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The Beatles 全曲解説 Vol.189 〜Let It Be

『Let It Be』6曲目。
ポールの作品で、リードボーカルもポールが務めます。

迷いを断ち切ったのは亡き母の言葉…あらゆる悲しみから人々を救い続ける不滅のメッセージ “Let It Be”

タイトルナンバーの登場です。
もはや説明不要、「なすがままに」というシンプルで真っ直ぐなメッセージに、辛い心を救われた という方も多いのではないでしょうか。
何を隠そう筆者もその1人です。

曲の制作のきっかけは、ポールが見た夢であったということはあまりにも有名です。
メンバー同士の関係がギクシャクし始めていたことを気に病んでいたポール。
ある日、そんな彼の夢枕に立った1人の女性がいました。

それはポールが14歳の時に、癌でこの世を去った母親のメアリーでした。

メアリーは一言、「あるがままに全てを受け入れるのです」とだけ遺してポールのもとを去ったと言います。
この出来事が、名曲へのインスピレーションとなったのでした。

この曲も “Across The Universe” と同様、現在公式からは3つのバージョンが発表されています。
まずはフィル・スペクターのプロデュースによる冒頭のアルバムバージョン。
ハイハットの残響音やブラスセクションが強調され、間奏の激しく情熱的なギターソロが印象的なアレンジです。

なおこのバージョンのみ、最後のサビのリフレインが3回繰り返される構成となっています。
そういった盛り上げ方も含めて、スペクター色が前面に出たアレンジとなっています。

次に、アルバムに先立って発表されたジョージ・マーティンのプロデュースによるシングルバージョン。

間奏のギターソロには違うテイクが使用され、ブラスセクションはかなり後ろに下がっています。
その代わりにコーラスがグッと前に出ているのが特徴で、長年ビートルズを側で見てきたマーティンらしく、4人(+ビリー・プレストン)のチームワークを重視したミックスとなっています。

最後に、2003年に発表されたネイキッドバージョン。

先の2つとは違ったテイクをもとに制作されたバージョンです。
ブラスセクションを全削除、エコーも極力抑えられ、「生演奏感」がバシバシと伝わってくるようなバンドアレンジとなっています。
間奏のギターソロは、映画『Let It Be』で使用されたのと同じものが使用されています。
まるでスタジオライブを目の前で観ているような感覚をもたらしてくれます。

解散に向かう流れの中で、ポールにしては珍しく自らの心情を赤裸々に吐露した作品となりましたが、「全てをあるがままに受け入れる」というメッセージはこれまでのビートルズにはなかったものでした。

常に新たな挑戦を続けてきたビートルズ旋風の終盤に、ポールが達した一つの境地だったのかもしれません。
きっとこれからも、多くの傷つき迷える心たちを導き続けるに違いありません。

補足情報: 曲の原型は既に『White Album』セッションで完成?

ゲット・バック・セッションの最終日にスタジオでレコーディングされた “Let It Be” ですが、実は『The Beatles (White Album)』のセッションでもリハーサル中にラフな形で演奏されていることが明らかになっており、2018年に音源が解禁されました。

リリースバージョンとはかなり違ってソウルフルな作風ですが、原型は既に固まりつつあったという感じです。
ここでは、有名なバース「♪Mother Mary comes to me」は「♪Brother Malcolm comes to me」と歌われています。

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