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君に贈るインドの|#ショートショートnote杯

 哺乳類がユーラシア大陸の主役になった頃、森で一頭のミアキスという猫のような動物が、頭の白い部分以外体毛がなく震えている生き物を見つけ、それを憐れんで自らのフサフサした毛で温めていた。
「わしはこの大陸を作った神じゃ。お礼に何か欲しいものはないか?」
 元気を取り戻した生き物はそう言ったが、ミアキスは黙っていた。
「では縄張りをやろう」
 神が手元に落ちていた枝を振ると、地響きが起こった。ミアキスが高い木に登って海の方を見ると、緑の巨大な陸塊が猛烈な速度で接近してくるではないか!
 やがて、轟音とともに、陸塊が森にぶつかり、地面はその圧力を受けてみるみる盛り上がった。地面は雲を突き抜け、下の世界が遥か遠くなった。
「ここをヒマラヤと名づけよう。お前とお前の子孫のものだ」
 そう言うと、神はその地面から更に高い所へ昇って、見えなくなった。

 四千万年後。今日も山で白地に黒い斑点の大型猫が雪にまみれて遊ぶ――ユキヒョウである。
 

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