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呪いのATM|#ショートショートnote杯

「次はこちら。一日二百万までなら永遠に出金できるATMです。落札の支払いは分割可です」
 秘密のオークション会場で、支配人は声を上げた。次々と挙がる手。
「二億!」「三億!」と、値が上がるにつれ、挙がる手は減っていく。
 資産家の老人、南吉は強気だった。百億と叫ぶと、次々と他の希望者は撤退し、ざわめきだけが聞こえてきた。最後のライバルも老人の「一千億!」の掛け声で撤退し、ハンマーが鳴った。
「そんな額、一生かかっても回収できないぞ」
 嘲りの声。だが、南吉は意に介さない。年下の新妻は妊娠中。生まれる子の孫の代には落札価格を回収できて、家は栄える。しかもこの機械なら相続税対策にもなる。
「今の事しか考えられん輩は阿呆じゃ」
 ほくそ笑み、落札したATMを台車へ乗せ、自宅へと向かった。
 道中、ふと夜空を見上げた。
「落札額、少し高過ぎたかのう。オークションはいつもそうじゃ」

 翌朝、南吉が目を覚ますと、妻とATMは姿を消していた。


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