野原レンゲ(ぬいぐるみ作家)

ぬいぐるみ作家&フリーライター。写真家・堀川宏幸と絵本をコラボ制作。パフォーマンスグル…

野原レンゲ(ぬいぐるみ作家)

ぬいぐるみ作家&フリーライター。写真家・堀川宏幸と絵本をコラボ制作。パフォーマンスグループ「五蓮座」にて、映像と音楽と語りで絵本読み語りライブをしている。認知症の親の介護をしながら思うことを徒然と。https://nohararenge.wixsite.com/gorenza

マガジン

最近の記事

60.介護認定調査員来る

オカンの介護認定調査の時期がやってきた。 1週間前から毎日、介護認定の人が来るで!と 言ってきたが、もちろん覚えられるはずもなく。 予定の時間の15分前になってようやく、 着替えて出迎える気になってくれた。ほっ。 介護認定調査は、本人にとって、いい気分ではない。 あれができない、これもできなくなったと、 現実を嫌というほどつきつけられるからだ。 「いや、私はできる!」と、気丈なオカンは言うに 違いなかったし、このことで、自身がひどく傷つけられ ひと波乱あることは必至だった。

    • 59.オカン同級生との別れ

      オカンの枕元に、ニワトリを描いた下絵があったので、 何か作ろうとしているなとは思っていた。 夕飯の後オカンが、「フェルトを売っているとこ 知らんか?」と聞いてきた。 「フェルトなら売るほど持っているで」と私。 ここ数日、警察に保護されながら、必死でオカンが探して いたのは、なんとフェルトだったらしい。 家にいっぱいあるのに。 「何作るん?」と聞いたら、オカンは、「ニワトリを作る」 という。「友達が病気やから、プレゼントあげようと思うねん。 わたしら酉年やから、ニワトリがええ

      • 58.テレポーテーション

        我が家の物は、よくテレポーテーション(瞬間移動)する。 台所の壁にかかっていた時計が、玄関先へ移動。 引き出しの中のお菓子が、食器乾燥機の中に移動。 テレビのリモコンが、玄関に移動。 引き出しのハサミは、始終タイムワープする。 セロテープ台は、3ヶ月ぶりに押入れで遭難しているのを発見し 保護したが、すでに新入りを購入済みでお役御免となり、 前線を退いてもらっている。 食器棚の食器は、テレポート(整列交代)が激しい。 壁にかかっているカレンダーやポスターなども、配置換え。 部屋

        • 57.オカンついに警察のごやっかいになる

          警察から電話がきた。 なんだろうと思ったら、 迷子になったオカンを預かっている とのこと。 あ~。 一階からテレビの音が聞こえるから ずっと家にいると思っていたら、 テレビをつけたまま出かけたらしい。 警察で保護していますって。 しょうがないなあ。 自転車走らせ30分。 交番に迎えに行くと、オカンは警察官と座ってお話し中。 受付で一人ぼっちで座って待っているかと思ったら、 ちゃんと話し相手になってくれていた。 ええ警察官さんや。 ところがその警察官は、私を見つけると形相一

        マガジン

        • 介護日記
          62本

        記事

          56.オトン噴火する

          オトンがおかしなった! オトンは、レビー小体認知症。 この病気は、オカンのアルツハイマー型とは違って、 幻覚がみえるらしい。 ずっと薬が効いていたので、私が介護してから 一度も幻覚をみている様子はなかったのだが……。 昨日、オトンは、急にわがままになった。 食べたいものリストを書くから、紙を寄越せという。 紙を渡すと、がさごそがさごそ。 しばらくして、読めと。 しかし、紙は真っ白。何も書かれていない。 オトンは、全盲だから、書けたかどうか自分で確認できない。 私とオカンが、

          55.デイサービス見学2

          2軒目に行ったデイサービスは気に入ったようで、 契約を結ぶといってくれた。やれやれ。 オカンに「今日3時にデイの人が契約にくるよ」 と言って、二階で仕事をしていたら、ついつい 没頭して、気が付いたら玄関のチャイムが鳴った。 時計を見たら3時少し前!わお! 一階に降りると、入ってくるデイの人と、 ちょうど出かけようとしているオカンが鉢合わせしていた。 『どこ行くんだよ』と心の中でつっこむ私。 とりあえずギリギリセーフ!・・・と思ったら 出かける気満々のオカン、自転車置き場に突

          54.デイサービス見学1

          昨日、デイサービスの見学に行った。 今まで行っていたデイサービスは、車で2~30分かかり、 車酔いするので、行きたくないとオカンが言い出したからだ。 家から車で5分のところにあるデイサービスに行く。 いつもは30人くらいいる施設だそうだが、昨日はたまたま お休みが多くて10人くらいしかいなかった。 どの人も90代のお年寄りばかり。 最高齢108歳だとか。 オカン引く。 90代ばかりのデイサービスを初めて見たが、 みんな、椅子にちょこんと座って、 じっと目を閉じたり、大人

          53.老人ホーム

          今朝、台所に行くと、冷凍ごはんが3つ食卓の上に置いてあった。 くそっ。 一度解凍してしまった冷凍食品は、再び冷凍できない。 (できるけど、まずくなる~) 今日は、この冷やごはんを食べないといけないと思ったら イラっとした。 炊飯器を開けると、冷たくなったごはんの横に、また冷凍ごはんが2つ つっこんである。 なんぼ、解凍しとんねん! 風呂場をみると、脱衣所に脱いだ服がない。 昨夜風呂に入れと言ったのに、入らなかったんだなと思うと、 イラ×2乗に。 つい、とげとげしい口調で指

          52.オカン脳みそぶっこわれる

          正月2日は、親族が集まって大宴会。 ジェンガや書き初めをして楽しい時間を過ごした。 オトンは手品を披露。 目はみえないが、昔取った杵柄。 見事な手さばきはまだ健在で、拍手喝采をあびた。 昼食は6人、夕食は7人と大人数の食事の用意をせねばならず、 オカンは大晦日から、私はもうできないと拒否。 私が全部するからオカンは何もせんでええよと、 何度も言わないとだめだった。 結局、オカンは何もせず、準備をする私のことを横目で じっと見ていた。それが影響したのだろうか? オカンの頭には

          52.オカン脳みそぶっこわれる

          51.現在進行形の楽しいに決まり

          去年の書初めの言葉は「学」を選んだ。 勉強の年にしようと決心。 まさに文字通り、去年は学びの多い一年だった。 人生の岐路となる苦しい出来事が起きた。 しかし、その苦しみの分、随分人間的に成長できたような気がする。 イチローが言っていた。 「結局、回り道が一番近道」 「まだ苦しみが足りない。まだ苦しめる。苦しめるうちはまだ伸びる」 闘う男はかっこいい! 今年の言葉を何にするか、年末からずっと考えていた。 自分の背中を押すための闘いの言葉がいっぱい浮かんだが、 しんどいと感じて

          51.現在進行形の楽しいに決まり

          50.がんばる正月

          子供の頃、お正月は、毎年オトンの田舎に帰省していた。 電車を何度も乗り換え、3時間かけて到着。 オトン、オカン、姉二人に私、犬まで連れての大移動。 手には田舎へのお土産をいっぱい抱えていたから、 着く頃には、ぐったり疲れていた。 オトンは六人兄弟の二男。 オトンの実家には、伯父伯母夫婦にいとこたちが大集結していて、 親戚が全部で何人いるのか、さっぱりわからないくらい 人であふれていた。 夜はこたつで雑魚寝。 ひとつの部屋にいったい何人が寝ていたのだろう? とにかく、にぎやか

          49.海馬の中の記憶

          姪っ子から、自分が働いている京都の料亭に 食事に来ないかと誘われた。 昼食でも1万円もする高級料亭。 敷居が高いが、一度だけ行ってみるかと、 オカンと一緒に出掛けた。 先斗町にある、その店は、ホームページで見た通り 京のお茶屋の風情を残した情緒あるすてきな店構え。 のれんをくぐって中に入ると、 着物姿の姪が出迎えてくれた。 無地の着物は、まだ23歳の女の子には地味だったが、 きちんとした落ち着いた佇まいに見え、すてきだった。 子供の頃から、やんちゃでじっとしていない子だった

          48.何もしない覚悟

          NHKのテレビ番組で、認知症の特集をしていた。 70代の息子が90代の母親の介護を 10年以上した体験談を紹介。 息子の介護の目標は、自宅で最期を看取ること。 そのために必死の介護を続けてきた。 なのに、いよいよというとき、 息子は救急車を呼んでしまった。 病院で命をとりとめるも、 医者からは、余命わずかと診断される。 息子は、母親を自宅に連れて帰って、最後を看取りたいと 医者に頼む。 医者は、連れて帰っていただいてもいいですよ。 ただし、何もしない覚悟ができるならばで

          47.二組のカップル

          おとといの夜、長姉の娘である姪が、彼氏を連れて家に遊びにきた。 リビングの椅子に緊張しながら腰かける二人。 お菓子やお茶を入れて、精一杯のもてなしをするオカン。 独特の乾いた空気が部屋に充満する。 20代と80代、年代のかけはなれた二人の会話。 お互いの距離感がつかめず、ぎこちない会話が続く。 そうだ。 これと同じことが前にもあった。 過去の記憶の引き出しがパッと開く。 そう、長姉がはじめて家に彼氏を連れてきたときの映像だ。 彼はイタリア人で、イタリア料理のシェフをしてい

          46.オトンと涙

          今朝、食卓にオトンのお箸を置くのを忘れた。 オトンがご飯を手づかみで食べ出したのを見て ピキっと、私の中の何かがキレた。 オトンに 「お箸なかったら、ないっていってよ! 動物違うねんから手で食べんといて!」 と叫んで、お箸を渡した。 すると、普段温厚なオトンがめずらしくキレた。 お箸を床に叩きつけると、 部屋の扉をバタン!と閉めて出て行った。 寝室に入ると、すでに オカンが布団を畳んでしまっていたので、 オトンは畳の上でごろりと寝転がる。 「寝る!」 と言って、そばにあった毛

          45.素晴らしいデイのサービス

          月曜日はデイに行く日じゃないのに、 みんなの策略で行かされている。 そう思い込んでいるオカン。 急に、月曜は行かない宣言をはじめた。 ケアマネさんやデイの方と相談して、月曜の朝は、 電話でお誘いしてもらうことにした。 デイの方から 「今日は楽しいですよ~。ぜひ来てください。」 と言われると ハイハイと、でかけるオカン。 ところが、今日は、いったんは「行きます。」と 言って電話を切った後、 「しまった。月曜は行かない日だった。」 と思いなおして、「行きません。」と再び電話を

          45.素晴らしいデイのサービス