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某月某日

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日記。記憶を記録に変える場所。
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一生懸命、粛々と

一生懸命、粛々と

某月某日

朝、目覚めたら8時だった。
7時にセットした目覚ましに気づかなかったことに動揺する。

年度末に向けて細々とした対応事項があって、それらを終えていくためにいつもなら一息つくところを省いたり、ちょっと就業時間を伸ばしたりして、やりくりする日々が続いている。
ひとつひとつはたいしたことないし、一過性のことなのでまあ大丈夫なのだけど、疲れるものは疲れる。

私はそこそこ早起きできるけど、心身

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知らない「ユミさん」

知らない「ユミさん」

「知っているよ?だってお母さん、瀬尾まいこの本は全部読んでるもの」

もういいでしょう?と言わんばかりの調子で、これぞと思っていた話題はさっさと切り上げられてしまった。いつも話が長い人なのに。呆気にとられる。



母から「スマホのアプリについて聞きたいので、電話の時間をつくってください」とLINEがきた。50歳を過ぎてからスマホ(というか携帯電話。それまで携帯をもっていなかった)デビューした母

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、の後

、の後

涙が溢れてくる。

今日の予定にソワソワしながら洗濯機を回し、掃除をする。出かけるのは昼ころだから、まだ時間に余裕がある。しばらく続いていた肌荒れも落ち着いてきたし、シートマスクをつかおう。マスクをとった肌はこころなしか元気に見える。どんなメイクにしようかわくわくしながら、いつもより丁寧に肌に色をのせる。

時間をかけて、気が済むまで迷いながら身支度をするのが好きだ。行き先や会う相手、やることを思

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西早稲田・雑司が谷、およびその周辺

西早稲田・雑司が谷、およびその周辺

半分青い金柑や、落ちてしまいそうな柚子、見頃を逃した椿、早咲きの梅。自分に関心が集中していた間にも季節は進んでいて、2月も目前だと気づく。

最寄り駅に着いた。電車に乗って降りたことのない駅で降りるのが、今日の私の予定。



焼きりんごを、おそらく初めて食べた。ベイクドチーズケーキの気分だったけど、売り切れとのこと。せっかくならと未知のものを注文した。

上にかかる「白」がじゅわっと溶けていく

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欠片を集める 息が止まる

欠片を集める 息が止まる

某月某日

美容院始めをしに行く。

2年半ほど担当してもらい続けているタカハシさんの施術は、いつも手さばきに無駄がなく美しい。「お任せで」のオーダーに対して毎回、必ず印象が変化するよう応えてくれる。

人といると緊張しがちだけれど、タカハシさん相手にはリラックスできる。疲れているときこそ、ある種の助けを求めて美容院に行く。

前回の施術でおすすめしてもらったのが毛先カラー。ランダムに毛束をとり、

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2024年1月

2024年1月

2024年1月1日

例年ならテレビっ子な弟が遅くまで起きているのが恒例の大晦日。その弟は老舗菓子屋の仕事が忙しいらしく、不在だった。父と兄は早々に床に就き、初日の出に備えている。母と二人で静かに話しながら新年を迎えた。気恥ずかしさと嬉しさが入り交じる年越し。

翌朝、弟がいないこと以外はいつも通りの正月。習慣で8時には目が覚め、皆で雑煮を食べ、何をすることもなく過ごし、お節をつつく。昼過ぎに恋人

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粘る晩秋、ないし初冬

粘る晩秋、ないし初冬

ほんの少しなのだけど、確実に疲れが溜まっていく。
楽しみなこともやりたいこともたくさんある。
寝ている場合じゃなかった。

自分を癒やしたり喜ばせて粘った晩秋、ないし初冬の記録。



某月某日

平日に1日、ぽっかり仕事休みができた。
なんの予定もなく、なにをしてもいい休日。こういう休みのとり方はめったにしないけど、一番気分の上がる設定かもしれない。

ファッション雑誌を読みながら「服に合わせ

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ととのわない

ととのわない

某月某日

身の回りや自分自身が全くととのわない。

部屋がしょっちゅう散らかる。掃除も片付けもしてるのだけど、持ち物の出入りが激しいのか、気がつくとゴチャッとしている。

毎日食事も睡眠もとっているけれど、家の中でもパタパタ忙しなく、休まらない。なんとなく身体に疲れが溜まっている感じもある。

長く続けられない「ととのわない」生活。ただ、このととのわなさの根っこには「色々なことを変えようとしてい

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「静」の時間

「静」の時間

某月某日

秋の到来とともに、身体のリズムが徐々に変化している感覚がある。

「静」の時間を欲している。春から夏にかけて、特段忙しくしていたつもりはないのだけれど、新生活の始まりや、暑くて仕様がない毎日を乗り越え、一息つきたいタイミングなのかもしれない。

以前の自分であれば「静」を求めるこころに気づくと「疲れてしまったんだろうか?自分大丈夫だろうか?」とひどく不安になった。今は環境と自分のリズム

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ひとのきもち

ひとのきもち

某月某日

8月に入ると「夏真っ盛り」と「夏の終わり」がいっぺんにくるような気がするのは私だけなんだろうか。

お盆を過ぎたいまは「もう夏の終わりっぽいぞ」「こんなに暑いのに、夏は終わっちゃうんだね」という声が街中に充満している。暑かろうと秋はきっちりやって来る。そのことをみんな、わかっている。

あっという間に過ぎてしまう季節が恋しくて、少しでも気持ちを盛り上げようと、レモンイエローのシャツを纏

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夏祭り前夜

夏祭り前夜

某月某日

身体の重さがとれないまま朝を迎えた。暑さで外出が遠のいているからか、不調というほどでもないだるさが続いている。

こういうときは旬の果物の力を借りるに限る。昨夏、会社の先輩に「食欲がなくても桃は食べな」と言われてから、すっかり夏=桃のイメージが定着した。実際問題、一人でも食べやすいサイズで、甘さとさっぱり感のバランスがよい、果汁たっぷりの果物というのはそんなに多くなくて、その点、桃は優

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耐える 明ける

耐える 明ける

某月某日

仕事で頑張りどきが続いている。新しく始まった案件を軌道に乗せる期間で、予定外のタスクに対応することも多い。

緊張が抜けない。身体も強ばっている。なんとも嫌な感じがした。頭もこころも疲れもリセットしたくて、銭湯に向かう。

からだ一つで、タオルだけもって浴場へのドアを開ける瞬間が好きだ。湯気で世界がぼんやりとしか見えないのも、ここでは全員が身一つなのも、日常であって非日常。熱い湯に浸か

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境界が消えるとき

境界が消えるとき

夏至を迎えたばかりの頃、銀座を歩いた。平日の仕事終わりだった。

18時を過ぎても空が明るい。大きなビジネスバッグを背負っている私を横目に、ブランド物のショッピングバッグを手にした人が行き来する。

昼と夜の境界が、平日と休日の境界が、どこかに消えてしまったみたいだった。

ここはいつもの空間や時間の流れを忘れさせるまちなのかもしれない。そう気付くと、自分も曖昧さに溶け込んでしまいたくなった。

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愛すべきムダ

愛すべきムダ

某月某日

「さくさくぱんだ」のさっぱり塩ミルク味を買った。パッケージに「気持ち寄り添う70種類のぱんだ」と書いてあった。70種類はやりすぎだ。愛すべきムダだと思った。「愛すべきムダがある」というのは編集者の先輩に教えてもらったことで、非常に気に入っている。

さくさくぱんだ、誰よりも寄り添ってくれてるぜ…!と感動しながら、ふと、コアラのマーチの絵柄の数を調べてみた。365種類あった。ぱんだを上回

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