悪の脳科学
今回は中野信子先生の新書「悪の脳科学」という新書を見つけたので、この本と人材育成やマネジメントについて考察してみます。
どうぞよろしくお願いします。
もくじ
1.ドラえもんの生みの親
2.喪黒福造とゲインロス効果
3.背外側前頭前野
1.ドラえもんの生みの親
ドラえもんというマンガ、ご存知でしょうか?私は子供の頃、ドラえもんには大分お世話になりました。コロコロコミックという雑誌やマンガの単行本、つい集めてしまいました。
ドラえもんの生みの親。藤子不二雄氏は、ふたりの漫画家のコンビ名としてペンネームであったことは有名です。
このうち、我孫子素雄氏が藤子不二雄A(Aは丸で囲う)を名乗り、1989年にアニメ化された「笑ウせえるすまん」がヒットしました。
このマンガを知っているのは、40代位なのでしょうか?先日たまたま見ていたamemaTVで「笑ウせえるすまん」がやっており、続けて何作か食い入るように観てしまいました。
今回取り上げるテーマは、藤子不二雄A氏が手掛けた「笑ウせえるすまん」です。
これを、あの中野信子先生が脳科学的に分析している本書、「悪の脳科学」は実に面白いタッチに仕上がっています。
2.喪黒福造とゲインロス効果
「笑ウせえるすまん」の主人公である喪黒福造は、非常に滑稽なキャラクターです。正義の味方なのか、悪の手下なのか、未だによくわからない部分もあります。
しかしながら、人間の弱い部分に対してズバッと切れ込み、
道徳的な内容を教授してもらっているような、
そんな感覚を覚えるアニメでした。
この「笑ウせえるすまん」を中野信子先生がどのような観点から紐解いているかというと、
脳科学や心理学の視点で、なぜに30年も前から藤子不二雄A先生がマンガタッチで世の中に書き下ろしたか
という点です。
じっくり読んでいくと、なるほど・・・と思う部分が沢山あり、当時面白がってアニメを観ていた自分にとっては非常に納得させられるものがありました。
さて、前置きが随分と長くなりましたが、この「笑ウせえるすまん」の主人公である喪黒福造を人材育成の視点で考えてみることにします。
中野信子先生が文中に表現していることですが、「ゲインロス効果」というものがあります。
簡単に解説すると、人の心理状況において、プラスとマイナスの変化量が大きいほど、人の心に影響を与える度合いが大きくなる効果のことを指します。
つまり、相手に対して、最初にマイナスの印象を与え、その後にプラスの印象を与えた方が、より良い好印象を抱かせることができる、ということです。ゲインは利益(プラスの印象)を指し、ロスは損失(マイナスの印象)を示します( https://successbeginstoday.org/topics/41)。
つまり喪黒福造は、ご存知の方ならあえて言うまでもないですが、容姿は非常に怪しい存在で、初めて会う人ではとても信用できる存在ではないかもしれません。
これは極端な例かもしれませんが、皆さんの周りでも役付きの方々・・・
外見がビシッとカッコよく綺麗な管理職やリーダーの皆さんより、多少外見にユーモアがあって、そのギャップで仕事がめっちゃできたりすると、相手に良い印象が与えられるという解釈に置き換えることができるかもしれません。
いつも寝癖があって見た目にはどうもいけてない医師が、完璧なオペをしたり、的確な指示をしてくださると、「すご〜‼︎」ってなりますよね。かなりの高評価になります。
私が思うに、管理職や役付になればなるほど、多少ぼんやりしてる風の方が、バリヤを張らずに周囲が集まりやすかったり、リーダー業務の評価も普通にしているだけで「出来る上司‼︎」って思ってもらえるのではないかと考えられます。
しかしこの一方で、興味深い文献がありました。
2017年に北折らが明らかにした以下のような論文があります。
北折充隆ら 裁判員裁判におけるゲインーロス効果に関する研究 金城学院大学論集 人文科学編 第14巻第 1 号2017年 9 月
この論文は、
「裁判は人定質問の後に検察側の冒頭陳述が行われ、その後罪状認否が行われる。その後は基本的に、検察と弁護側の尋問が行われ、結審後に検察側の論告求刑、最後に弁護側の最終弁論が行われ判決が下される」
というところに着目しています。
つまり、裁判自体が初めに否定的な情報提示を行い、その後肯定的な情報が提示される流れであり、ゲインロス効果に基づけば、この提示順では被告に対する評価が最も高くなる(刑が軽くなる)。
と論じています。
実際の研究では、あらかじめ用意された危険運転致死傷罪を例にしたシナリオを対象者に読ませ、冒頭陳述を提示後、検察側答弁→弁護側答弁の通常の流れや、逆の流れ、他の情報提示の仕方で刑期に違いがあるかなどを調べた研究になっています。
結果・・・
予想に反してゲインロス効果に直接影響するような有意差は見られなかったようです。
イメージ的には喪黒福造のように、一般の社会生活では十分にゲインロス効果が作用しているように感じますが、よく精査していくとそうではない結果も生まれるようです。
我々の医療領域、
人材育成に関してはどうなんでしょうか?
面白い研究ができそうですよね。
みなさん、いかが思われますか?
3.背外側前頭前野
私は喪黒福造は悪いキャラクターだとは思っていません。
むしろ、人間の本能に根付く悪い部分に光を当ててくれている貴重な存在だと思っています。
後輩指導や学生指導を語る前に、管理者自身はもっと自分自身の事について理解する必要があると思っています。
経験年数が長く現場をよく熟知しているからとか、若くして役職についているからとか、そういう事のみで偉そうにしたり勘違いする人は、いろんな場所で散見されます。面白いことにどこにいってもそういう人はいるものです。職種関係なく存在します。自分自身も例外ではありませんから注意が必要です。
「笑ウせえるすまん」でも、つまりは自分自身のことをしっかりと認識していない、心の弱い人間が喪黒福造のターゲットにされ、いろんな人生の教訓を私たちに与えてくれていると感じます。
改めて自分自身をよく知るということ。大切と感じました。自分自身を知る。つまりメタ認知です。
メタ認知は背外側前頭前野という部位が担っていると言われています。前頭前野の背外側。前頭前野は人が人であるための最高中枢であると言われています。
自分自身に気づくには前頭前野の外側、相手のことを思いやるには内側が活性化する必要があるようです。
悪の脳科学という本を通じ、善の脳機能を働かせ、心理学的な側面からも人材育成という課題にチャレンジしていく必要がありそうです。
あなたは喪黒福造ですか?
それとも喪黒福造にドーンってされる方ですか?
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