マガジンのカバー画像

読書・講演記録

51
運営しているクリエイター

2023年8月の記事一覧

30代後半の主人公の悲哀が少し理解できる田山花袋著「蒲団」

30代後半の主人公の悲哀が少し理解できる田山花袋著「蒲団」

群馬県が誇る文豪・田山花袋の代表作「蒲団」を読んだ。30代も半ばに差し掛かり、すでに男性としての魅力は失われ生活に華がない、とは言え既に結婚もして子供も授かり、これから徐々に老いていくのだろうと有る意味男としての人生を諦めかけていたごくごく普通の男性が主人公である。ところが、こうした華のない生活が突如として一変する。自分のことを「先生、先生」と慕ってくれる可愛い一回り下の女性が寄ってくるのだ。自分

もっとみる
「銃・病原菌・鉄」を読んで、農耕民族と狩猟民族の違いについて考える

「銃・病原菌・鉄」を読んで、農耕民族と狩猟民族の違いについて考える

はるか昔の学生時代、米国西海岸にてコンサルタントとして働く日本人の方のセミナーを受講したことがあったが、その中でその講師の方が言っていた興味深い発言があった。それは
「日本人のルーツは農耕民族だが欧米人のルーツは狩猟民族。だから思考も行動様式も異なる。農耕民族は控え目で意思決定も遅い一方、狩猟民族は主張が強く、意思決定も早い。これからの世界では狩猟民族型の思考を身につけなければならない」
といった

もっとみる
帝王学のバイブル「貞観政要」は少し歳を取ってから読まないと理解ができない理由

帝王学のバイブル「貞観政要」は少し歳を取ってから読まないと理解ができない理由

唐の太宗とその配下の腹心たちとの対話集を通じて、その太宗のリーダーとしての謙虚さ・高潔な精神が最初から最後まで読み取れる名著。日本においては北条政子や明治天皇、さらには徳川家康も読み、治世の術を学んだという。
「名君は部下の耳の痛い諫言(かんげん)もきちんと聞くべき」
「部下のいうことを信頼し、よく聞くのが名君」
といった、部下の言葉に理解を示し、「そうだな、もっと耳の痛い話もしてくれ。そして皆の

もっとみる
セネカが「生の短さについて」で語っていることはホリエモンの人生哲学に通じる部分が多い

セネカが「生の短さについて」で語っていることはホリエモンの人生哲学に通じる部分が多い

”タイム・イズ・マネーという言葉は間違っている。お金なら増やすことも可能だ。しかし、時間だけは誰にも増やすことができない。まさしく有限の「命そのもの」であり、タイム・イズ・ライフなのである。”とはホリエモンの言葉だが、既に2000年前にローマ帝国の哲学者、セネカが同じようなことを言っていたことに驚かされる。いや、セネカがホリエモンと同じことを言っていたのではなく、ホリエモンがセネカという歴史上著名

もっとみる
「自由からの逃走」を読むと、自由がいかに辛いものかがわかる

「自由からの逃走」を読むと、自由がいかに辛いものかがわかる

皆が自由になりたがっているのに、一度自由を手に入れるとそれが重荷となり、せっかく手に入れた自由を手放してしまう。本書ではなぜ昔(1920年代〜1940年代)のドイツ国民は自由を捨ててナチスに従ってしまったのか、という思考の過程が描かれている。

ナチス政権下のドイツ国民に限らず、せっかく手に入れた自由を簡単に手放してしまう、ということは日常茶飯事で起きている。そして自分自身を振り返ってみても、しば

もっとみる