理論武装という言葉。
何かしらの難題に向かう際に、自分の考えを正しいと証明できるような理論をあらかじめ準備して挑むことです。

りろん‐ぶそう〔‐ブサウ〕【理論武装】
自分の立場や主張を他人の批判から守るために、さまざまな理論を準備しておくこと。反論されないよう、理論で対抗すること。

小学館:デジタル大辞泉

面接などで、自己PRや志望理由、入社後の展望などを語る際に、どうしても自分の主張を“正しく”伝えたいと思うあまり、どこかで“理論武装”をしてしまう―――そんなケースはありませんか?


でも・・・すでに罠にハマっています。

唯一無二の“正しい理論”を、“武装して”“戦いに挑む”という、荒々しい姿が見えてきます。

まるで面接官が敵であるかのように・・・


そこで、いろいろな視点から理論武装をする気持ちを紐解いてみましょう。




1.“正しい”という考え方に縛られてる


何が正しくて何が間違っているのでしょう?
この裏には、「正解があってそれを言うことがよいことだ」という考えがあるのでしょう。

学校の勉強では、ほとんどが正誤問題でしたから、正しい答えを求めるクセがついていることもよくわかります。

でも、自己PRの正解とはなんでしょうか?
自分のことをどうやって伝えたら正しいと言えるのでしょうか?

どうやら正しいという考え方に縛られている―――そんな自分が見えてきませんか?


むしろ自分は何を伝えたいのか、どうやって伝えるかが大切であり、さらには相手に何が伝わったのかが問われるのではないでしょうか?


「正しさよりも、効果的な伝え方」を考えてみることをお勧めします。

そのためには、「実体験を交えて話す」ことがよいでしょう。

例1)わたしは明るい性格で、周囲を巻き込んでいつも明るく楽しく元気にすることができます。御社で働く際も、お客様だけでなく職場のみなさんも笑顔にして、元気を与える存在になりたいと思っています。

例2)「わたしといるとなぜか笑顔になるんだよね」と、小中高どの友人からも言われます。わたしは明るくて元気を与える存在なのだと、友人たちから教えてもらいました。今は明るい性格ですと自信を持って言えます。

いかがですか?
どちらの例文も明るさは伝わると思います。
ですが、後者の方が「いつ、誰と、何を、どのように」といった具体性があるので、より伝わるような感じがしませんか?

実体験を交えて話すと、相手はその場面を思い浮かべようとしてくれます。そうやって同じ映像を描けたとき、より言葉は強く印象に残ります。

効果的な伝え方とは、相手がイメージしやすい表現をすることです。

5W1Hの基本に立ち返って、できるだけ想像してもらえるように伝える工夫を目指すのはいかがでしょうか。



2.戦う姿勢で臨んでしまう


面接は独演会ではありません。発表の場でもスピーチコンテストでもありません。まして面接官と戦う場でもなければ、勝ち負けをつけるための場でもありません。

では面接とは何なのか?
それは、「自分と会社との合意形成の場」です。

企業側にとっては、
・ミスマッチを防ぐ
・応募者の考えや思いを聞く
・直接会って雰囲気や人柄を知る
・コミュニケーション能力をはかる
などの目的があります。

応募者にとっては、
・自分の思いや考えを伝える
・会社の意向や要望を聞く
・会社の雰囲気や働く人の人柄を知る
・まだ知らないことや理解していないことを確認する
などの目的があります。

双方ともに十分なやりとりをして、納得したうえで入社するためには、やはり面接は欠かせません。つまり、面接とは合意形成の場なんですね。

武力で相手を倒したとして、それでお互いに納得できるでしょうか?
負けた側は悔しさが残り、場合によっては怒りや恨みを生みかねません。
勝った側も自分の主張を押し通しただけで、今後自分の言うことを相手が素直に聞いてくれる保証はどこにもありません。

勝敗を競っても、そこに納得感は生まれにくいものです。

だったらいっそのこと、納得できるまでとことん話し合ってみるのはどうでしょうか?

何が望みで、どうしてほしいのか、それに対して自分は何を提供できて、何ができないのか、ということをとことん話し合う“合意形成”という方法が適しています。

つまり面接は合意形成の場なんです。

そこに理論を武装して戦いを挑んでしまっては・・・まとまるものもまとまりませんよね?


この話し合いでは、互いに譲れること/譲れないことを本音で語ることが大切です。
本当に自分が納得できないことであれば、その代わりにどうしてほしいのかを具体的に伝えて交渉します。

それで決裂してしまうこともあります。
でも、気持ちをごまかして納得したふりをして働いても、きっとやりがいを感じて本気で取り組みたいと思える仕事にはならないのでは?

もちろんキレイごとだけではなく、経済的な状況や周囲の環境で自分を曲げてでもよしとしなければならないこともあるでしょう。
ただ、腑に落ちないまま形だけ折れるようなことをしても、それでは本当に納得したことにはなりません。

納得していないと、結果にコミットすることができません。方針に対して反感を抱いて、よい結果を出そうと本気で取り組めなくなるからです。


ではどうやって合意形成を図ればよいのでしょう?

それは、「素直に尋ねる」ことです。

例1)御社では〇〇を大切にしていると先ほど伺いました。
(そんな話は初耳だけど同意しておくか・・・)
わたしもその考えに大変共感し、ぜひ御社で△△という夢を実現したいと思います。
(こう言っておけば印象がいいかな?)

例2)御社は〇〇を大切にしていると先ほど伺いました。
(この話は初耳だぞ?ホームページも資料にもなかったよな?)
勉強不足で初めて耳にし、正直驚いております。先ほどわたしが申し上げた△△では御社の思いに十分にお応えできるものではないと感じます。例えば御社はわたしにどのような夢を抱いて活躍して欲しいとお考えなのか、改めてお聞かせいただけないでしょうか?

後者はまさに「交渉」です。自分が知らないことを認め、素直に謝って、思い切って尋ねてしまうという方法です。

面接でこのように発言することは勇気が要ります。なかなかすぐにできることではないでしょう。

でも「素直さ」があれば、企業もいじわるをしようとはしません。むしろ、伝えていなかったことを申し訳なく思ってくれることでしょう。
だから面接の場で互いに納得いくまで話し合うことができます。

本音で話すということは、どんな言葉遣いや言い方でもよいということではありません。最大限に敬意を払ったうえで、知らないことは知らないと素直に伝え、噓偽りなく腹を割って話すということです。

案外、素直に聞いてみたらさらっと答えてくれますよ。



3.武装して隠そうする自分がいる


そもそも正しい理論を武装するのはなぜか?
勝ち負けにこだわるのはなぜか?

それは、「負け=弱い自分を認めざるを得ない」と捉えているからではないでしょうか。

弱い自分を直視せず、外から借りてきた強さを身にまとって戦いに挑んでいる・・・そんな印象を受けます。
まるで、レベル上げを十分にしないまま、お金にものを言わせて強い武器を装備して戦っているかのようです。
そんな中で強敵が現れ、そもそものスペックが低すぎて武器の強さだけは太刀打ちができなかった、という感じですね。


弱い自分というのは誰しもが見たくないものです。

まして認めて受け入れることは、なかなか大変なことです。

でも、それって果たして自分に素直になれているのでしょうか?


弱さというとツライ感じがしますが、「あなたの課題はなんですか?」と聞かれると、思わず素直に答えそうですよね。

その課題を放置したまま、別の強みだけで面接に臨んでも、どこかで「いつか自分の弱点を突かれるのではないか」という恐怖を抱き続けることになります。

それが緊張を生み、指摘されると敵対心を抱いて強い態度に出てしまうということがあります。それでは合意形成も互いの納得も得られません。


だから面接の前には十分に自分との対話の時間を取ってあげてください。

理論武装をするよりも、いまの自分を見つめ直すことの方が何倍も役立ちます。

そして、何に対してなぜ心が動くのか、これまでどうやって壁を乗り越えてどんな成長を成し遂げてきたのか、といった内省を行うことをお勧めします。

わたしもこうやって内省を繰り返していますよ。


内省のポイントは、「人と比較して良し悪しをつけない」ことです。

むしろ人と違うことは自分の良さにつながるヒントになりますよ。



さいごに


いかがでしたか?

最近、若い世代を中心に「論破」することが流行っているようです。相手が反論できなくなるまで徹底して言い負かす、ということがカッコいいとされているようなのですが・・・果たしてそれは得策なのでしょうか?

確かに勝ち負けの概念でいえば、相手が何も言い返せないほど正しい理論をぶつけて言い負かせば、それは自分の勝利となります。

でも面接試験にまで理論武装して、論破する姿勢で臨むのはいかがなものでしょう?


わたしは面接試験を『入社後、お世話になる「人事、上司、社長」たちと直接話せるチャンス』と捉えています。

そのお世話になる方を言い負かしたところで何の得があるのかと。

それよりも、自分の考えを素直に伝えて、相手にわかってもらうことの方が何倍も役立つと思います。


強い態度で戦いを挑むより、自分の思いが伝わることで面接官の心が動く方が、後々良い結果につながるのではないでしょうか。

それはまるで北風と太陽のように・・・


就活生のみなさんもそろそろ企業の方々と直接会ってお話しする機会が増えてくる時期ですね。

自分の思いを素直に伝えられるようじっくりと自分をふりかえって、相手の心を動かすような伝達力を磨きませんか?

がんばれ!就活生!




明日も佳き日でありますように





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