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旅するエッセイ

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旅の途中で考えたこと、出会った人、もの、思い出を綴るエッセイです。
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#旅

あったかい旅の記憶

あったかい旅の記憶

最近は気軽に旅ができなくなってしまった。

でも過去の旅を振り返ってみるとあったかい気持ちになる。

それは旅の中で何度も優しさに触れたからだ。

ローマで空港行きのバスの運賃が足りなくて周りに助けを求めたことがあった。

私は半泣きで「Help me !」と声をかけまくる。

運悪く小銭がない人ばかりで、諦めようとした。

しかし、ある男性に声を掛けたら足りない分の小銭をくれた。

私は何度も「

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空港で父は私を抱きしめた~家族への一番のおみやげは、元気な「ただいま」の声だと思った話~

空港で父は私を抱きしめた~家族への一番のおみやげは、元気な「ただいま」の声だと思った話~

私が小学生の頃。父が1週間、東南アジアに出張に行っていたときのことです。

生粋のお父さんっ子だった私は、毎晩布団の中で父が無事に帰ってこれるのか心配で泣いていました。

飛行機が墜落したりしないかな、事故にあったりしないかな、病気になったりしないかな。

そんなことを思うと涙があふれてきて、枕を濡らしました。

父が無事に帰ってきて「ただいま」の声を聞いたとき、本当にうれしくて泣きそうになりまし

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あのとき見た光景は幻だったのかもしれない

あのとき見た光景は幻だったのかもしれない

3年前、私が訪れたミャンマーは穏やかだった。

街にはロンジーと呼ばれる巻きスカートのような民族衣装をはいて、タナカと呼ばれる日焼け止めを塗った人がたくさんいた。

地元の食堂で食べた麺料理の味は今でも忘れられず、それだけを食べにまたそこを訪れたいとさえ思う。

しかし、あのとき歩いた街は今、人々の悲しみと怒りに溢れている。

「死者500人超え」「子供も多数犠牲に」

ニュースを見るたびに心がズ

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一期一会と言えなかった「ありがとう」

一期一会と言えなかった「ありがとう」

マラッカ

かつて東西貿易の中継地として栄えたマラッカ王国があった場所だ。

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クアラルンプールからバスで2時間半。その日はとにかく暑かった。

宿でチェックインを済ませ、荷物を整理してからクアラルンプール国際空港までのバスを予約しにマコタメディカルセンターへ向かった。往復約40分。太陽が私の肌をさす。ひからびそうだ。

バスの予約をし、宿に帰るつもりだ

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