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愛して欲しいと言えたなら

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かつて恋人だった二人が35年の時を経て再会する物語の長編小説になります。
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愛して欲しいと言えたなら     (メル友・・・その14)

愛して欲しいと言えたなら     (メル友・・・その14)

メル友

メル友・・・その14

あ~あ、まだ、1時間もあるわ。ちょっと、早く来すぎちゃったみたい。
そう思いながらコーヒーのお替りを注文した時に、
カランカランと音がなって喫茶店のドアが開いた。
裕子が、ドアの方に視線を移すと、裕子に気がついたみたいで雪子が微笑んだ。

「あら?どうしたの、こんな早く?」
「そう言う裕子だって、もう来てるじゃない?」
「うん、ちょっとね、考え事があってね」
「考

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愛して欲しいと言えたなら     (メル友・・・その13)

愛して欲しいと言えたなら     (メル友・・・その13)

メル友

メル友・・・その13

今年も、あと2か月で12月。早いものね、月日が過ぎるのって。
初めてあの人と出会ったのも、確か、12月・・・。
私の通っていた高校は、市内から少し離れた場所にあったから、
日が沈むのが遅い10月頃までは電車で通学してたんだけど。

どうしても、11月になると日が沈むのが早くなるし、
それに、電車での通学だと駅まで自転車で行かないとダメだったのよね。

でも、バスだ

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愛して欲しいと言えたなら     (メル友・・・その12)

愛して欲しいと言えたなら     (メル友・・・その12)

メル友

メル友・・・その12

雪子との待ち合わせまでは、まだ時間がある。
というより、今日は、裕子の方が待ち合わせの時間よりも2時間も早く着いていた。
裕子は、昨夜のメールのやり取りを思い出しながらコーヒーを飲んでいるのだが、
まさか、今更になって、もう一度、自分の名前を呼ばれるとは思ってもみなかった。

両肘をテーブルにつけてコーヒーカップを持つ裕子がいる場所は、
今では、ほとんど見かけるこ

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愛して欲しいと言えたなら     (メル友・・・その11)

愛して欲しいと言えたなら     (メル友・・・その11)

メル友

メル友・・・その11

しかし、ま~、よくメールが止まる子だわね!
それじゃ~、その間に、あたしは洋服でも見て回ろうかしらん。
あたしは洋服とか下着とかは、ほとんどネットでしか購入しないんだけど。

街の洋服屋さんはあるにはあるけど、なかなか、これだっていうのがなくてね。
今流行りっていうわけじゃないけど、せっかくなら気に入った洋服を着たいじゃない?
なので、あたしは、いつもオークション

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愛して欲しいと言えたなら     (メル友・・・その10)

愛して欲しいと言えたなら     (メル友・・・その10)

メル友

メル友・・・その10

さてと、夕飯の準備も出来たことだし、そろそろメールでも開いてみようかしら?
でも、今年も、もう、あと3か月。一年なんて、あっという間って感じ。
まだ10月だっていうのに、夕方になると、外は、もう真っ暗になってるし。
などと、ひとり言を言いながらコーヒーカップを左手に持ち替えて
右手でクリック、ポン!とメールを開いてみた。

お~!お~!来てる!来てる!
ってか、昼

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愛して欲しいと言えたなら     (メル友・・・その9)

愛して欲しいと言えたなら     (メル友・・・その9)

メル友

メル友・・・その9

しかし、ま~、コーヒーを飲むと、どうして、こうも、煙草を吸いたくなるの?
とはいえ、あの子にとっては、さっきのあたしの言葉は、かなり衝撃的だったはず!
なので、今夜は、このままパソコンを閉じた方がいいかもしれないわね。

あい?違うって?
きっと、あの子は気になって木になって木にシマウマだっていうわけ?
いいのよ。気にしなくても。あたしに、ため口をきくなんて100万

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愛して欲しいと言えたなら      (メル友・・・その8)

愛して欲しいと言えたなら      (メル友・・・その8)

メル友

メル友・・・その8

とりあえず、メールが止まったということで、ここでコーヒータイムをひとつ頂きましてっと。
コーヒーには煙草とお決まりのコースを歩いていると、メル友からメールが届いた。
「ねぇ~。さっきのメールって、どういう意味なの?」
「意味?んなもん、別にないわよ」
「うそ!絶対に、何か意味があるはずよ!」
「ってか、あんた、突然メールが止まったみたいだけど、どうしたの?」「どうし

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愛して欲しいと言えたなら     (メル友・・・その7)

愛して欲しいと言えたなら     (メル友・・・その7)

メル友

メル友・・・その7

あだ名って、言われてもね~。
んなもん、当たったら、どうすんのよ?
「あだ名よりも、あんた、今は、その親友とかって彼女のことをどう思ってるのよ?」
「どうって・・・別に、昔のことだし、今は、何とも思ってないわよ」
「本当に?」
「本当に?って、どういう意味よ?」
「だって、彼氏を取られたのよ?」
「それは、そうだけど・・・」
「で、今も、その彼女とかって子と会ってる

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愛して欲しいと言えたなら     (メル友・・・その6)

愛して欲しいと言えたなら     (メル友・・・その6)

メル友

メル友・・・その6

寝取られる・・・?
ま~ま~、ずいぶんと、ま~・・・。ってか、他人事に思えないんですけど。
「寝取られるって、あんた、何?もしかして、寝取られちゃったの?」
「ま~ね。簡単に言えば、そういうことになるかもね」
「で、誰に寝取られたの?」・・・あえて訊く、この意地悪なあたし!
「誰って、私が、親友だと思ってた彼女によ」
あい?あい?あい?
ま~、似たような経験をしてる

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愛して欲しいと言えたなら     (メル友・・・その5)

愛して欲しいと言えたなら     (メル友・・・その5)

メル友

メル友・・・その5

「そんなわけないでしょ?」
「あら?どうしてよ」
「どうしてって言われても。もし、そうだったら、思わず考え込んでしまうわよ」
「考え込む?どうしてよ?嬉しくないの?」
「嬉しくないの?って言われても。だって、普通は男の人は男の人でしょ?」
「何、それ?」
「だから、小さい頃から男だった人って、普通は、そのまま男のままじゃないの?」
「ん?あたしは普通車じゃないってい

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愛して欲しいと言えたなら     (メル友・・・その4)

愛して欲しいと言えたなら     (メル友・・・その4)

メル友

メル友・・・その4

などと、可愛いイチゴさんが乗ってるショートケーキをパクパク。
たわいもない井戸端会議に花を咲かせながらコーヒータイムは過ぎていくのである。
「どれ、そろそろ、おいとましようかね・・・」
「あたしも、そろそろ、夕飯の支度をしなくっちゃ」
「そうかえ、それじゃ、夕飯時になったら孫をよこすわいな」
「よこさなくていいってば!」
「なんに遠慮ばしよってからに」
「遠慮じゃな

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愛して欲しいと言えたなら     (メル友・・・その3)

愛して欲しいと言えたなら     (メル友・・・その3)

メル友

メル友・・・その3

しかし、ま~。いきなり、お相手なんて。何を、世迷言を・・・。
「お相手ったって、別に、いいわよ」
「いいってことはなかんべ?」
だから、どこの言葉よ。
「この歳になると、一人の方が気が楽なのよ」
「んでよ、実は、あんたのことを気に入ってる子がいてよ」
ってか、人の話を聞きなさい!
「あら?あたしのことを気にいってくれる人って。あたしって、これでも、けっこうモテるのよ

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愛して欲しいと言えたなら     (メル友・・・その2)

愛して欲しいと言えたなら     (メル友・・・その2)

メル友

メル友・・・その2

お部屋から縁側を通してお庭の方を見ると、お隣のおばあちゃんが、もう、椅子に座って花瓶の飾ってあるお花を手に取って見てるし・・・。
あたしの住んでるお家は、昔ながらの縁側なるものが付いている間取りなので、日差しが暖かいときなどは、サッシを閉めたままでいると、とても、ポカポカするんですよ。
んで、縁側のサッシのすぐ向こう側の左側に小さな花壇があって、花壇の手前、あたしの

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愛して欲しいと言えたなら

愛して欲しいと言えたなら

メル友

メル友・・・その1

それは、あるメル友サイトで知り合った女性との何気ない会話から始まった。
「私ね、初体験の相手と知り合うきっかけがね、ちょっと変わっててね」「変わってるの?」
「そうなの、私が高校1年の時だったんだけど、しかも12月だったのよ」「冬の出会いなんて、ちょっとロマンチックじゃない」
「そうなのよ。とは言ってもさ、もう30年以上も前だけどね」
「あんた、いま、いくつなの?」

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