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48.何もしない覚悟

NHKのテレビ番組で、認知症の特集をしていた。
70代の息子が90代の母親の介護を
10年以上した体験談を紹介。

息子の介護の目標は、自宅で最期を看取ること。
そのために必死の介護を続けてきた。

なのに、いよいよというとき、
息子は救急車を呼んでしまった。
病院で命をとりとめるも、
医者からは、余命わずかと診断される。

息子は、母親を自宅に連れて帰って、最後を看取りたいと
医者に頼む。
医者は、連れて帰っていただいてもいいですよ。
ただし、何もしない覚悟ができるならばです。
それができないで、また救急車を呼ぶのであれば
連れて帰っても同じことですよと。

息子は考えた末、自宅には連れて帰らなかった。
母親は、病院で最期を迎えた。
結局、たった一度、呼びかけに反応したっきり、
意識のない状態が続いたまま数日過ごした後、
息をひきとったという。

息子は後になって、後悔する。
最期は自宅で迎えたいという母親の願いをかなえて
あげられなかったと。

自宅で最期をむかえるということは、
何もしない覚悟をするということ。

医者の言葉が胸にささった。

番組の最後に息子が言った。

「母は、人間がどうやって老いて、
命を終えていくか、すべてを僕に見せてくれた。
そのことに感謝しています」

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