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週刊レキデンス

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記事一覧

週刊レキデンス AKIが来た?

週刊レキデンス AKIが来た?

triple whammy が AKI のリスクになることが分かってきました。

そもそも AKI って何なのですかね? 
そこで、AKI にまつわる歴史を遡ってみようと思います。

第二次世界大戦 と クラッシュ症候群まず、 AKI に繋がる大事な話には、1951年に Homer W. Smith 氏が急性腎不全 ARF=Acute renal failure について提唱したことを知る必要があ

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週刊レキデンス トリプルワーミー

週刊レキデンス トリプルワーミー

皆様、トリプルワーミー(triple whammy)って知っていますか?

日本語にすると「三段攻撃」と称するそうです。三段攻撃 なんというネーミングでしょう。まるでるろうに剣心にある飛天御剣流のようではないですか。
(るろうに剣心の解説はこちら)

triple whammy とは?さて冗談は置いといて、何を triple whammy と定義としているのか。
それは   ACE-i/ARB +

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週刊レキデンス ~第24回~にきびと治療の歴史

週刊レキデンス ~第24回~にきびと治療の歴史

日本で、ニキビの治療に病院へ積極的に受診するのはここ最近になってからといわれています。 それは一体なぜなのでしょうか?

ニキビこと「尋常性痤瘡」は 2000年代前半までの日本では、「青春のシンボル」として皮膚疾患で必ずしも積極的な治療を施す対象ではありませんでした。

そのため、「症状」がありながらも医療機関を受診する患者は 10% に過ぎず、また受診した患者の治療に対する満足度も十分とは言えて

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週刊レキデンス~第23回~ ESA から HIF-PH 阻害薬へ

週刊レキデンス~第23回~ ESA から HIF-PH 阻害薬へ

前回 rHuEPO  の開発までの経緯を追ってみました。
rHuEPO が開発されたものの、適切な貧血改善効果を得るためには、特に血液透析患者は、rhuEPO を透析ごとに最大週 3 回投与する必要があります。これを 1 回毎に静脈内投与することは患者、透析医療関係者の双方にとても負担のかかる事で、投与回数のを減らすことは出来ないものかと・・・。

そこで、麒麟麦酒株式会社(現:協和キリン株式会社

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週刊レキデンス~22回~腎性貧血の新たな幕開け

週刊レキデンス~22回~腎性貧血の新たな幕開け

ここ 2-3 年、腎性貧血の治療薬が調剤薬局でも取り扱われるようになりました。何故調剤薬局で?この疑問に腎性貧血治療の歴史とともに振り返ってみようと思います。

HIF-PH 阻害薬とは?まず、調剤薬局で腎性貧血治療が取り扱われるようになった大きなきっかけは、「 HIF-PH 阻害剤」の登場が大きく関わっています。

この薬なんて読むのでしょうか? 「HIF = ヒフ 」と呼んでいるようです。

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週刊レキデンス~第21回~ スタチンの使い分けヒント

週刊レキデンス~第21回~ スタチンの使い分けヒント

スタチンは 1 次予防効果と 2 次予防効果がある事が分かりました。
そしてスタチンによる LDL-C のコントロールは低いほど良い
「the lower, the better 」が現時点では推奨されていることも分かってきました。

これらの効果が示されている事は、特に 1 次予防効果に関して LDL-コレステロールが高いけれども、現時点で痛みを抱えたり苦しんでいない人がどうしてこの薬を「飲み続

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週刊レキデンス ~第20回~ スタチンの2次予防はいかに?

週刊レキデンス ~第20回~ スタチンの2次予防はいかに?

前回までスタチンの1次予防に対する効果を見てきました。  
次は 2 次予防を見ていきましょう。果たしてスタチンは 2 次予防に対して効果があるのでしょうか?

その前に、2次予防とはなんだろうか。心筋梗塞2次予防の定義を例に挙げてみます。
心筋梗塞2次予防とは一般的に心筋梗塞後の症例を心血管系事故から予防することをいう。心事故とは心臓死(致死的心筋梗塞、心臓突然死、心不全死)及び非致死的心筋梗塞

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週刊レキデンス ~第19回~ スタチンの治療が始まった 1次予防

週刊レキデンス ~第19回~ スタチンの治療が始まった 1次予防

コンパクチンは遠藤によって発見されましたが、有効性・安全性に疑念があり販売が断念しました。(1)(2)
しかし、それだけでは終わりません。三共(現 第一三共)は、コンパクチンの投与後の尿中活性代謝物に水酸基を加えたものを開発。それがプラバスタチンだったのです。

それに対してメルク社は、他のカビ類(Aspergillus terreus )から抽出をした際にコンパクチンよりも炭素が 1 つ多い化合

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週刊レキデンス ~第18回~ スタチンの開発

週刊レキデンス ~第18回~ スタチンの開発

「SGLT-2i が令和のスタチンとなるか」と言われて久しいですが、さてスタチンのインパクトたるものは一体どういうものなのでしょうか? 一体なぜスタチンはこの世にインパクトを与えた薬剤となったのでしょうか?その謎を探るべくまずは開発経緯から見ていきましょう!!

スタチン系の発見スタチン系の一番初めに開発(正しくは発見)されたのは、「コンパクチン 別名メバスタチン」、 発見したのは遠藤章(1933

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週刊レキデンス ~第17 回~ ピロリ菌除菌の歴史 こうやってたどり着いたのかも?

週刊レキデンス ~第17 回~ ピロリ菌除菌の歴史 こうやってたどり着いたのかも?

今では 1 次除菌は PPI+AMPC(アモキシシリン)+CAM(クラリスロマイシン)の 3 剤併用療法が標準療法ですが、この治療法にどうやってたどり着いたのでしょうか? 

始まりはビスマスからPubMed で H.pylori か Helicobacter pylori で検索すると、1990年の報告が最初の方に出てきます。この当時は、コロイド状亜クエン酸ビスマス(CBS)とラニチジンを比較し

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週刊レキデンス ~第 16 回~ ピロリ菌を飲んでみたら

週刊レキデンス ~第 16 回~ ピロリ菌を飲んでみたら

ヘリコバクターピロリこと、H.pylori の除菌方法が今の形になったのはどういった経緯があるのでしょうか? それを旅していくために、まずH.pylori が発見された所から探っていきましょう。

今からたったの 39 年前 時は遡る事、39年前の 1983 年 ロビン・ウォレン(John Robin Warren) は消化性潰瘍を患っている患者さんの胃に湾曲した生物がいることを発見しました。こ

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週刊レキデンス  ~第15回~ 血圧治療どこまで下げた方がいいの?

週刊レキデンス ~第15回~ 血圧治療どこまで下げた方がいいの?

血圧が高いと心血管疾患による死亡率が高くなる傾向にあるのが、フラミンガム研究(1)を始めとする多くの研究で分かってきました。そうすると、「血圧を積極的に下げよう」運動が始まります。ふと、ある1つの疑問にぶち当たりませんか?

「血圧はどこまで下げたら良いのだろう?」

この問題に対して、1979 年に 90mmHg 以下に減少した患者の心筋梗塞の相対危険度は拡張期血圧(以下、DBP)が 100-1

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週刊レキデンス ~第14回~ 血圧の目標値はどうやって決めたの?

週刊レキデンス ~第14回~ 血圧の目標値はどうやって決めたの?

高血圧の時、血圧を下げた方が長生きが出来そうな事が分かりました。それでは、血圧はいくつぐらいにコントロールするのが良いでしょうか?
この結論を巡って、フラミンガム研究以降も幾つかの血圧管理を巡る様々な臨床試験が行われてきました。

VA Cooperative Study例えば、フラミンガム研究と同時期 1967 年に発表された VA Cooperative Study こちらは退役軍人を集めてき

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週刊レキデンス ~第12回~                      経口避妊薬と低用量ピルの始まり

週刊レキデンス ~第12回~ 経口避妊薬と低用量ピルの始まり

最近低用量ピルとか緊急避妊薬の承認が・・・とかよくニュースで聞きますよね?経口避妊薬や低用量ピルとは一体何なのでしょうか?
まずは、その入り口となる薬の歴史について探ってみましょう。

ある2人の出会い時は遡る事 1950年 マーガレット・ヒギンズ・サンガー(Margaret Higgins Sanger, 1879年9月14日 - 1966年9月6日)が、生物学者 グレゴリー・グッドウィン・ピン

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