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47.二組のカップル

おとといの夜、長姉の娘である姪が、彼氏を連れて家に遊びにきた。
リビングの椅子に緊張しながら腰かける二人。
お菓子やお茶を入れて、精一杯のもてなしをするオカン。
独特の乾いた空気が部屋に充満する。
20代と80代、年代のかけはなれた二人の会話。
お互いの距離感がつかめず、ぎこちない会話が続く。

そうだ。
これと同じことが前にもあった。

過去の記憶の引き出しがパッと開く。
そう、長姉がはじめて家に彼氏を連れてきたときの映像だ。
彼はイタリア人で、イタリア料理のシェフをしていた。
たどたどしい日本語。
彫りの深い顔立ち。
髪や目の色も私たちとはまったく違う相手に、
まだ若いオカンは、果敢にも共通の話題を探っていたっけ。
二人はやがて結婚して、女の子が生まれた。

それから20数年の月日が経ち、
その姪が美しく成長して、連れてきた彼氏は、
奇しくもパパと同じシェフだ。
同じ部屋で、同じソファーに座った二組の姿が
私の頭の中で重なる。

オカンの対応は、過去も今もまったく同じ。
常識のある態度がとれるかが目利きポイント。
娘と孫の幸せを一番に思っての反応だ。

長姉は、今はこの世にいない。
でも、DNAは確実に娘に受け継がれている。
最近よく似てきたふとした笑顔に、姉の面影を見て
ドキリとした。

幸せになってほしい。
きっと姉も天国で見守っているだろう。


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