東京装甲少女 EPISODE 0 第9話 【 矜持 】
時恵は、父の大善の葬式にも来てくれていたようだが、
長男である秋水にとって初めての喪主でその日は、慌ただしく過ぎてしまったため、時恵と面と向かい話した記憶は
十数年前の母の真紀の葬式以来だった。
久々に向かい合った時恵は、顔の印象は特に変わっていなかったが以前よりも歳を重ね足腰が
弱くなってしまったのだろうか?
杖を突き背が丸まり、昔の元気な時さんという印象はそこにはなかった。
久々の再会が、空襲の最中というのも、数奇な運命ではあったが、他人を救う程の余力がなかった
秋水もさすがに、
父の大善の姉のような存在をここに置き去りにすることは出来ない
と思い、焦る気持ちを抑え、時恵に何とか生きてほしいという思いから説得を始めた。
秋水
【 時さん、久しぶりだね。
だけど残念だけど、あまりここで、
ゆっくり話してる時間はないんだ。
俺たちも今、安全そうな北の丸公園で
救聖軍が炊き出しをしているから、
そこに避難しようと思っているから
積もる話は、そっちでしよう!
時さん!空襲がすぐそこまで来てる!
俺らと一緒に行こう!
さあ!!】
秋水は、時恵に近寄り手を差し伸べた
時恵
【 、、、、、、。
しゅうちゃん、色々心配してくれて
悪いんだけど
私は行かないよ。
それに、あんた、私みたいな
足手まといを連れていったら、
あの子たちはどうなるってんだい?
かわいい奥さんと娘さんじゃないのかい?
私はいいんだよ!!
私なんかの事よりも、
しっかりあの2人を守ってやんな 】
秋水は幼いころから父と時恵をよく見ていた。
私は (俺は) いいんだよ!!
と2人が口癖のように良く言っていたのを久々に
時恵から聞き思い出した。
そういえば、父の大善も、時恵も自分の事は二の次で、困っている他の人が最優先という性格だった。
大善と時恵は2人の性格を知らない人から見ればただの口の悪い暴れん坊というイメージなのかも
しれないが、地元の顔役であった2人は多くの
揉め事やトラブルの中心にはいたが、
決してその揉め事は利己的な理由から起こしたものではなく、
仲間の為、困っている人の為、地域の為
という
自分の為には1銭にもならない理由で起こしたものが多く
騒動の火消し役などにも
駆り出されてよく奔走していたものだ。
当時、幼い秋水は、
なんとなく、よく揉め事を起こすこの2人の大人を恥ずかしい存在だと感じていた時期があった。
そんなあるとき【 錬命新當流 】の修練が上手くいかず、悩んでいた。
あまりにも修練が上手くいかず、スランプに陥ったため、
父の大善も心配し練習から少し身を引いて自宅でゆっくり過ごさせた事があった。
その時期に、自宅に母といた時に尋ねたことが
あった。
ねえ、おかあさん、
どうしたら僕、強くなれるのかなと?
真紀はその問いに対してこう返した。
真紀
【そうね~、、、、、。
しゅうちゃんの言う強いっていうのと】
お母さんが思う強いってのは
ちょっと、違うかもしれないけど
お母さんは、
お父さんと、時さんをよく見ておけば
強くなれると思うわ 】
秋水
【 えっ? お父さんはわかるけど時さんも、、、、?】
母は少し昔を思い出していたのだろうか、
左上を見つめ
フフフっと笑みを浮かべた。
真紀
【 そう、時さんもよ
時さんはお父さんの強さとはちょっと違うけど
誰にも負けない強さを持っているわ。
それにね、あの2人は、不器用で
少~し口が悪いかもだけど
と~ってもよく似てるの!!
お母さんはそんな2人に憧れてるわ。
本当の強さを持っている人は絶対にだれにも
負けないんだから
だからね、秋水強くなりたかったら
あの2人の事をよ~く見ておきなさい 】
と母と2人の口の悪さについてその後、少しではないと笑ったことがあった
だが、
その当時の秋水には
本当の強さという事の本質はよくわからなかったが
今になってみればこの2人を母が強いと言っていたのが痛いほどわかる
大多数の意見が、さも正当であるかのようにいつの間にか押し付けられる世の中の風潮。
自分を何かの型にハメないと落ち着かない人々。
メディアやテレビで有名人が良いとされるものが、もてはやされる時代。
少数派、人とは違う感性や個性、雅と鄙びにある存在する故の両面の美しさには誰も気づけない
自我や自分の本当の価値観や自己の善悪など考える余裕もない情報の波、考えもせず流される方が簡単だ。
反抗する事、道を外れるという事の 難しさ、自分が好きなものが好きだと 言える自由を押し通すことの難しさ。
自分が信じた道を行く
それを出来る人は如何に強い人だかわかる。
そんな、昔の事と今の心情が一瞬で重なり
秋水は時恵を止めるにはあまりにも拙い言葉だと
解りながらもなんとか藁にも縋る思いで言葉を吐いた
秋水
【 時さん!!、、、、。
でも、すぐそこまでやつらの攻撃が
来てるんだよ!行かなくちゃ!!
ダメだ!死んでしまうよ!!】
時恵はゆっくり秋水の言葉を飲み込み話し始めた、、、。
時恵
【 そうだね~、、、、、。
秋水、心配してくれてありがとよ、、、。
でも秋水!!下らん年寄りの意地と矜持
かもしれないが
私の中じゃ、ここがなくなるってのは
死ぬってのと同じ事なんだ。 】
時恵は空を時折飛来している爆撃機
を見て更に話しだした
時恵
【 こいつらは一体何なんだろうね?
突然、私らに爆弾を落としてやりたい放題で!
私らの日常をこれ見よがしに
奪っていきやがった。
私らが何をしたって言うんだろうね、、、?
暴力と恐怖で支配すれば私らを従わせられると思っていやがるんだ。
でも、私はこんな誰かもわからない 得体のしれない連中に脅されたって 負けやしない。
あいつらの思い通りになんて なってやるもんか!
だから、私はいつもと普段と変わりなく 過ごしてやるってのが 私なりのあいつらに対する戦いなんだ。
それにね、秋水、人が本当に死ぬっていうのは金や権力や暴力に屈して、 強い者の意見に負けて言いたいのに 自分の意見も言えなくて言いなりに なっちまうことさ。 そんなやつらに私の大切な物は 踏みにじらせさせない。
私はそんな風に生き長らえる位なら、
今ここで戦うよ!! 】
秋水は時恵を説得し避難させようと思ったが
黙ってしまった。
いつの間にか得体の知れない何かに、 自分たちの道場も家も吹き飛ばされ仲間も失ってしまった。
怒るという感情よりも恐怖に支配され、家族を守り避難する事を選んだ。
幼いころから弱い者を救ってやれと父に教えられた自分の意地やプライドなど捨て、生きるという事にしか執着できない考えが時恵の気高い魂に比べ浅ましいとさえ思えた。
道すがら助けを求める人の声など聞こえないふりをしていた。
いっそ、このまま、
時恵と同じ道を歩もうかとすら思ったところで、
秋水は突然、現実に呼び戻された。
シェイル
【 パパっ!!! 】
シェイルはいつの間にか母の手を離れ
秋水の元へ駆け寄ってきてしまったのである、、、、、。
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物語の初まりのOpening Part から
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是非、東京装甲少女
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始まりから
お読み頂ければ幸いです。
今後は有料化も予定しておりますので
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お読みい頂ければ幸いです。
よろしくお願いいたします。
ここから、初めのストーリーを読む
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よろしくお願いいたします。
ありがとうございました🙇
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