思いつき短編:蜃気楼
とうとう7月に突入したーーーー。
僕は夏休みに祖父母の家に1人で遊びに行くことになった。
両親に今年の夏休みは1人で祖父母の家に遊びに行きたいとわがままを言い、小学3年生の僕は今、電車に揺られている。
年々暑さを増す夏の気温に逆らうように電車の中はキンキンに冷房が効いていた。
7人がけの席に1人で座って、寒さを払うように袖から出た二の腕辺りを手で擦る。
麦わら帽子に青いリュックを膝の上に乗せ、斜めがけの水筒を持ってきた。
まるで、大冒険に出発した時のような、興奮した気持ちだった。
僕が住んでいる所は都会の中だ。
木とか森の代わりに果てなく高いビルがあちこちに建っている。
僕はなんとなく、今住んでいるところが窮屈に感じていた。
なので今回のお泊りはすごく楽しみであった。
車窓からの景色は、都会の喧騒からみるみるうちに緑の景色へと変貌した。
電車内からは、目的地の駅の名前が流れた。
僕は荷物をまとめて、開く扉の前で着くのを待った。
プシューッと扉が開き、電車から降りる。
他にも何人か降りる人影を見たが、多い人数ではなかった。
それくらい祖父母の家は田舎なのだ。
駅のホームへ出ると二人が出迎えてくれる。
僕は急いで駆け寄って抱きついた。
「よく来たなぁ〜」と二人は優しい笑みを浮かべる。
そして祖父はスマホを使って僕の両親へ電話をかける。
無事に到着した連絡をしているようだ。
祖父はその時代のものを受け入れるのが得意なので70歳でもスマホ操作はお手の物だった。
逆に祖母は機械音痴なため、未だにガラケーだ。
それでも何とか家事で使うものは祖父いわく、操作できるらしい。
白い年代物のセダンに乗って家に向かったーーーーーーー。
祖父母の家は夏でも涼しい古民家で、建ててから築100年である。
都会っ子の僕からするとエアコン無しでも涼しいのは羨ましい。
家に到着するとちょうどお昼になったので、祖母がそうめんと天ぷらを作ってくれた。
僕は麺つゆに、これでもかと刻み海苔を入れて食べるのが好きなので祖父母に笑われた。
でも、とっても美味しかったので山のようにあったそうめんは、跡形もなく更地になってしまった。
祖母は昼食を終えた僕に部屋を案内してくれた。
2階の祖父母が住んでいる村が一望できる贅沢な部屋だった。
そこへ荷物を置いて横になるといつの間にか眠ってしまった。
気が付くともう日暮れ時で、近くの杉の木に停まっていたひぐらしの鳴き声が大きく響く。
祖母が優しく起こしてくれた。
「お昼にたくさん食べたけれど、夕飯食べられるかい?」と聞いてきた。
そこは子供、もうお腹が空いていた。
夕飯になるとナスの煮浸しと漬け物、ご飯と味噌汁が出た。
祖母はとても料理が上手で何を食べても美味しい。
食後にはスイカを切ってくれて、祖父が種を飲み込まないようにと言う。
何でも、ヘソから芽が出るそうだ。
僕は慎重にスイカを食べる、その光景を見て、祖父母は幸せそうに見つめるのでした。
お風呂からあがって、歯を磨いていた。
僕はまだ身長が高くなく、台の上に乗って鏡を見ながら磨いた。
トントントントンーーーーーーーーーーーー
背後で誰かが廊下を小走りする足音がした。
僕は振り向いたが、誰もいない。
口をゆすいで洗面所から顔を出して確認するが、やはりいない。
祖父母にも聞いたが、二人共居間で寛いでいたという。
僕が考え込んでいると、祖父が「座敷わらしかもしれんな」と顎に手を当てる。
僕は目を輝かせて祖父を見た。
「もしかしたら、この夏休みで色んな妖怪に会えるかもな」とニヤニヤ顔で僕を見る。
「もうおじいさん、孫をからかうもんじゃありませんよ!」
祖母は呆れながら祖父にいったーーーーー。
寝床へ入ると、祖母が電気を消した。
「おやすみなさい」と挨拶をして目をつぶる。
ドアが閉まると再び目を開く。
丸い電気をずーっと見ていると、何だかネコ型ロボットの顔に見えてきた。
それなら良いんだけど、横の天井の木目が人の眼に見えてくる。
あれ?今、あの木目が瞬きしたようなーーーーー。
怖くてタオルケットに身を隠す。
そして次第に睡魔が夢の世界へと誘ってくれた。
夏の朝は早くて、いつも休みの日は9時まで寝ているのに、6時に目が覚めてしまった。
軋む階段を下へ降りるともう、祖父母は起きていた。
おはよう、と挨拶をすると優しく挨拶を返してくれた。
「今日は何をするんだい?」祖父が僕に尋ねた。
はて、困った。
僕は田舎での過ごし方をあまり知らない、また考え込んでいると、「じゃあおじいちゃんが遊び方を教えてやろう」と張り切って言った。
「まずは、朝ごはんを食べてからですよ」
祖母は人数分のおにぎりと味噌汁をお盆に乗せて持ってきた。
祖母の握るおにぎりは母の作るおにぎりの何倍も大きかった。
身仕度を整えて玄関へ出た。
空を見ると、なんだか吸い込まれてしまいそうな青さだった。
麦わら帽子で視界を遮られた。
祖父が被せたらしい。
振り返ると祖父も麦わら帽子を被り、網や釣り竿、鉄で出来たバケツの中には、なんだかいろんなものが入っていた。
祖父の手を繋いで、長いあぜ道を歩いた。
夏の熱で遠くの景色がゆらゆら揺れている。
ーーーーと、遠くに人影が見える、おぼつかない足取りでこちらへ向かってきているようだ。
やがて、人の容姿が見えるほど近づくと、僕は息を呑んだ。
その人はなんと全身が焼け爛れていた。
私は祖父にそのことを言った、が祖父には見えないのか首を傾げている。
そうこうしているうちに、目の前まで来た。
何に怯えているのか分からず、祖父はおどおどした。
僕は力いっぱい目をつむると、その人は二人を過ぎて行ってしまう。
祖父が心配そうに顔を覗き込んでいた。
何があったのかを話すと、納得したかのように「子供には見えるんだなぁ」という。
どういうことかと聞くと、祖父もその人を幼い頃に見たことがあるといった。
何か、必死にどこかへ向かっているように全身負傷しながら歩いているという。
僕は、再びその人影が進んでいた先をジッと見つめた。
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