マガジンのカバー画像

介護日記

62
運営しているクリエイター

記事一覧

60.介護認定調査員来る

60.介護認定調査員来る

オカンの介護認定調査の時期がやってきた。
1週間前から毎日、介護認定の人が来るで!と
言ってきたが、もちろん覚えられるはずもなく。
予定の時間の15分前になってようやく、
着替えて出迎える気になってくれた。ほっ。

介護認定調査は、本人にとって、いい気分ではない。
あれができない、これもできなくなったと、
現実を嫌というほどつきつけられるからだ。
「いや、私はできる!」と、気丈なオカンは言うに

もっとみる
59.オカン同級生との別れ

59.オカン同級生との別れ

オカンの枕元に、ニワトリを描いた下絵があったので、
何か作ろうとしているなとは思っていた。

夕飯の後オカンが、「フェルトを売っているとこ
知らんか?」と聞いてきた。
「フェルトなら売るほど持っているで」と私。
ここ数日、警察に保護されながら、必死でオカンが探して
いたのは、なんとフェルトだったらしい。
家にいっぱいあるのに。
「何作るん?」と聞いたら、オカンは、「ニワトリを作る」
という。「友達

もっとみる
58.テレポーテーション

58.テレポーテーション

我が家の物は、よくテレポーテーション(瞬間移動)する。
台所の壁にかかっていた時計が、玄関先へ移動。
引き出しの中のお菓子が、食器乾燥機の中に移動。
テレビのリモコンが、玄関に移動。
引き出しのハサミは、始終タイムワープする。
セロテープ台は、3ヶ月ぶりに押入れで遭難しているのを発見し
保護したが、すでに新入りを購入済みでお役御免となり、
前線を退いてもらっている。
食器棚の食器は、テレポート(整

もっとみる
57.オカンついに警察のごやっかいになる

57.オカンついに警察のごやっかいになる

警察から電話がきた。
なんだろうと思ったら、
迷子になったオカンを預かっている
とのこと。

あ~。
一階からテレビの音が聞こえるから
ずっと家にいると思っていたら、
テレビをつけたまま出かけたらしい。
警察で保護していますって。
しょうがないなあ。

自転車走らせ30分。
交番に迎えに行くと、オカンは警察官と座ってお話し中。
受付で一人ぼっちで座って待っているかと思ったら、
ちゃんと話し相手にな

もっとみる
56.オトン噴火する

56.オトン噴火する

オトンがおかしなった!
オトンは、レビー小体認知症。
この病気は、オカンのアルツハイマー型とは違って、
幻覚がみえるらしい。
ずっと薬が効いていたので、私が介護してから
一度も幻覚をみている様子はなかったのだが……。

昨日、オトンは、急にわがままになった。
食べたいものリストを書くから、紙を寄越せという。
紙を渡すと、がさごそがさごそ。
しばらくして、読めと。
しかし、紙は真っ白。何も書かれてい

もっとみる
55.デイサービス見学2

55.デイサービス見学2

2軒目に行ったデイサービスは気に入ったようで、
契約を結ぶといってくれた。やれやれ。

オカンに「今日3時にデイの人が契約にくるよ」
と言って、二階で仕事をしていたら、ついつい
没頭して、気が付いたら玄関のチャイムが鳴った。
時計を見たら3時少し前!わお!
一階に降りると、入ってくるデイの人と、
ちょうど出かけようとしているオカンが鉢合わせしていた。
『どこ行くんだよ』と心の中でつっこむ私。
とり

もっとみる
54.デイサービス見学1

54.デイサービス見学1

昨日、デイサービスの見学に行った。
今まで行っていたデイサービスは、車で2~30分かかり、
車酔いするので、行きたくないとオカンが言い出したからだ。

家から車で5分のところにあるデイサービスに行く。
いつもは30人くらいいる施設だそうだが、昨日はたまたま
お休みが多くて10人くらいしかいなかった。

どの人も90代のお年寄りばかり。
最高齢108歳だとか。
オカン引く。

90代ばかりのデイサー

もっとみる
53.老人ホーム

53.老人ホーム

今朝、台所に行くと、冷凍ごはんが3つ食卓の上に置いてあった。
くそっ。
一度解凍してしまった冷凍食品は、再び冷凍できない。
(できるけど、まずくなる~)
今日は、この冷やごはんを食べないといけないと思ったら
イラっとした。
炊飯器を開けると、冷たくなったごはんの横に、また冷凍ごはんが2つ
つっこんである。
なんぼ、解凍しとんねん!

風呂場をみると、脱衣所に脱いだ服がない。
昨夜風呂に入れと言った

もっとみる
52.オカン脳みそぶっこわれる

52.オカン脳みそぶっこわれる

正月2日は、親族が集まって大宴会。
ジェンガや書き初めをして楽しい時間を過ごした。
オトンは手品を披露。
目はみえないが、昔取った杵柄。
見事な手さばきはまだ健在で、拍手喝采をあびた。

昼食は6人、夕食は7人と大人数の食事の用意をせねばならず、
オカンは大晦日から、私はもうできないと拒否。
私が全部するからオカンは何もせんでええよと、
何度も言わないとだめだった。
結局、オカンは何もせず、準備を

もっとみる
51.現在進行形の楽しいに決まり

51.現在進行形の楽しいに決まり

去年の書初めの言葉は「学」を選んだ。
勉強の年にしようと決心。
まさに文字通り、去年は学びの多い一年だった。
人生の岐路となる苦しい出来事が起きた。
しかし、その苦しみの分、随分人間的に成長できたような気がする。
イチローが言っていた。
「結局、回り道が一番近道」
「まだ苦しみが足りない。まだ苦しめる。苦しめるうちはまだ伸びる」
闘う男はかっこいい!

今年の言葉を何にするか、年末からずっと考えて

もっとみる
50.がんばる正月

50.がんばる正月

子供の頃、お正月は、毎年オトンの田舎に帰省していた。
電車を何度も乗り換え、3時間かけて到着。
オトン、オカン、姉二人に私、犬まで連れての大移動。
手には田舎へのお土産をいっぱい抱えていたから、
着く頃には、ぐったり疲れていた。

オトンは六人兄弟の二男。
オトンの実家には、伯父伯母夫婦にいとこたちが大集結していて、
親戚が全部で何人いるのか、さっぱりわからないくらい
人であふれていた。
夜はこた

もっとみる
49.海馬の中の記憶

49.海馬の中の記憶

姪っ子から、自分が働いている京都の料亭に
食事に来ないかと誘われた。
昼食でも1万円もする高級料亭。
敷居が高いが、一度だけ行ってみるかと、
オカンと一緒に出掛けた。

先斗町にある、その店は、ホームページで見た通り
京のお茶屋の風情を残した情緒あるすてきな店構え。
のれんをくぐって中に入ると、
着物姿の姪が出迎えてくれた。
無地の着物は、まだ23歳の女の子には地味だったが、
きちんとした落ち着い

もっとみる
48.何もしない覚悟

48.何もしない覚悟

NHKのテレビ番組で、認知症の特集をしていた。
70代の息子が90代の母親の介護を
10年以上した体験談を紹介。

息子の介護の目標は、自宅で最期を看取ること。
そのために必死の介護を続けてきた。

なのに、いよいよというとき、
息子は救急車を呼んでしまった。
病院で命をとりとめるも、
医者からは、余命わずかと診断される。

息子は、母親を自宅に連れて帰って、最後を看取りたいと
医者に頼む。
医者

もっとみる
47.二組のカップル

47.二組のカップル

おとといの夜、長姉の娘である姪が、彼氏を連れて家に遊びにきた。
リビングの椅子に緊張しながら腰かける二人。
お菓子やお茶を入れて、精一杯のもてなしをするオカン。
独特の乾いた空気が部屋に充満する。
20代と80代、年代のかけはなれた二人の会話。
お互いの距離感がつかめず、ぎこちない会話が続く。

そうだ。
これと同じことが前にもあった。

過去の記憶の引き出しがパッと開く。
そう、長姉がはじめて家

もっとみる