パリ条約第5条 不実施・不使用に対する措置,特許・登録の表示
1.パリ条約5条A 不実施・不使用に対する措置,特許・登録の表示
パリ条約5条Aでは、特許の「不実施」に対する制裁や処置の制限について規定されています。
1.1.パリ条約上、特許権は特許製品を輸入だけしている場合であっても、効力を失うことはありません
日本では、輸入が特許発明の実施(特2条3項)に該当します。
しかし、特許発明に係る特許製品の輸入「のみ」を行っており、国内で特許製品の製造等を行っていない場合もありえます。このような場合、その特許権がその国の産業の発達に貢献していないか、貢献度が低いと考えることもできます。
パリ条約では、このような輸入のみの実施を行っている場合であっても、特許権が効力を失わないことを規定しています(パリ条約第5条A(1))。
言い換えれば、「輸入」が特許の実施に該当しないとして、特許の効力を認めないことを禁止しています。日本では輸入は実施(特許法2条3項)に含まれるので、パリ条約5条A(1)の規定が順守されています。
1.2.パリ条約では、実施権の強制的な設定が許される場合があります
パリ条約の各同盟国は、特許が実施されないことを防止するために、実施権の強制的設定についての規定を設けることができます(パリ条約第5条A(2))。
不実施に対応するための強制的実施権は、(i)特許権者が実施しない正当理由を明らかにした場合、(ii)出願日から4年間、特許付与日から3年間のうち遅く満了する方の前である場合、には設定できません(パリ条約5条A(4))。日本では、特許法83条の不実施の場合の通常実施権の設定の裁定が規定されています。
また、この強制的に設定された実施権だけでは十分とはいえない場合に限り、特許の効力を失わせることについて規定することができます(パリ条約第5条A(3))。
日本では、パリ条約第5条A(2)に関連する規定として、不実施の場合の通常実施権の設定の裁定(特許法83条)が設けられています。
1.3.パリ条約の規定によって強制的に設定された実施権に基づいて、差止めや損害賠償請求を行うことはできません
パリ条約の規定によって強制的に設定された実施権に基づいて、差止めや損害賠償請求を行うことはできません。
これは、パリ条約では、強制的に設定された実施権は排他的なものであってはならないとされているからです(パリ条約第5条A(4))。
1.4.パリ条約では、強制的に設定された実施権のみを譲渡することはできません
特許に関する実施権の強制的な設定も許容されます(パリ条約5条A(2))。具体的には、特許が実施されていない場合における実施権の強制的設定です。
この強制的に設定された実施権だけを、譲渡することはできません。
強制的に設定された実施権は、実施の事業と共に移転する場合のみ移転することができるためです(パリ条約第5条A(4))。
1.5.パリ条約では、一定の条件を満たせば、特許権の効力を失わせることができます
パリ条約では、特許権の消滅、取消のための手続きは、実施権の最初の強制的設定の日から2年の期間が満了する前にすることはできないとされています(パリ条約第5条A(3))。
見方を変えると、実施がされないことを防止するための実施権の強制的設定日から2年の期間が満了した後であれば、特許権の消滅又は特許の取消しのための手続が認められます(パリ条約第5条A(3))。日本では実施権の強制的設定で十分という考えから、特許権の失効措置を設けていません。
2.パリ条約5条B 不実施・不使用に対する措置,特許・登録の表示
パリ条約5条Bでは、意匠の保護は、意匠の不実施又は輸入によっては、失効しないことが規定されています。ここで、輸入するのは意匠権者か否かや、同盟国製造品が輸入されたか否かは関係ありません。
パリ条約5条Bの規定は、意匠には寿命が短いものが多い等の理由から、国内での生産等を必須とするのは妥当ではないために設けられています。
3.パリ条約5条C 不実施・不使用に対する措置,特許・登録の表示
パリ条約5条Cでは、商標の不使用である場合のペナルティについて規定されています。
パリ条約5条C(1)では、不使用の場合における登録商標の失効に関して規定されています。「登録商標」なので、パリ条約5条C(1)は登録主義を採用している国が対象です。ただし、サービスマークについては対象外です。
日本では不使用取消(商標法50条)がパリ条約5条C(1)に対応した規定です。
商標権者が登録商標の一部を変更して使用することもありえます。パリ条約5条C(2)では、登録商標の一部の変更が登録商標の識別性に影響を与えることのない変更である場合(本質的でない範囲の変更や要部ではない部分の変更)には、登録商標の効力は失われないこと、及び、登録商標に対して与えられる保護が減縮されないことが規定されています。リ条約5条C(2)では、登録商標の一部の変更が登録商標の識別性に影響を与えることのない変更である場合(本質的でない範囲の変更や要部ではない部分の変更)には、登録商標の効力は失われないこと、及び、登録商標に対して与えられる保護が減縮されないことが規定されています。
ここで、保護が縮減されないとは、例えば、一部が変更された登録商標を使用していれば、登録商標の不使用(パリ条約5条C(1))とされることはない、ということです。
日本では、本質的でない範囲の変更がなされた登録商標の使用は、登録商標と社会通念上同一の商標が使用されたとすることが規定されています(商標法50条)。
登録商標の共有者が、登録商標を同時に使用することも考えられます。そのような場合であっても、商標の登録拒絶や商標に対して与えられる保護が縮減されることはありません(パリ条約5条C(2))。なお、この登録商標の共有者には、ライセンスを受けた者(ライセンシー)は含まれません。
4.パリ条約5条D 不実施・不使用に対する措置,特許・登録の表示
パリ条約5条Dでは、特許表示等を製品等に付さなくても、特許権等の権利の存在を否定されることはないことが規定されています。
ただし、表示がない場合におけるペナルティを国内法令で定めても問題ありません。
例えば、表示がない場合には損害賠償請求ができない等のペナルティをしたとしても、パリ条約5条Dに反しません。
・パリ条約第5条
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