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本の紹介

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#おすすめ本

歌集『金魚を逃がす』(鈴木美紀子氏)を読む。

歌集『金魚を逃がす』(鈴木美紀子氏)を読む。

鈴木美紀子氏の第二歌集
『金魚を逃がす』を拝読しました。

感想と鑑賞

-火と水の相聞-

歌集の前半の相聞群は、
作者(作中主体)が火、
相聞の相手は水としての喩が多いように感じました。

******************

雨量の短歌は、前述の法則からは外れます。
自分の気持ちの高まりや積もり具合が雨量で喩えられているように読みました。
「相聞の相手が水で喩えられる」という読みを当てはめ

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歌集『パルティータの宙』(福田淑子氏)を読む。

歌集『パルティータの宙』(福田淑子氏)を読む。

歌集『パルティータの宙』(福田淑子氏)を読んだ。

歌集について

福田淑子氏の第二歌集である。

宙と書いてそらと読ませる。
この漢字の読み方は歌集の内容に大いに関係がある。

例を挙げると、歌集の帯にある一首。

※「宙」に「そら」とルビあり。

宇宙の宙でそらである。

その他にも、多様なテーマの短歌が収録されている。
それぞれ別々のテーマに見えるが、根底で「自分が生きること、誰かが生きたこ

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『風のアンダースタディ』(鈴木美紀子氏)を読む。

『風のアンダースタディ』(鈴木美紀子氏)を読む。

『風のアンダースタディ』(鈴木美紀子氏)を読んだ。

本について

書肆侃侃房による
新鋭短歌シリーズ34である。

「アンダースタディ」は英語で代役の意。

※語義が広いため、詳細をご覧になりたい方はwikipediaのリンクをご覧ください。

五首選

服を着ると、内側は暗くなる。

しかしこの短歌では、「白いワンピース」なので、白い光で体を包むイメージだろうか。

「読みかけ」という途中さが

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『レダの靴を履いて 塚本邦雄の歌と歩く』を読む。

『レダの靴を履いて 塚本邦雄の歌と歩く』を読む。

『レダの靴を履いて 塚本邦雄の歌と歩く』(尾崎まゆみ氏)を読んだ。

この本との出会い

文フリの打ち上げの席で
「塚本邦雄の短歌についての良い解説本が最近刊行された」
との噂を聞きました。
その本がこちらでした。

塚本邦雄の短歌については一度網羅的に読んで、「読んだことはある」状態になりたかった時でしたから
「渡りに船」の一冊でした。

内容と構成

文頭に塚本邦雄の短歌が一首掲載されており、

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句集『雲ぷかり』(工藤惠氏)を読む。

句集『雲ぷかり』(工藤惠氏)を読む。

句集『雲ぷかり』(工藤惠氏)を読みました。

この句集についての雑談。

タイトルに惹かれて購入して読んだところ、見覚えがある俳句がちらほらあり
「どこで見たのかな」
と考えていました。

すると手元にある
『天の川銀河発電所』
という現代俳句のアンソロジーの本で紹介されていて
「ここか!」
と納得しました。

五句選

チョコでもココアでもなく、高級感のある「ショコラ」です。

消しゴムを大切に

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歌集『Midnight Sun』(佐藤涼子氏)を読む。

歌集『Midnight Sun』(佐藤涼子氏)を読む。

歌集『Midnight Sun』(佐藤涼子氏)を拝読しました。

概要

生活、震災詠、相聞などのテーマで、
工夫のある短歌が多々収録されている印象です。

五首選

※紹介する短歌の選もかなり悩みました。

バスの動きと雨雲の動きが連動しているようで、面白いと思います。

「嘘」がひとつまみのスパイスのように効いている一首です。

景が良くて爽やかなだけではなく、結句に含みや内容の奥行きを感じま

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宮沢賢治の手紙『あたまの底のさびしい歌』を読む。

宮沢賢治の手紙『あたまの底のさびしい歌』を読む。



読んだ本

『あたまの底のさびしい歌』
という本を読んだ。

宮沢賢治が友人や親族に送った手紙のうち、11通を掲載した本だ。

本としての見どころ

素朴な線画の挿絵が要所要所にあり、
手紙の内容に似合っている。

内容の見どころ

選ばれし11通の手紙の内容も
それぞれ味わい深い。

ネタバレになるので大掴みで紹介すると

・宮沢賢治の信仰と世界観。
・菜食主義と、魚を食べた日。
・宮沢賢治

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スヌーピ×詩!?ー詩集『永遠の思いやり』を読むー

スヌーピ×詩!?ー詩集『永遠の思いやり』を読むー

スヌーピーが好きなので、この本も見逃せなかった!

本全体

スヌーピーのお話を英訳し、
そこに作者のエッセンスがプラスされた稀有な詩集。
作者の力量を感じる。

詩の下部に、英語の原文も掲載されていて行き届いている。

今までの詩集・詩は作者の私情や概念が中心で、
個人的でとっつきにくい印象だった。

しかしこの詩集は

という掛け算が成功している。

読みやすく、内容に含蓄がある。

構成

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飯田マユミ句集『沈黙の函』ー光景と共感ー

飯田マユミ句集『沈黙の函』ー光景と共感ー

この句集は
・光景が面白い句
・読むと感覚が蘇る句
が多いと感じた。

そんな
飯田マユミ氏の句集『沈黙の函』
から五句紹介。

リフレインが効いていて、躍動感がある。

納得と共感をした。

こういった作者独特の発見の句は読者としては楽しい。

俳句という短い詩形で、広い空間が表現されている。

やわらかい柿をうっかり踏んだ時の、ぐにゃっとした不快感を巧みな比喩で表現している。

木と人の寿命の

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