【書評】無人島のふたり 120日以上生きなくちゃ日記(山本文緒・著)
無人島のふたり 120日以上生きなくちゃ日記(山本文緒・著)
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直木賞作家となり、離婚・再婚を経て充実した生活を送っていた筆者を突如襲った、ステージ4の膵臓がん。
抗がん剤のあまりの気持ち悪さに1回で取りやめ緩和ケアーに切り替えた筆者。
誰にでも死は訪れる。分かりきっているのに、まさか58歳で末期がんとは。
余命は4ヶ月と告げられ、それからの日々を極力平穏な筆致で描き続け、生き続ける。
そして、以前と較べてぐっと短い日記を残した9日後、令和3年(2021年)10月13日、彼女は旅立つ。
僕自身、実は山本作品はエッセイしか読んだことがないんだけど、離婚直後の生活を描く『そして私は一人になった』、再婚後の幸せな生活を書くつもりがうつ病を発症しその闘病記になってしまった『再婚生活』はいずれも飄々とした文体で、筆者の飾り気のなさに好感を持っていた。
本作では、腹水を2リットル抜いたとか、自宅に酸素吸入装置や介護用ベッドを導入するといった深刻な情況がサラリと書かれているのに、以前のエッセイから文体が全く変わらないので、筆者が向かう先を忘れてしまいそうになってしまうけれど、突然の事故死でもなく、年老いて徐々に社会から遠ざかるのでもなく、予見された結末の日へと歩んでゆく自分自身のストーリーを、彼女は何を感じ、何を思いながら書き続けたのだろう。
合掌
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