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52.オカン脳みそぶっこわれる

正月2日は、親族が集まって大宴会。
ジェンガや書き初めをして楽しい時間を過ごした。
オトンは手品を披露。
目はみえないが、昔取った杵柄。
見事な手さばきはまだ健在で、拍手喝采をあびた。

昼食は6人、夕食は7人と大人数の食事の用意をせねばならず、
オカンは大晦日から、私はもうできないと拒否。
私が全部するからオカンは何もせんでええよと、
何度も言わないとだめだった。
結局、オカンは何もせず、準備をする私のことを横目で
じっと見ていた。それが影響したのだろうか?
オカンの頭には、大人数の食事の準備をしなくては!
という記憶がへばりついて、いつまでも離れなかったようだ。

思えば1月2日の夜、私の部屋に来て、
「今日は大晦日だから、年が変わらない内にお風呂に入りなさい」
と言ったときから、時間が後退していたのかも。

今日4日、私は朝から外出。
お昼と夜はオトンと二人でご飯を食べてねと言って出掛けた。

夜11時に家に帰って、冷蔵庫の中を見てぎょっとした。

豆腐5丁、シラタキ2袋、牡蠣3袋、出し巻卵2袋、ちくわ2袋、
ごぼ天2袋、ひら天1袋、タラ2切れ、赤魚3切れ、黒豆3袋、
いわし団子3袋、エビ2パック、鶏肉塊、うどん7玉、シイタケ2袋、
白菜、ごぼう4本、リンゴ10個、大根1本、ねぎ4本、糸こんにゃく3袋

鍋を覗いたら、煮物がいっぱい作ってあって、
その横にはぜんざいも鍋いっぱいあった。

ついに脳みそが爆発したとしか思えない光景に茫然。
冷凍できるものは、全部冷凍庫に押し込んだけど、
いったい何人分の何を作ろうとしたのか。
(恐らく、おでん。そして寄せ鍋かな?)

オカンは、これらを冷蔵庫にしまいながら、何を考えただろう。
オトンと二人だけで誰も来ない夕食の時間。
きっと自分の失敗に気づいたはず。


毎日、自分で自分が嫌になるとつぶやいているオカン。
記憶が消えたことがわかる状態のときが
一番つらいようだ。さっき、目の前にあったものが
視界から消える。自分がどこにしまったか、さっぱり思い出せない。
毎日、探し物ばかりしているオカン。

オカンがつぶやく。
「そのうち何もかもわからなくなっていって、死ぬんだ。」
当人が一番恐怖を感じているに違いない。
いっそ何もわからなくなってしまった方が楽だろうなと私は思う。

書き初めの言葉を考えるとき、
オカンは、自分が一番できそうにない言葉にしようといって
半紙に向かった。
なんて書くのかな?と思って見たら、
「やさしさ」
と書いた。へえっと思った。
本当はみんなにやさしくしたいと思っているのに、
なかなかできないと思っていることに驚いた。
前向きな言葉を書く意識だけは、どうやらあるようだ。

(2014.1.4)

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