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「ネット右翼」は他人事ではない件(2)ネトウヨは「ふつうの人」

▼前号では、「ごく普通の人」=8割が、第2次世界大戦の認識をめぐって、中国と韓国に反発している事実に触れた。「ニューズウィーク」日本版2019年6月4日号に載っていた、石戸諭氏の論考の続き。適宜改行。

〈こうした反発はインターネット上の空気とも関連しているのではないか。それを示唆する調査もある。

日本最大のニュースサイト、ヤフーニュースのコメント欄に書き込まれたデータを、ヤフーからの提供を受けて木村が分析した。そこで見えてきたのは、書き込みの強い動機に

1)韓国、中国に対する憤り

2)少数派が優遇されることへの憤り

3)反マスコミという感情、

があるということだ。

 木村はこれを「非マイノリティポリティクス」と呼ぶ。本来、数の上ではマジョリティーなのに、マジョリティーとしての利益を得ていると実感できない人々が声を上げる。これがネット世論をめぐる政治だ。リベラルが標榜(ひょうぼう)してきた社会的弱者やマイノリティーの権利擁護、さらに中韓についても「なぜ自分たちより『彼ら』が優遇されるのか」という怒りの書き込みが渦巻く。

 これは一部の過激なネット世論だろうか? 否(いな)ではないか。

実社会の世論調査でも、

中国に親しみを感じないと答えた人は76.4%、

韓国に親しみを感じないは58%

と多数派を形成する(2018年度内閣府「外交に関する世論調査)。

これをサッカーの日韓ワールドカップに沸いた2002年度と比較する。

親しみを感じない層は中国は49.1%、韓国は40.5%だった。

アップダウンはあるにせよ、増加しているのだ。〉

▼木村忠正氏の分析によって、「ふつうの人」が、「ネトウヨ」の広い裾野(すその)になっている「見えない現実」が浮き彫りになったといえよう。

〈これまで、ネット内のコメントは一部の過激な人たちが書き込んでおり、実際の世論とは懸け離れていると考えられてきた。

しかし、木村が実証的に提示するのは、ネット世論と世論が文字どおりの意味で共鳴するテーマがある、とい新しい考えだ。

それが「中韓」である。〉

▼ネット内での「炎上」について、実際に参加しているのはごくわずかの人たちにすぎない、という研究がある。

エビデンス(証拠)としてよく引き合いに出されるのは、山口真一氏の研究で、最近新聞で紹介されたものを参照すると、

〈攻撃をするのはどういう人たちか。山口さんの2014年の調査によると、炎上の参加者はネット利用者の0.5%。別の調査で肩書を尋ねると「主任・係長クラス以上の役職」を持つ会社員・役員が31%、一般社員が30%、「無職・主婦・アルバイト・学生」が30%だった。ある炎上事例について、参加理由を尋ねると、51%が「許せなかったから」、19%が「失望したから」と答えた。〉(2019年6月5日付朝日新聞)

▼わずか0.5%である。しかし、山口真一氏の研究と木村忠正氏の研究とをクロスさせると、中国・韓国をめぐってネット内で「炎上」が起きた場合、その裾野は「ふつうの人」である可能性が高い。(つづく)

(2019年6月19日)

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