夢の大掃除|#ショートショートnote杯
陽葵はベッドに横になり、夢の本を開いた。シルクハットの紳士が表紙に描かれた本。これを寝る前に読むと、混沌とした夢が整理されて、シンプルで心地良い眠りが得られるという。
目を閉じてすぐに恐ろしい怪物が出現した。シルクハットの男が剣を持ち、
「彼女は私が守る」
と立ち向かい、たちまち追い払った。
次に現れたのは彼女の職場であるアパレルショップ。
「職場のストレスを夢に持ち込まないで」
紳士は、店内に展示された衣裳全てを段ボール箱に入れて売り払い、店を空にした。
明け方に、花束を持った王子様が彼女の前にひざまずいた。夢のお掃除人は
「陽葵さんが現実とのギャップに苦しみますので」
と、丁重にお断りし、お帰り頂くこととなった。
翌朝、陽葵は爽快な気分で目を覚ました。日課として、ペンを手に夢日記帳を開いた。
何も思い出せなかった。
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