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OMOI-KOMI 我流の作法 -読書の覚え-

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私の読書の覚えとして、読後感や引用を書き留めたものです。
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2021年3月の記事一覧

ちょっとした勉強のコツ (外山 滋比古)

ちょっとした勉強のコツ (外山 滋比古)

 教育関係の専門家である外山滋比古氏のエッセイ風の読み物です。

 本書が書かれた当時(2000年)は、いわゆる「ゆとり教育」が流行りのころだったようです。
 まず著者は、「ゆとり教育」の誤った側面、教育の放棄とも言うべき風潮を指弾します。

(p55より引用) このごろは、個性をのばすというのが教育のモットーのようになっている。学校が詰め込みをするのはよろしくない。教え込むのは誤っている、という

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俺の考え (本田 宗一郎)

俺の考え (本田 宗一郎)

俺のバランス感覚 本田宗一郎氏の本は、以前「夢を力に」を読んだことがあります。
 今回読んだ「俺の考え」のオリジナル版は昭和38年に刊行されたとのことですから、本田氏がまだ現役社長のころの著作になります。

 もともとは雑誌に連載されたエッセイがベースなので、本田氏一流の台詞がこ気味よく聞こえてきます。
 たとえば、こういう感じです。

(p18より引用) 設備とかそういうものは金を出せばどんなに

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漢字 (白川 静)

漢字 (白川 静)

 漢字研究の第一人者と言われる白川静氏が記した、文字通り「漢字」に関する著作です。

 ともかく、著者の博識には驚かされます。文字の構造・成り立ち・背景等々、次から次へと途切れることなく豊富な知識が迸り出てくる感じです。

 白川氏によると、古代中国の殷は神話の国であったと言います。神話の国の文字として象形文字が生まれました。卜い(うらない)のための甲骨文字がそれでした。
 それに対し、周は天命に

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白洲次郎の流儀 (白洲 次郎ほか)

白洲次郎の流儀 (白洲 次郎ほか)

 以前、「プリンシプルのない日本」でご紹介した白洲次郎氏に関する本です。

 白洲次郎氏の美学と人柄を、妻である白洲正子さん、娘の牧山桂子さんらのエッセイと豊富な写真で紹介したもので、まさに、氏のカントリー・ジェントルマンたる所以が満載という感じです。
 特に、桂子さんの回想は、娘さんならではのエピソードをもって白洲氏のオフの人となりが描かれており興味深いものでした。

 もちろん、例の如く「プリ

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なぜ、あの会社は儲かるのか?  (山田 英夫・山根 節)

なぜ、あの会社は儲かるのか? (山田 英夫・山根 節)

 いつも拝見している会社の先輩のブログで紹介されていたので読んでみました。

 内容は、誰でも知っているような有名企業を材料に、その経営戦略・マーケティング戦略を「会計」という目を通して分析・解説したものです。
 実例が豊富で、テーマごとにポイントが分かりやすく説明されています。

 たとえば、伊勢丹や帝国ホテルを例にした「高級化路線」という戦略について。
 何も工夫せずに差別化や高級化を図ろうと

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吉田松陰・留魂録 (古川 薫)

吉田松陰・留魂録 (古川 薫)

 吉田松陰が伝馬町の獄舎で処刑されるのは1859年(安政6)10月27日。
 「留魂録」は死の前々日から前日にかけて書かれたもので、松陰の遺書ともいえる文書です。
  身はたとひ武蔵の野辺に朽ぬとも留置かまし大和魂
    十月念五日    二十一回猛子
で始まる第1章には、やはり、松陰の信念である「至誠」が登場します。

(p78より引用) 一白綿布を求めて、孟子の「至誠にして動かざる者は未だ之

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決定学の法則 (畑村 洋太郎)

決定学の法則 (畑村 洋太郎)

ひとりの決定 畑村洋太郎氏の本は、氏を有名にした「失敗学」関係をはじめ、いままでにも何冊か読んでいます。
 久しぶりの今回は「決定」がテーマです。

 まず、畑村氏は、決定にあたって迷いがあることを前提に、決定の勘所として「経験」「知識」「仮想演習」の3つを示します。

(p45より引用) 迷いをなくそうとすること自体、無駄であるともいえます。そんなふうに迷いがついてまわる中でも、選択を早く、正し

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これも経済学だ! (中島 隆信)

これも経済学だ! (中島 隆信)

伝統文化の経済学 本書は、通常では経済学の研究対象にはならないような分野を対象に、経済学視点からの分析・解説を試みています。
 対象となったのは、「伝統文化」「宗教」「社会的弱者」です。

 まず、「伝統文化」の章です。
 ここでは、華道や茶道における「家元制度」を経済学の観点から「参入障壁」と捉えます。

(p55より引用) ビジネスの世界であれば、年齢や前歴とは無関係に、より多くの利益を上げた

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数学力これだけできれば人生リッチ! (ロバート・ハーシー)

数学力これだけできれば人生リッチ! (ロバート・ハーシー)

 書評で面白そうだと思って読んでみたのですが、ちょっと失敗したかなという感じでした。

 内容は、確率/期待値・利率計算(単利・複利)・現在価値/将来価値等の概念を、多くの例題とその計算方法の説明を通して理解させてゆくものです。

 新たな気づきではありませんが、私たちが会社のなかで、いろいろな評価(たとえば、業務委託先の決定のための評価等)で通常用いている方法が「ウェイティング&スコアリング・シ

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「場の空気」が読める人、読めない人 (福田 健)

「場の空気」が読める人、読めない人 (福田 健)

コミュニケーションの幻想 最近の私の関心時のひとつは「企業におけるメンタルヘルス」の問題です。それに関して、有効なメンタルヘルス対策として常に挙げられるのが「コミュニケーションの活性化」です。

 今回の本は、コミュニケーション、特に「会話の活性化」のヒントになるかと思い、手に取ったのですが、いくつもの新たな気づきや改めて認識し直した点がありました。

 まずは、「コミュニケーションの幻想」です。

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知的ストレッチ入門 (日垣 隆)

知的ストレッチ入門 (日垣 隆)

「日垣流」知的生産の技術 いつも拝見している会社の先輩のブログで紹介されていたので読んでみました。

 日垣隆氏の本は初めてです。
 「読む」「構える」「考える」「創る」「書く」「疑う」「決める」の7つの章に分けて、「日垣流」知的生産の技術をテンポよく紹介しています。

 そのなかで、私がなるほどと思ったフレーズを2つご紹介します。

 まずは、「説得と納得」についてです。

(p35より引用) 

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人はこんなことでウツになるのか (池田 健)

人はこんなことでウツになるのか (池田 健)

 このところ私が関心を持っているテーマのひとつは、「職場のメンタルヘルス」の問題です。
 この問題は、最近多くの企業でもクローズアップされています。

 私も、本書の前にも1、2メンタルヘルス関係の本を手にとってみました。このBlogでも、「こんな上司が部下を追いつめる―産業医のファイルから」や「会社がイヤになった」をご紹介したところですが、この本も、「ウツ症状」や「ウツ病」について、精神科医が書

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会社は誰のために (御手洗 冨士夫/丹羽 宇一郎)

会社は誰のために (御手洗 冨士夫/丹羽 宇一郎)

 元キヤノン社長の御手洗冨士夫氏と元伊藤忠商事社長の丹羽宇一郎氏の対談をベースに編集した本です。

 お二人ともそれぞれ日本を代表する大企業のトップの方らしく、まさに実業を営まれた軌跡を思い入れを込めて語っています。

 いくつか各論で私が興味を抱いた点を、以下にご紹介します。

 まずは、よく言われる「部分最適・全体最適」についての具体的処方箋です。
 御手洗氏の答えは「連結評価制度」でした。

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ダメな議論 (飯田 泰之)

ダメな議論 (飯田 泰之)

怪しい解説 最近の「新書」のトレンドに乗った本です。

 正しいものを追求するより、不要・無用のものをはじいて有効性の確率をあげようという姿勢は、いかにも功利主義・現実主義的な印象を受けます。が、そうは言っても、玉石混交の議論・解説・意見が蔓延しているという現状を踏まえると、著者のアプローチも確かに有益ではあります。

 著者は、自らの「問題を解釈するに当たっての基本姿勢」を

(p93より引用)

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