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違法のカフェ|#ショートショートnote杯

 警察のイメージアップ作戦として、交番にカフェが併設されることになった。二十四時間営業なので、家出少年少女の相談所や、泥酔者を収監しないで休憩させる施設として期待された。調理や給仕のための警官確保の点から反対論も出たが、最寄りの警察署からの応援を仰ぐという事で、警察庁の許可を得た。

 この日も組織犯罪課の女性刑事が、駅前の交番カフェに勤務した。なぜかミニスカートの警官姿にさせられ、胡桃と名乗るように指示された。
 しばらくすると、目つきの悪い男が入ってきた。
「あたしも頂いていいかしら」
 胡桃は、男の隣に座り、太腿を見せるように足を組み、テキーラの乾杯競争を繰り広げる。男は饒舌になり、
「ここだけの話だけどよ。あの十億円強盗犯は……」
 刑事の勘は当たった。胡桃の通報で、数人の警官が慌ただしく入って来た。ニヤリと笑みを浮かべる彼女の手に手錠がかけられた。

 警官の一人が告げた。
「このカフェは風営法の届け出がされてません」

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