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ななくまエッセイ

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#医師

ある医師にとっての死

ある医師にとっての死

それは孤独死だった。

彼の実家で母親がひとり亡くなった。
母親とは生前から性格は合わず、お互い自由に生きるために、積極的には会わないと決めていた。

自らも親になった時、自分の親の尊さに気がつき感謝して大切にするようになる。よく聞くそういう展開にはならなかった。彼の場合は、両親との距離は徹底して保ち、その代わりに、自分のつくった家族をとことん愛した。

そんな、母の死にをきっかけに、自分の人生の

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医師のはじまりは孤独と共に。

医師のはじまりは孤独と共に。

それは、病院での臨床実習が始まった日だった。
医学部では4年生頃までに授業がひと通り終わる。その後は、病院で実際に働く先生たちの元で医師の仕事を学ぶ、臨床実習という形をとる。ポリクリとかクリクラとかBad Side Lerning でBSLとか呼ばれている。

朝早い時間の集合に始まって、外来診察、入院患者さんの診察、検査、休みなく続いた。もちろん本当に忙しかったのは先生たちで、私たちはただただそ

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医師を志した理由

医師を志した理由

「医学部の学生です。」そう伝えた時に、よく聞きかえされるのは、「どうしてお医者さんになろうと思ったの?」というもの。私は、その時に備えて、3パターンほど答えを用意している。そのどれも嘘ではなくて、医師を目指す理由の1つになったことは間違いない。

1つには、脳科学が注目を集め始めた時期で、流行にのってしまった
1つには、関わりのあったお医者さんに憧れて
1つには、医師になったら世界を変えられると思

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