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57.オカンついに警察のごやっかいになる

警察から電話がきた。
なんだろうと思ったら、
迷子になったオカンを預かっている
とのこと。

あ~。
一階からテレビの音が聞こえるから
ずっと家にいると思っていたら、
テレビをつけたまま出かけたらしい。
警察で保護していますって。
しょうがないなあ。

自転車走らせ30分。
交番に迎えに行くと、オカンは警察官と座ってお話し中。
受付で一人ぼっちで座って待っているかと思ったら、
ちゃんと話し相手になってくれていた。
ええ警察官さんや。
ところがその警察官は、私を見つけると形相一転、
これこれこういう経緯でオカンを保護したと
口角泡を飛ばして説明しはじめた。
『えっと~、それ、電話でさっき聞きましたが~。
道をオカンが訪ねたんで、保護したんですよねぇ』と思いつつ、
ああ、そうですか~。
という私のあっさりした反応に、警察官はちょっと
拍子抜けした様子。
別に、道がわからなくなるの、はじめてじゃないし、
たまたま、道を聞いたのが、警察官だったから保護された
だけで、方角さえ教えてくれたら、
少し迷っても、いつも帰ってこれてたしぃ。

警察官は、オカンに、
「もう一人で買い物にでかけたらあかんで」と、
怖い顔してたしなめる。
でもさ、病気なんだから、外に出るなと言っても無理なのよね。
それに、お説教したところで、記憶できないから
意味ないし。警察のご厄介になったことは、本人が一番
ショックを受けている。だから、外野は笑ってすませて
あげるのが一番かなあって思う。
「これからも、ご厄介になるかもしれませんので、
顔を覚えておいてください」
といいながら、出口まで見送ってくれた親切な警察官に、
深々とおじぎして出所した。
娑婆の空気はうまいぜぃ。
なんちゃって。

しかし、警察官はさすがに対応が慣れている。
迷子老人、結構多いのかも。
私は、オカンが落ち込まないよう、
「ちょうど警察署のそばに用事があったから、
ここに来れてラッキーだったわ~。
おいしいもん食べて帰ろっか」と言って、
近くの定食屋で晩御飯をすませた。

なるべく、つらいという感情を残さないようにしてあげる
くらいしか、私にできることはなさそう。
子供なら、口をすっぱくして、たしなめるけど、
それは認知症には逆効果。怖い私の顔しか海馬に残らず、
失敗したら隠そうという守りの体制に入るだけだ。
警察のごやっかいになることなんて、
人生、そうないんだから、ええ経験や。
そう笑い飛ばそう!


(2014年3月の日記から。このあとオカンは、散々警察のご厄介に
なることを、この時、私はまだ知らなかった)

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