The Beatles 全曲解説 Vol.194 〜Get Back
『Let It Be』12曲目(B面5曲目)。
ポールの作品で、リードボーカルもポールが務めます。
原点へ帰ろう…4人の決意が集約された、2021年再/最注目ナンバー “Get Back”
冒頭のスタジオ内での会話と曲をスタンバイする楽器の音が、演奏開始へのこれ以上無いワクワク感を演出してくれます。
筆者は何故かこの部分に、何かとんでもないものが始まるような熱気を感じて気分が高揚します。
アルバムの最後を飾るこの曲は、「原点回帰」をコンセプトに掲げたゲット・バック・セッションの、まさにテーマ曲とも言える超重要曲です。
セッション序盤から演奏されていた曲で、シンプルなブルース調でありながら、独特の引き締まった音像と緊張感を持った唯一無二の渋さが特徴的なロックナンバーに仕上がっています。
歌詞はポールお得意の架空の第三者を引き合いに出したパターンで、「元いた場所に帰れよ」と呼びかけるものですが、初期は当時問題になっていたパキスタン移民の排斥を批判するシリアスな内容でした。
わかりやすいフレーズであるだけに深読み解釈も数多く、ヨーコ・オノに首ったけのジョンや、相変わらず我が物顔でスタジオに居座るヨーコ自身に向けた歌詞ではないかとも囁かれていました。
この曲も “Across The Universe” や “Let It Be” と同様に、公式からは3つのバージョン(ライブ演奏含めると4つ)が発表されています。
まずは冒頭のアルバムバージョン。
イントロ前にはスタジオ内での会話の様子、演奏終了後にはルーフトップ・コンサートでのジョンのセリフを聞くことができます。
I'd like to say thank you on behalf of the group and ourselves, I hope we passed the audition.
グループと僕らを代表してお礼を申し上げます。
オーディションの通過を祈念いたします。
最後に発売されたアルバムの、最後の曲の終わりしなにこの決めゼリフ。
ジョンのユーモアセンスとフィル・スペクターの演出力が光ります。
ルーフトップ・コンサートでの演奏は『Anthology』シリーズに収録されています。
途中ハプニングでギターの音が切れたり、アウトロでポールが「屋上で遊んでたら逮捕されるぜ!」という主旨のアドリブを入れたりと、ルーフトップの熱気とテンションの高さをそのまま楽しめます。
次に、ゲット・バック・セッションのすぐ後、1969年4月に発売されたシングル・バージョン。
『Let It Be』収録曲の中では最も早く世に出たものです。
こちらは別テイクで演奏されたアウトロが加えられたことで、演奏時間がやや長くなっているバージョンです。
エレクトリックピアノを弾いたビリー・プレストンが、初めて公式にクレジットされた曲にもなりました。
最後に、2003年に発表されたネイキッド・バージョン。
アルバムバージョンから最初と最後の会話がカットされたシンプルなバージョン。
エコーがカットされて音が大変クリアになっているのが特徴で、3バージョンの中で最も目の覚めるようなタイトさを堪能できます。
2021年11月27日に解禁予定の最新映画には、この曲が堂々とタイトルに冠されました。
わずか2語に集約されたビートルズ4人の想いが、どのような形で映像に表れるのか。
この曲を聴きながら、それが明らかになる瞬間をじっくり待ちたいものです。
補足情報: アルバム『LOVE』バージョンについて
アルバム『LOVE』には、冒頭に “Get Back” のショートバージョンが収録されています。
短いものでありながら、 “A Hard Days Night” のイントロの和音や、 “A Day In The Life” での鬼気迫るオーケストラ、ライブの歓声などが折り込まれた濃密な作り。
ビートルズのキャリア最終盤を象徴する楽曲をアルバムの導入に持ってくるのも、なんとも粋な構成です。
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