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#ショートショートnote杯

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ショートショートnote杯に参加する小説を乗せています。
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記事一覧

振り返ればクリスマス|ショートショートnote杯表彰式&ゲーム大会中に作った作品+こぼれ話

振り返ればクリスマス|ショートショートnote杯表彰式&ゲーム大会中に作った作品+こぼれ話

はじめに
 こんにちは、吉村うにうにです。12月21日にショートショートnote杯の表彰式とゲーム大会(一試合)が開かれました。その時に作った作品を多少改稿して(七枚の例のカードを提示され、一分でお題を考え、五分で作成したので、私が書くと誤字脱字だらけでしたので)お出しします。その後で、表彰式の雰囲気と私がそこで話した内容を多少かいつまんで披露します。ただ、クローズの会で録音録画禁止でしたので、そ

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ショートショートnote杯 受賞の喜びと感謝などなど

ショートショートnote杯 受賞の喜びと感謝などなど

はじめにこんにちは、吉村うにうにです。ショートショートnote杯に参加しようと、noteに登録いたしました。結果「爪毛賞」と「未来へいこーよ賞」の二冠という望外の結果を頂きました。爪毛賞だけでも十分欣喜雀躍の想いでしたが、さらに「未来へいこーよ」さんからも評価して頂けるとは……。
本当に、体が喜びで浮き上がりそうです(体重60キロ)。これから受賞作の紹介や、創作へかける思いなどを自分語りさせて頂き

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#ショートショートnote杯の解説

#ショートショートnote杯の解説

はじめに吉村うにうにです。

ショートショートnote杯が終わりました。34作品という私にしてはかなりの量を提出させて頂きました。

初めは、自分の作品の振り返りや評価・感想を述べようかと思ったのですが、やめます。自分の作品は生きている自分の子どもだという意識があるので、その子達に優劣をつけることに気が進まなかったためです。もちろん、賞という性質上、順位を他の人がつけることは否定しないし、私も賞と

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ショートショートnote杯の課題①~⑪を一通り書いてみて

ショートショートnote杯の課題①~⑪を一通り書いてみて

​吉村うにうにです。いつもは長編小説やショートショート小説を書いております。ショートショートnote杯をきっかけにnoteに登録致しました。ショートショートnote杯は以下の課題から選ぶコンテストということで、自分にできるのかが不安でしたが、チャレンジしてみました。

1.『しゃべるピアノ』
2.『1億円の低カロリー』
3.『株式会社リストラ』
4.『アナログバイリンガル』
5.『違法の冷蔵庫』

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燃える雨雲|ショートショート

燃える雨雲|ショートショート

「クーちゃん、急なお仕事でゴメンね」
 僕は助手席で眠そうに浮いている雨雲に声をかけた。田舎の集落で断水したのだ。
「市役所の委託で参りました」
 そう言いながら民家を一軒ずつ回り、水を供給するのが今日のタスクだ。
「給水車は夜に来ますから」
 玄関先で婦人の差し出したバケツに雨を降らす。
 次のお宅では、お婆さんが足を引きずっていたので、浴槽に案内してもらった。
 最後のお屋敷では庭で待つ裸の男

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だんだん高くなるカフェ|#ショートショートnote杯

だんだん高くなるカフェ|#ショートショートnote杯

 戦争が終わり、破壊された街に人々が戻って来た。ジョセフは弾痕だらけの壁と崩れかけたコンクリートを利用し、木の樽を椅子代わりにカフェを始めた。

 盛況だった。コーヒー豆がようやく出回り、人々はそれを渇望していたのだ。

 大きなトランクと小さな包みを持った陰鬱な女性が、樽に座った。
「コーヒーを一杯」
「300億ペンゲー」
 女は金をトランクごと主人に渡す。金属のカップを手渡されると、隅にある瓦

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違法のカフェ|#ショートショートnote杯

違法のカフェ|#ショートショートnote杯

 警察のイメージアップ作戦として、交番にカフェが併設されることになった。二十四時間営業なので、家出少年少女の相談所や、泥酔者を収監しないで休憩させる施設として期待された。調理や給仕のための警官確保の点から反対論も出たが、最寄りの警察署からの応援を仰ぐという事で、警察庁の許可を得た。

 この日も組織犯罪課の女性刑事が、駅前の交番カフェに勤務した。なぜかミニスカートの警官姿にさせられ、胡桃と名乗るよ

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伝説のATM|#ショートショートnote杯

伝説のATM|#ショートショートnote杯

 バシャ!
 強烈な臭いの液体をぶちまけた男が震えながら怒鳴る。
「あのATMを使わせろ! ほら、いくらでも金を出すやつだ」
 昼下がりの銀行。行員達は慣れた様子で隅に固まり、目には「またか」といった辟易の色。
 液体を浴びた警備員の家岩(いえいわ)は、ガソリンの臭いだと気づきながらも、口元には笑みを浮かべた。
「ATMはこちらですが、いくらでも、ではなく、必要なだけ出金されます」
 差し出したカ

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恥ずかしがり屋のメガネ|#ショートショートnote杯

恥ずかしがり屋のメガネ|#ショートショートnote杯

 今朝の朝礼当番に備えて、昨日届いた『顔変換眼鏡』をつけた。これがあれば人前で緊張せずにすむはず。
 電車で試してみることに。眼鏡を『強面モード』にすると、車内の人の顔が皆、その筋の人に見えて震えた。昨日は美女に迂闊に密着してしまい、痴漢疑いをかけられて遅刻したのだ。今日は怖い人に触れないよう身を小さくした。
 
 朝礼が始まった。眼鏡のスイッチを切り替えると、大量のジャガイモが眼前に広がった。お

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君に贈るインドの|#ショートショートnote杯

君に贈るインドの|#ショートショートnote杯

 哺乳類がユーラシア大陸の主役になった頃、森で一頭のミアキスという猫のような動物が、頭の白い部分以外体毛がなく震えている生き物を見つけ、それを憐れんで自らのフサフサした毛で温めていた。
「わしはこの大陸を作った神じゃ。お礼に何か欲しいものはないか?」
 元気を取り戻した生き物はそう言ったが、ミアキスは黙っていた。
「では縄張りをやろう」
 神が手元に落ちていた枝を振ると、地響きが起こった。ミアキス

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金持ち草|#ショートショートnote杯

金持ち草|#ショートショートnote杯

 咲菜は花屋で買ってきた黄金色の草を、友人の彩芽に見せた。
「これが植えると縁起のいい草ね」
 彩芽はそっと指を触れた。
「食べるともっと縁起がいいらしいけど、苦くて上に固いんだって。これを食べる位倹約した人が店を構えられるって」
 物知り顔の咲菜を見て、友人が感心した。
「茹でたらどうかな? 食費の節約になるし」            
 咲菜は草を庭の隅に植え替えてみると、瞬く間に増え、庭の一

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夢の大掃除|#ショートショートnote杯

夢の大掃除|#ショートショートnote杯

 陽葵はベッドに横になり、夢の本を開いた。シルクハットの紳士が表紙に描かれた本。これを寝る前に読むと、混沌とした夢が整理されて、シンプルで心地良い眠りが得られるという。

 目を閉じてすぐに恐ろしい怪物が出現した。シルクハットの男が剣を持ち、
「彼女は私が守る」
 と立ち向かい、たちまち追い払った。
 次に現れたのは彼女の職場であるアパレルショップ。
「職場のストレスを夢に持ち込まないで」
 紳士

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呪いのATM|#ショートショートnote杯

呪いのATM|#ショートショートnote杯

「次はこちら。一日二百万までなら永遠に出金できるATMです。落札の支払いは分割可です」
 秘密のオークション会場で、支配人は声を上げた。次々と挙がる手。
「二億!」「三億!」と、値が上がるにつれ、挙がる手は減っていく。
 資産家の老人、南吉は強気だった。百億と叫ぶと、次々と他の希望者は撤退し、ざわめきだけが聞こえてきた。最後のライバルも老人の「一千億!」の掛け声で撤退し、ハンマーが鳴った。
「そん

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全力で推したい鬼|#ショートショートnote杯

全力で推したい鬼|#ショートショートnote杯

 お腹を水で膨らませた子供が、賽の河原で小石を積んでいる。
「何をしてる?」
 赤鬼のドスの利いた声。
「塔を作っているの。お父さんとお母さんの供養にするの」
 子供は背の高さ位になった小石の山に更に石を載せようとした。
 ガシャ!
 鬼の金棒が触れ、山は崩れた。
「何すんの。来年にはできたのに」
 鬼は笑う。子供は悲しげに、また石を拾う。

 何か月か経ち石が再び背の高さにまで積み上がった。鬼は

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