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恥ずかしがり屋のメガネ|#ショートショートnote杯

 今朝の朝礼当番に備えて、昨日届いた『顔変換眼鏡』をつけた。これがあれば人前で緊張せずにすむはず。
 電車で試してみることに。眼鏡を『強面モード』にすると、車内の人の顔が皆、その筋の人に見えて震えた。昨日は美女に迂闊に密着してしまい、痴漢疑いをかけられて遅刻したのだ。今日は怖い人に触れないよう身を小さくした。
 
 朝礼が始まった。眼鏡のスイッチを切り替えると、大量のジャガイモが眼前に広がった。おかげで練習のように堂々とスピーチができた。芋は時折動くので可笑しくなった。

 部署に戻ると、朝礼を欠席した鬼瓦面の課長。昨日の遅刻では執拗に僕を責めてきた。目を合わせぬようパソコンを開いて作業開始。単純な業務に眠くなり、少し舟を漕いで、パソコンの角に眼鏡が当たって目を覚ます。見られていないかと顔を上げると、そこには可愛い猫が。思わず頭や顎を撫でた。
「おい、やめたまえよ」と、照れた声。
 眼鏡を外すと、鬼瓦が顔を赤らめていた。

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