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深夜、堕落したブルーライト、ぼくら勝手に孤独になって輪廻。

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散文詩/自由詩まとめ。
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#生活

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終わらないで
(ぜんぶ終わってしまえ)
 
 
 
夕暮れが嫌いなのは同族嫌悪で、カップラーメンは星になる。
3分待っても消えない怒りはこのまま一生残るのかもしれないけれど、簡単にわたしの言うことを聞くような感情はこんな世界ではどうせ生きていられない、
 
 
淘汰、
わたしを殺そうとする獣とわたしだけが適応する地獄、
眠りたくないことと起きたくないことは少しも同じじゃないのに、紺色のカーテ

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あくまのこ

心臓にまで染み込んでいる煙草の匂いが未だにどんな匂いか分からない、わたしは獣じゃない、かといって魔女でもない、
いつか魔女にあったとき、その甘い香りでそのことにきっと気づいてしまう、それがかなしい。
 
 
無花果をゆっくり食べる心臓に甘い匂いが染み込むように
 
 
指の先にまで流れている激情の炎のことを血液と言うのなら、わたしはやっぱり悪魔の子なのかもしれなかった、それならそのほうがずっとよ

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どれだけ泣いても海はできません

突然、わけのわからないことで死んでしまう以外に、あたしがきみを泣かせる方法なんてあるの。
 
 
きみが死ぬことをかなしむために生きているのではなくてあたしが死ぬことをきみにかなしんでほしいから生きているだけだって、気づいてしまった日の海が穏やかに凪いでいる。 
本物の灯台を見たことがないってこと、誰にも言えないまま皮膚はゆっくりと乾いていく。
それなのにお腹の中の海にぽつんと建った灯台はやけに鮮

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まだころしてないだけ

蹴らなかったガードレールはどうせわたしが蹴ったって曲がりも歪みもしないガードレールで、だから蹴らなかったわけじゃないけど、だから蹴らなくてもよかった。

(怒らないで、)
意味のないものを排除したとき、わたしの庭は更地になる、
(焦らないで、)
寝転がって部屋の隅の埃を見つけたとき、死神だけがわたしを抱きしめたがる、
(祈らないで、)
はつ恋のひと以外を信仰したとき、わたしはつまらない罪人になる、

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Home, Sweet Home

Home, Sweet Home

昼時のニュース刺したひと、刺されたひと、そのどちらにも似ているわたし

身を投げるならば綺麗な海がいいマイストローを洗う水音

焼いたことないものだけが永遠でつぶれたシフォンを思い出す犬

果物を切るためだけにつくられたナイフみたいに光りたかった

切りたての桃をひとかけ盗むようにこっそり大人になってゆくこと

つめたくてなめらかなひふ

 
おばあちゃんの家にある、古い、四角いマッチ箱の中には、わたしがこわがるもの(たとえば愛とか)が入っているって知っているから開けられない、火をつけたことがない、わたしは、命を、愛を、燃やしたことがない。 
 
 
息を吹きかけて蝋燭の炎を消す、
ゆっくりと短くなっていく線香の香りが消えるまで離れるとどこにあるか分からないそれぞれの(ほんとうの)心臓の香りが混ざった薄いにおいがして、この火をつけた

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ラクダの鳴き声を真似できない

 
なんかみんな乾いてない?
馬鹿みたいに暑いからかい
本当はわかっている
おれだけがとんでもない晴れ男で
干上がった泉の底で
死骸のふりをして寝そべっている
本当はわかっている
みんなオアシスにいる
おれが水の味を忘れてしまっただけ
乾ききった喉を鳴らして
流行りの歌をうたうだけ
 
 
シャッフル再生で流れてきた時にしか
聴きたくない歌を聴く
おれの砂漠はだだっ広いだけで
ラクダの1匹もいや

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死はさざなみのように

幸福は海で絶望は宇宙
孤独は魚みたいに幸福の中を泳いでいて
わたしは時折すべてを休んで
幼馴染の死神と海や星を見に行くためのドライブをする
それまであったことはみんな歌にして
死神だけがそれを聴いてくれる
死神だけがいつも
わたしに歌手になったらいいと言ってくれる
死神だけがいつも
わたしに期待して
わたしに失望もせず
わたしのそばを離れない
絶望は海で幸福は宇宙
愛情は干上がったくらげ

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花に嵐

ベイビー、わたしのする復讐って
葬式の最中に棺桶から起き上がることだよ
棺桶から起き上がったとき
できるだけ美しいほうがいいから
水をたくさん、たくさん飲むんだよ

死はいつも窓辺の安い一輪挿しの中で枯れたり咲いたりしているのに、対岸でぽつんと立っていると思ってるから君はわたしが水を毎日取り替えていることに気が付かない、

1日のうち、一生のうち、良かったことと良くなかったことだけを流暢に話すけど

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ハローメアリー、おやすみリトルバグ

 
羽虫を殺したこと以外に、咎められることがあっただろうか。
 
 
夢に見る絞首台はピンク色で懺悔より怖くなかった。
いつも階段を上る前に目が覚めるから、わたしはわたしのことを少しも責めていないことが分かって、すこやかに起きる朝に昨日たらしたはちみつくらいの、ちいさなスプーン1杯分の不快感が残っている。
 
前世の名前はマリーじゃなくてメアリーだった(本当はエイミーが良かったけど、その名前は年の

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ドント、ヘルプミー。

ドントヘルプミー、
おれ以外みんな、ほどけない靴紐の結び方を知っているような気がする。
ドントアスクミー、
おれ以外みんな、道を間違えたりしないような気がする。
ドントラヴミー、
おれ以外みんな、上手に折り紙を折れるような気がする。
 
 
 
好きでも嫌いでもなかった母校はまだ取り壊されないからどうせ孤独になりきれない、まだ爆破のチャンスがあるってことじゃん、と、おれがなりたかった悪魔が頭の中で

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インターネット接続がありません

インターネット接続がありません

句読点うまく打てないから

インターネット接続がありません

もらった花を枯らしたから

インターネット接続がありません

お子様ランチ食べたことないから

インターネット接続がありません

羽虫を一匹ころしたから

インターネット接続がありません

靴紐きれいに結べないから

インターネット接続がありません

読み終えられない本があるから

インターネット接

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四十六億年草

 
何にもなれないならせめて何にもならずわたしのままでいようと思ったのに、わたしはわたしのかたちを保つこともできずに骨をひとつ、ふたつ、歪めている。
 
 
 
背骨が曲がったままじゃ額縁に入れないらしい。
 
曲がった背骨に詩情を植え付けては枯らしているこの時間を、美しく咲いた多年草たちが輪廻と呼ぶから根こそぎ掘り起こしてめちゃくちゃにしてやろうかと思う。
美しくしゃんと立つひとの背中の芯が何で

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Don’t sing in the rain.

かみさまはひっくりかえって
窓辺にぶらさがっている
大抵の祈りはあとがきで
結末を決めたひとが書いている
きみは長靴を買ったんだね
わたしの傘はこわれたけれど

ながい真昼
風もないのにカーテンがゆれる

太陽を拒んだひとがころされる
日焼けした推理小説の一節が降る
きみの長靴が明朝体を踏み荒らして
犯人はわからなくなってしまった
仕方がないので
タイトルを決めたときの作者のひとみに
ひろがった波

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