展覧会レポ:東京都写真美術館「田沼武能 人間讃歌」
【約2,400文字、写真約5枚】
東京都写真美術館(以下、TOP)の「田沼武能 人間讃歌」を鑑賞しました。その感想を書きます。
結論から言うと、田沼武能氏は、写真家として初めて文化勲章を授与された方だけあって、その写真には見る価値が大いににあると思いました。なお、展示方法が単調だったため、田沼氏の”想い”がもっと分かりやすく伝わる工夫があったらいいな、と感じました。
▶︎ 「田沼武能 人間讃歌」
田沼武能について
私はこの展覧会に行くまで田沼武能という方を存じ上げませんでした。田沼武能とは…
要は、田沼氏(1929年生まれ、2022年没)は、写真分野としては初めて文化勲章を授与されるくらいすごい方です。日本写真家協会会長など、様々なポストに就いていたことからも、すごい人だということがシンプルに伝わってきます。会場に予想以上の観覧者がいたのもその証左でした。
ちなみに、「叙勲と褒章」を改めて調べたところ、様々な種類や条件があることを知りました。その根拠は、憲法が定める国事行為の一つとして栄典の授与にあるようです。それらを与えられる条件は、民間人なのか公務員なのか、70歳以上、55歳以上、50歳以上など、詳しい決まりがあるみたいです。内閣府にも色んな仕事があるんですね…気配りで疲れそうな職業です。
簡単な感想
私は、田沼氏について事前知識ゼロで鑑賞しました。「人間讃歌」とあるように、田沼氏は市井の人や各国の子供にフォーカスを当て、辛い中でもそこに生きる楽しさや喜びがピュアに伝わってくる写真が多いと感じました。
キラキたした瞳で濁った水を汲む・飲む子供の写真を、私の子供が鑑賞して何を思ったか。それらを見ながら親子で対話できたことも収穫でした。
キュレーションについて
その後、日経新聞の記事で田沼氏のことを知りました。
実際の行動の過程から田沼氏の熱い”想い”が伝わってきました。ただし、その”想い”が展示方法から伝わりづらいのはもったいないな、と思いました。
会場構成は、全部で3章に分けられていました。章の始めには導入の説明があり、その後に写真が羅列されているオーソドックスな組み立てです。展示方法を工夫することによって、田沼氏の”人となり”や”想い”がより分かりやすく伝わる設計にできなかったのでしょうか。
(私の勝手な邪推でが)それができなかった理由として、1)様々な要職を歴任、文化勲章を授与された方、2)故人である、3)協賛、協力も多いため、下手にキュレーションをいじることができなかったからでしょうか。
看視員について
また、看視員が子供に(私にとって)必要以上に厳しいのが気になりました。「子供は作品を見るときは大人と手を繋いでください」は理解できます。しかし、今回「子供が椅子に座るときも大人と座ってください」という指示は理解しづらかったです。
子供は一人で大人しく椅子に座っているのに、大人が常に横にいる必要があるのでしょうか。看視員の意図は理解できます。ただし、あまりに四角四面に鑑賞する子供を縛り付けることは、子供にとって「注意ばかりされる美術館には行きたくない」と芸術を見る目を摘んでしまうことにつながります。看視員は、もう少し柔軟に対応すべきだと感じました。
この展覧会と話はそれますが、最近「美術手帖」の記事を読んで気になったのが、「看視員」という言葉でした。
今まで「監視員」だと思っていました。改めて辞書で調べると、
美術館のHPでも「監視員」と書いてあるケースも見ますが、今後、私は「看視員」で統一するように心がけます。
▶︎ まとめ
いかがだったでしょうか?要職を歴任し、文化勲章をとった田沼氏の写真には、一般人とは明らかに違った含蓄があるように感じました。写真に造形が深い方なら、田沼氏のことを知っており、大満足だったかもしれませんが、田沼氏を知らない人にとっては、キュレーション方法がもったいないと感じる部分があったのは少し残念でした。
▶︎ 今日の美術館飯
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