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週刊レキデンス

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#薬局薬剤師

週刊レキデンス トリプルワーミー

週刊レキデンス トリプルワーミー

皆様、トリプルワーミー(triple whammy)って知っていますか?

日本語にすると「三段攻撃」と称するそうです。三段攻撃 なんというネーミングでしょう。まるでるろうに剣心にある飛天御剣流のようではないですか。
(るろうに剣心の解説はこちら)

triple whammy とは?さて冗談は置いといて、何を triple whammy と定義としているのか。
それは ACE-i/ARB +

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週刊レキデンス~第21回~ スタチンの使い分けヒント

週刊レキデンス~第21回~ スタチンの使い分けヒント

スタチンは 1 次予防効果と 2 次予防効果がある事が分かりました。
そしてスタチンによる LDL-C のコントロールは低いほど良い
「the lower, the better 」が現時点では推奨されていることも分かってきました。

これらの効果が示されている事は、特に 1 次予防効果に関して LDL-コレステロールが高いけれども、現時点で痛みを抱えたり苦しんでいない人がどうしてこの薬を「飲み続

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週刊レキデンス ~第20回~ スタチンの2次予防はいかに?

週刊レキデンス ~第20回~ スタチンの2次予防はいかに?

前回までスタチンの1次予防に対する効果を見てきました。
次は 2 次予防を見ていきましょう。果たしてスタチンは 2 次予防に対して効果があるのでしょうか?

その前に、2次予防とはなんだろうか。心筋梗塞2次予防の定義を例に挙げてみます。
心筋梗塞2次予防とは一般的に心筋梗塞後の症例を心血管系事故から予防することをいう。心事故とは心臓死(致死的心筋梗塞、心臓突然死、心不全死)及び非致死的心筋梗塞

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週刊レキデンス ~第19回~ スタチンの治療が始まった 1次予防

週刊レキデンス ~第19回~ スタチンの治療が始まった 1次予防

コンパクチンは遠藤によって発見されましたが、有効性・安全性に疑念があり販売が断念しました。(1)(2)
しかし、それだけでは終わりません。三共(現 第一三共)は、コンパクチンの投与後の尿中活性代謝物に水酸基を加えたものを開発。それがプラバスタチンだったのです。

それに対してメルク社は、他のカビ類(Aspergillus terreus )から抽出をした際にコンパクチンよりも炭素が 1 つ多い化合

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週刊レキデンス ~第18回~ スタチンの開発

週刊レキデンス ~第18回~ スタチンの開発

「SGLT-2i が令和のスタチンとなるか」と言われて久しいですが、さてスタチンのインパクトたるものは一体どういうものなのでしょうか? 一体なぜスタチンはこの世にインパクトを与えた薬剤となったのでしょうか?その謎を探るべくまずは開発経緯から見ていきましょう!!

スタチン系の発見スタチン系の一番初めに開発(正しくは発見)されたのは、「コンパクチン 別名メバスタチン」、 発見したのは遠藤章(1933

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週刊レキデンス ~第17 回~ ピロリ菌除菌の歴史 こうやってたどり着いたのかも?

週刊レキデンス ~第17 回~ ピロリ菌除菌の歴史 こうやってたどり着いたのかも?

今では 1 次除菌は PPI+AMPC(アモキシシリン)+CAM(クラリスロマイシン)の 3 剤併用療法が標準療法ですが、この治療法にどうやってたどり着いたのでしょうか?

始まりはビスマスからPubMed で H.pylori か Helicobacter pylori で検索すると、1990年の報告が最初の方に出てきます。この当時は、コロイド状亜クエン酸ビスマス(CBS)とラニチジンを比較し

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週刊レキデンス ~第 16 回~ ピロリ菌を飲んでみたら

週刊レキデンス ~第 16 回~ ピロリ菌を飲んでみたら

ヘリコバクターピロリこと、H.pylori の除菌方法が今の形になったのはどういった経緯があるのでしょうか? それを旅していくために、まずH.pylori が発見された所から探っていきましょう。

今からたったの 39 年前 時は遡る事、39年前の 1983 年 ロビン・ウォレン(John Robin Warren) は消化性潰瘍を患っている患者さんの胃に湾曲した生物がいることを発見しました。こ

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週刊レキデンス  ~第15回~ 血圧治療どこまで下げた方がいいの?

週刊レキデンス ~第15回~ 血圧治療どこまで下げた方がいいの?

血圧が高いと心血管疾患による死亡率が高くなる傾向にあるのが、フラミンガム研究(1)を始めとする多くの研究で分かってきました。そうすると、「血圧を積極的に下げよう」運動が始まります。ふと、ある1つの疑問にぶち当たりませんか?

「血圧はどこまで下げたら良いのだろう?」

この問題に対して、1979 年に 90mmHg 以下に減少した患者の心筋梗塞の相対危険度は拡張期血圧(以下、DBP)が 100-1

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週刊レキデンス ~第12回~                      経口避妊薬と低用量ピルの始まり

週刊レキデンス ~第12回~ 経口避妊薬と低用量ピルの始まり

最近低用量ピルとか緊急避妊薬の承認が・・・とかよくニュースで聞きますよね?経口避妊薬や低用量ピルとは一体何なのでしょうか?
まずは、その入り口となる薬の歴史について探ってみましょう。

ある2人の出会い時は遡る事 1950年 マーガレット・ヒギンズ・サンガー(Margaret Higgins Sanger, 1879年9月14日 - 1966年9月6日)が、生物学者 グレゴリー・グッドウィン・ピン

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週刊レキデンス ~第10回~ 糖尿病の初期の RCT は一体いつ?

週刊レキデンス ~第10回~ 糖尿病の初期の RCT は一体いつ?

糖尿病の治療に対して、インスリンが使われるようになりました。
ただこの時点では、「糖尿病の犬」に対して「膵臓抽出物≒インスリン」を投与したことで、血糖値が下がった。 というだけです。果たして、これがヒトに投与した場合、同様の結果を得られるのでしょうか?

DCCT試験が初期の大規模臨床試験?(糖尿病の場合)インスリンを人に投与して問題ないのか?同様の結果が得られるのか?という疑問について、現在であ

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週刊レキデンス ~第5回~不整脈治療の歴史

週刊レキデンス ~第5回~不整脈治療の歴史

第1回から第4回までは、麻薬などの乱用に関わる薬と歴史の話をしてきました。第5回からは、心臓疾患を交えた歴史+エビデンスのお話をしてみます。 今回調べを進めると、アミオダロンという薬が最近推しの話題がキャッチ出来ました。何故アミオダロンが推しなのだろうか。その経緯を綴ってみました。

不整脈の治療はいつから?皆様、「不整脈」というものを聞いたことがありますか?

不整脈とは、正常な心臓は規則正しく

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週刊レキデンス ~第6回~ CAST試験が及ぼした影響

週刊レキデンス ~第6回~ CAST試験が及ぼした影響

第6回では、5回で触れたCAST試験について触れました。この試験を通じて不整脈治療にどのような影響を及ぼしたのでしょうか?

前回、アミオダロンの話をしました。このアミオダロンのKチャネル抑制が活動電位持続時間を延長する、抗不整脈作用がある事を確定させたのは、他ならぬ Bramah N Singh (1938年3月3日-2014年9月20日)でした。この論文のタイトルが興味深く「新規抗狭心症薬であ

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週刊レキデンス ~第9回~ 糖尿病治療の始まり

糖尿病の歴史はどの様にして始まったのでしょうか?

日本で一番最初に糖尿病が報告された人物は、藤原道長と言われています。(1)

学生が見つけた?では、遡ってみましょう!時代は今から152年前である1869年です。 
当時、ドイツ ベルリンで、ある一人の学生が膵臓にある塊を発見しました。しかし、その当時は、まだその塊と糖尿病の関係性は解明されていませんでした。その塊を発見した彼が没した数年後、フラ

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