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評論(小説・映画)・コラム

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#書評

次お父さんの番だよ 「風呂の順番」古川真人

次お父さんの番だよ 「風呂の順番」古川真人

2020年、「背高泡立草」で第162回芥川賞受賞した作家、古川真人さんの小説が文學界に寄稿されていたので読んだ。

実は背高泡立草はまだ読んでいない。
気になって一度書店でパラパラとページをめくったことがありながら、未読のままである。本作を読んで、背高泡立草もしっかり読んでみようと思った。

あらすじ

所感

全体の文章の印象としては、まどろっこしいけど好きな文章だった。
こんな事を言ったら怒ら

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「犯罪者が刑務所で幸せに暮らす未来」東京都同情塔 九段理江 | 書評 

「犯罪者が刑務所で幸せに暮らす未来」東京都同情塔 九段理江 | 書評 

2024年4月1日 読了  

個人的評価 ★★★★☆

あらすじ (ネタバレなし)

建築家の牧名沙羅(マキナ・サラ)は東京に建つことを予定されている「シンパシータワートーキョー」のコンペに向けて構想を練っていた。この建築物の用途は「刑務所」であり、ここに”居住”する犯罪者は出自や環境によって犯罪を強いられたケースが多いため同情されて然るべきであって、幸せな刑期を送るべきというコンセプトがある。

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全身にタックルを受けたような重くて鈍い衝撃と妙な解放感を覚えた【『破局』遠野遥】

全身にタックルを受けたような重くて鈍い衝撃と妙な解放感を覚えた【『破局』遠野遥】

第163回芥川賞を受賞した『破局』は、昨年2019年に文藝賞を受賞してデビューしたばかりの新人小説家、遠野遥(とおの はるか)によって書かれた。

破局は彼の第二作目にあたり、二年目にして芥川賞まで受賞してしまった。注目すべき作家が増えて心底嬉しい。

未読の方へ向けて簡単なあらすじ 主人公の陽介は、ラグビー部のOBとして後輩を指導しながら公務員試験を控える大学4年生。彼は規範を重んじ、自分にも厳

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