わたしは接客担当ではありませんでしたが、店員も逃げ出す中、そんなおばあさんを見てすぐに足を止めました。


おいおい、おばあさん逃げれなくなってんじゃん!


いそいでおばあさんのところへ行きました。


外まで逃げましょう!おぶっていくから!と伝えても


ガタガタ震えて「イヤだここにいる」の回答しか返ってきませんでした。

沼ペンギン-ショッピングモールを駆ける

そこで、レジを閉め終わった先輩に声をかけ応援を頼みました。


わたしがショッピングモールのサービスカウンターにあるレンタル車イスを借りてくる間、付き添ってあげてくださいと頼んで、揺れるショッピングモール内を走り回りました。


いろんなモノが倒れたりする中、人とは違う方向へ走って探しに行きました。


走り回ってやっと見つけた車イスを店に持ち帰りました。


そのころには、店にいたお客さんも店員もみんな逃げ出していました。


残されたのはおばあさんと先輩とわたしだけでした。


わたしたちは急いでおばあさんを車イスに乗せて店の外へ避難しました。

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揺れが収まったあとに待っていた恐怖


無事に屋外へ避難したのですが、今度は別の問題が起きました。


3月とはいえ寒かったのです。


ちょうど夕方へ向かいだしている時間帯でした。


おばあさんは寒い寒いと言い出しました。


そうだよな、いきなり外に出たら寒いよなと、わたしは店にあるジャンパーを取りにまた店内に戻りました。


ショッピングモールのアナウンスは一度退館してくださいと流れていました。


そんな中、必死にロッカーをあさり薄い生地のジャンパーを2枚とって戻りました。


震えるおばあさんにジャンパーを渡すと、「これじゃ寒い」といわれました。

えっ、ありがとうじゃね?っと思いながら、う~んまぁ、お年寄りだし仕方がないかっと自分に言い聞かせて聞こえていないふりをしました。


ここで整理しましょう。

◆沼ペンの行動ログ

・接客担当者は逃げたのに関係性の薄いわたしが声をかける

・みんなが屋外へ避難する中、逆走して車イスを探す

・寒いと思って、退館指示が出ている危険な店内でジャンパーを探す


おかしくね?


ここまでにありがとうは1回も聞いていません。


わたしが聞いたのは「これじゃ寒い」でした・・・

おばあさんの行方


このままでは、身が持たん!


すこし距離を取ろうと思いました。


幸運にも外に出ると従業員がたくさんおり、そこにいたパートのおばちゃん
が応援に来てくれました。


その後、足腰の悪いおばあさんとパートおばちゃんとわたしで過ごしました。


するとおばあさんはトイレに行きたいといい始めました。


さすがに男性のわたしは対応できないのでパートのおばちゃんと相談しました。


救急車がちょうど来ていたこともあり、おばあさんを乗せて病院へ連れてってもらえるように頼み込みサヨナラしました。

後日、お礼の手紙がきました


地震から少し経ったあと、お店に綺麗な和紙でできた感謝の手紙が届けられました。

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手紙の主は助けたおばあさんでした。


朝礼のときに店長がこの手紙の内容を読むことになりました。


わたしはドキドキしていました。


なぜなら、主人公はわたしに決まっているからです。


この読まれた内容に対しての感想を当てられるに違いありません。


ドキドキしながら聞いていました。


「○○さんと○○さんに助けられて本当によかったです。
こんなに丁寧な対応して頂いてうれしいです。」


みたいな内容だったと思います。



みたいな内容というのは理由があります。


賢明な読者の皆様ならもうピンと来ていることでしょう。


先輩とパートのおばちゃんの名前だけ書いてあって


わたしの名前だけ、手紙に書いてなかったのです。



わたしの心がものすごく揺れたことはいうまでもない。

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