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50.がんばる正月

子供の頃、お正月は、毎年オトンの田舎に帰省していた。
電車を何度も乗り換え、3時間かけて到着。
オトン、オカン、姉二人に私、犬まで連れての大移動。
手には田舎へのお土産をいっぱい抱えていたから、
着く頃には、ぐったり疲れていた。

オトンは六人兄弟の二男。
オトンの実家には、伯父伯母夫婦にいとこたちが大集結していて、
親戚が全部で何人いるのか、さっぱりわからないくらい
人であふれていた。
夜はこたつで雑魚寝。
ひとつの部屋にいったい何人が寝ていたのだろう?
とにかく、にぎやかで道中の疲れなどふっとぶほど
楽しい正月を過ごした。
これが第一正月期だ。

思春期を迎える頃になると、
正月は自宅で過ごすことが多くなった。
これが第二正月期。
朝食前、家族全員正装して、和室に一列に並ばされる。
オトンが床の間に飾った三方を両手で持ちあげる。
東の方角を向くと、その三方を頭上に掲げひれ伏す。
終わると干し柿をひとつ取って、家族へ回す。
歳の順にそれを繰り返すと、父のあいさつとなる。
そして一人ひとりにお年玉を渡す。
この後、善哉を食べ、睨み鯛を3日間眺めるetc。
正月の決まりごとはあまりにも多く、
こんな行事を毎年繰り返していた。

第三正月期、私たち姉妹はみんな結婚して独立したが
正月はそれぞれ連れ合いを連れて里帰り。
やがて子供を連れて帰るようになり、三世代が揃って
第一期のような騒がしい正月の幕開けだ。

今は第四正月期。
オトンもオカンもすっかり年をとった。
孫も大きくなった。
今年は、姉の子供たちがそれぞれ彼氏、彼女を連れて
正月を祝いにやってくる。

これまでの正月はオカンが主体となってやっていた。
これからは、私がそんな思い出を次世代に作ってあげなくてはならない。
正月がいつまでも楽しい思い出として残るようにしてあげたいなと思う。

さて、献立はどうしたものか。
う~ん。
お昼の部6人。夜の部7人。
二食分の料理。

オカンに、田舎の伯母さんは毎年大変やったやろうなといった。
すると、
「正月に田舎に遊びに行っても何もご飯なんか出てこなかったで。
お年玉も一回ももらっていない」
といった。

記憶が抜け落ちていてびっくり!
あんなに世話になったのに!
「伯母さんが亡くなってから田舎に行かなくなった」
というオカン。
伯母さんが亡くなったのは今年の8月。
記憶がむちゃくちゃ!
でも
「伯母さんはすごく世話好きのいい人やった」
といったのでよしとしよう。
とにかく、正月の記憶は消えたけど、世話になった記憶は
どこかに残っていて、めずらしく人を褒める発言。
これは快挙だ。
伯母さんのがんばった正月は、報われたね!

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